ダンジョンは冒険者の行く手をさえぎるもの。 冒険者はダンジョンを突破しようとする。 突破されないダンジョンはない。 枯れない花が咲かないのと同じこと。 イスタンブールはただの一度も突破されてはいない。 古代ローマ時代に作られた「テオドシウスの城壁」があったからだ。 そのときは「ビザンチウム」という名だった街の、最強の防壁だった。 ローマ時代から難攻不落の城塞都市だった。 アジアのほうからやってきたオスマン帝国軍。 彼らは城壁のない海のほうから船で攻め込んだ。 しかしイスタンブールには海にも強力な守りがある。 狭い海峡に鎖を張って、船が湾に入れないようにしていたのだ。
そこでオスマン帝国は船を陸に上げた。 丸太をしきつめて、油をかけ、その上を船を押して転がして進めた。 そして湾の中に船が入り込んだ。 イスタンブールは落ちた。 まるでゲームの中のバグで勝ったようなオスマン軍。 守ったほうも、負けたとは思わなかっただろう。 そんな手があるとは思わなかっただろう。 思ったとしても、まさか本当にそんな所を通るとは。 戦いの舞台となったイスタンブール。 今は静かで優しくてどこか切ない明るさがある。 石畳に路面電車が行き交い活況な市場が立ち並ぶ街。 モスクがそびえ立つ丘が海にむかって突き出している。