第7回
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■ 我が家の虐待

 子供を産んだ後、妻は実家に帰ることがなかった。「頑張ってここ(福岡)で育てる」という妻の方針により、夫婦と子供の3人生活が始まった。実家に戻る例が多い中、子育てのスタート地点としては、世の父親に比べて、私への負担は大きかったのかもしれない。とはいっても、私が会社から帰る時間には子供は夢の中。平日には子供の寝顔しか見ることがなく、専ら子育ての協力は祝日だけだった。しかし、自分を誉めるわけではないけど、休みの日にはミルクをあげたり、洗濯したり、洗濯物たたんだり、とかなり子育て&家庭サービスに努めたつもりだ。

 当たり前の話だが赤ちゃんは本当に泣くものだ。ミルクを与えて泣き止むならまだいいのだが、オムツを替えても、抱っこして優しく揺すってあげても泣き止まないことがある。それが二度、三度でなく1日に何度も起こる。昼夜を問わずに耳を切り裂くような金切り声が響く。まだ生後半年も経たなければ赤ちゃんとしてしょうがない状況であるということを頭の中で理解をしていても、神経は磨り減るばかり。

 もし、母親が家の中に閉じこもりっきりになり、夫は子育てに非協力的であった時に、母親が子供を虐待し、それが殺人事件になっても不思議ではないと私は思う。さすがに僕らはそんなことはしないけども、あまりにも目の前で泣きまくられた時には、「空想の中で」ひっぱたきたくなるような勢いの精神状態に近いものは「瞬間的に」あったと思う。実際にはないんだけども。


 ある祝日、妻が買い物に行っている間に留守番をしていると、子供がいつものように泣き出した。とりあえずミルク。おっしゃー!泣き止んだ。いつもこれで済むといいのだけれど。。。ホッと油断していると、何と子供がミルクを飲みながらTシャツの脇のところにスルスルと手を入れてきて私の腋毛をわしづかみにして思い切りひっぱるではないか!「いたあああああ!!!」思わず叫んだ。皆さんは不意を付かれて腋毛をおもむろに引かれたことなどないだろう。これは痛い。そして、私の叫び声に反応して泣き出す子供。「お前が変なことするからだろうがああ」と思いながらも必死に泣き止ませ、再度ミルクを。

 すると、今度はゲップをしたとたんに吐いてしまった。Tシャツが真っ白に染まる。子供は口と胃の距離が小さいのでちょっとしたことでリバースしてしまうのだ。夏場でTシャツ一枚を着ていたのでとりあえずTシャツを脱ぎ、上半身裸のまま子供を抱く。クソ暑くてクーラーもつけてなかったからちょうどいい。。。と思っていると私は更にとんでもない攻撃に遭遇して絶叫した。「んがあああああああああっ!!」なんと、子供が、今度は私の”乳毛”を引っ張っていたのだ。皆さんは不意を付かれて”乳毛”をおもむろに引かれたことなどまずないだろう。これはとてつもなく、この上なく痛い。私は毛深くはないのだが、申し訳無さげにちらほらと数本栽培している。それを刈り取るような勢いで子供がつかんでいたのだった。私の叫びに驚き更に泣く子供。頼むよ。本当に。。



 ずっと抱いたままあやすのはしんどいので、ゆりかごのようなものを利用する。手動でスウィングするやつ。電動式は高くて手が出ず、しかもこの手動式はリサイクルショップで購入したものだった。子供を眠りに誘う場合、有効な場合もあるのでよく使った。私の場合には近くにいて手でいちいち押すのが面倒だったので、もうちょっとで眠りそうな時には、ゆりかごにビニール紐をくくりつけて少し離れた距離から本でも読みながら紐を定期的に引っ張っているものぐさ君だった。

 そうこうしているうちに、子供は爆睡。いったん寝てしまうとなかなか起きないのだが、ゆりかごの中で寝たままだと狭くて身動きがとれないストレスから泣き出すこともあるので、そっとゆりかごから、広い布団へと移す。ああ、一安心。子供の寝顔は最高という。確かにかわいいのだが、子供が寝てくれているから手がかからずに「最高」という親もきっと多いはずだ。


 自分も疲れがたまっていたのか、眠くなる。子供の横で大の字になって昼寝。しかし、レム睡眠に入る前に私はまた叫んだ。「イタァァァ!!」子供が寝返りをして拳を私の目の上にぶつけてきたのだった。子供とはいえ、「グー」状態の鉄拳をまぶたの上に浴びてしまうとやはり痛い。またもや、私の叫び声に驚き、起きて泣き出す子供。子供を再びあやす私。。。。。。。。

 そう。我が家において虐待とは、親が子供から受ける仕打ちのことなのだ。


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