第5回
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■ 囲炉裏だったら川崎市

 とっても間があいてしまった、すみません。そしてみなさん明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

 12月は囲炉裏の特集にかかりきりだった。寒い冬に囲炉裏の取材なんて風流だねえと喜んでいたが、煙とススに燻されて髪の毛から洋服から消えないニオイが染み付いた。そうか。囲炉裏は臭いのか。テレビや雑誌からはニオイがしないので全然気づかなかった。ホームレス問題などもニオイのない場で論じられてる分には人道主義が勝つが、ニオイがついたらなかなかそうはいかないだろう。いや、そうではなくて囲炉裏だった。

 東京に囲炉裏がある家なんて存在するのか。と疑問だったが、意外にも『民家園』という名の藁葺き家展示場がいくつかあり、そこでは家屋燻煙のために囲炉裏で火を焚いている。都内では世田谷の次大夫堀公園民家園や、小金井の江戸東京たてもの園などで燻煙している。えっ次大夫堀公園てどこよ、聞いたこともない。と思うでしょう。私もだ。公式ページもないし。しかし藁葺き家が3軒あり、田んぼやあぜ道まで再現してなかなかの規模なのだ。なんで宣伝しないのかな。最寄駅は小田急線の成城学園前か喜多見。
 小田急沿線にはもうひとつ、ビッグな民家園がある。その名も日本民家園といい、向ヶ丘遊園駅南口から徒歩12分。「日本」を冠するだけあって、3万平米もの敷地に20数軒のさまざまなスタイルの藁葺き家を有し、毎日どこかの囲炉裏で火が焚かれている。高度成長期の昭和42年、どんどん減っちゃう藁葺き家を保存せねば! と川崎市が生田緑地に作ったらしい。入園料はたった500円。夏に行った湯西川の『平家の里』なんて、藁葺き家はほんの2〜3軒、たいして見るところもないのに里だなんて名乗っちゃって入園料は500円。川崎市は偉い。

 ところでどこの「民家園」でも基本的に飲食禁止である。民家なので、そして囲炉裏のまわりには火の番をするおばちゃんたちがたくさんいるので、おまけに囲炉裏にかけた大鍋から湯気があがってたりするので、思わず弁当を広げたり、熱燗で一杯飲みたくなったりする。だけど民家園は博物館の屋外展示施設。そういう理由で禁食禁酒禁煙。煙もうもうなのに禁煙。お茶だけは許可しているところもあるが、せめてきりたんぽとかおやきとかイワナとかいぶりがっことか、囲炉裏食を味わえたらいいのに、と思ってしまう。
 そうかといって、都内にある「炉端」をウリにした飲食店や旅館に囲炉裏はない。あるのは囲炉裏風火鉢だけ。消防署の指導により、薪は使用できず、炭は火オケに入れて飲食時のみ運び入れ、食事が終われば火オケは下げられてしまう。これ消防法で規定されているわけではなく、あくまで自治体条例に基づく「指導」に過ぎないが、指導に従わなければ営業許可もおりないってんだからしょうがない。歌舞伎町のビル火災を見ると囲炉裏だけ取り締まっても意味ねーだろと思うが、防火条例は地震対策が眼目だからしょうがない。だいたい東京の囲炉裏店は高過ぎる。あれっぱかしの炭でテキトーな食材を焼くのに、なんで8000円とかになるのか。でも囲炉裏という付加価値がつくからしょうがない。

 しょうがない現代においてはホンモノの囲炉裏、薪があかあかと燃え煙がくゆり自在鉤で煮炊きをする囲炉裏は、どっかの民家にでも招待してもらえなければお目にかかれない。あとたまにある民家園のイベントのときとか。地方なら囲炉裏の民宿もいっぱいあるけど、やっぱり都心で囲炉裏は無理だよ……。
 とあきらめていたら、日本民家園の『山下家』は蕎麦屋になってて(冬場は休日のみ)、炉端で日本酒も飲めるのだった! でも博物館でアルコールを売ってるのは本当はマズイので記事にしないで下さい、と学芸員の人は申し訳なさそうに言っていた。本当はマズイ、だけど炉端で一杯やりたくなる気持ちはわかる、まあちょっと飲むぐらいならいいでしょうト。う〜ん、粋なはからいだ。川崎市は偉い! 囲炉裏端で冷酒1合山菜蕎麦を肴に飲み、いろんな地方の藁葺き家を堪能できて1700円。囲炉裏は川崎市に限るネ。


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