第3回
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■ たそがれのバルカン脇息

 発明学会が主催する「第5回 身近なヒント発明展」を見に行った。「発明学会」だなんて、バカボンのパパが参加してそうなシンプル名称だが、ちゃんとした社団法人だ。でも加入したら学会員ということになる。
 身近なヒント発明展は賞金総額1000000円! 漢字で書くと百万円。大賞は20万円だが特別賞がいっぱいある。押切実・石井重三賞、小野久治賞、岡田禮一賞……この人たちは誰なんだろう。まあとにかく受賞すれば、賞金ももらえるけどそれが商品化される可能性もでてくるわけで、というかそっちのほうがぐっとお金が儲かる。なにしろあの「洗濯機のくずとりネット」を発明した人(笹沼さん)も学会員。そして「3億円ものロイヤリティを手にした」と学会のHPには書いてあった。
 発明学会は新宿からけっこう遠い余丁町、抜け弁天の近くにあった。ちっこいけど自社ビルだ。自社っていうか自団ビルか。
 入り口にはパンフがいっぱいある。「私達、発明学会会員はアイデアライフを楽しんでいます。」というキャッチ。そこに笹沼さんの発明(洗濯機のくずとりネット)も紹介されていたが「特許料は2億7千万円に」と書いてある。たぶん、ロイヤリティから税金を引いた金額が特許料なのだろう。
 会場はビルの3階で、部屋のドアは「!」のかたちになっている。さーすがー。だけど会場は、夏休みの工作を家庭科室で展示してるような規模だ。だけどそこには創意工夫された100個もの発明品がぎっしり並んでいた。

「調理台を濡らさないまな板立て」は、まな板立ての下に精肉とかいれるプラスチックトレーが置いてある。ナイスアイデア、もうすぐにでも真似できそう。
「愛の子犬」は、子犬を抱いたマリアさまの彫刻だ。彫刻なのにどこが発明なのかは不明。同様に「ループ編み手芸」で作ったお花とかも、ふつうは発明に分類されるものではない。
「洋服を一時的に変化させる器具」は、ちょっと文章で説明するのは難しいが説明する。まるいボタンのような「器具」をTシャツの内側にあててボコッとさせ、でっぱったぶぶんをファッショナブルな飾りひもで止める。そうすると「洋服が一時的に変化しますが、器具をはずせばまた元通り!」なんだそうです。
「みじん切りと千切りのできるスライサー」というのもあった。スライサーなあ。スライサー。スライサーはなぜこんなに発明ごころをくすぐるのだろう? なのになぜ台所で死蔵されるのだろう?
「バルカン脇息」はものすごい迫力だ。その名のとおり、脇息に毎秒100発のバルカン砲が装着。ではなく、丸太にリモコンが5個ぐらいくっついている。コタツにはいってみかんでもムグムグ食べながらこのバルカン砲をくるくる回して連打連打連打! エアコンのスイッチを入れテレビのチャンネルを変えビデオを録画し、えと、あとなんだ、とにかくリモートでコントロールしまくるのだ! すげえ。かこいー。
 もちろん本当に「欲しい!」と思うような発明品もあった、そういうやつは商品化されるに違いない。

 ベスト5作品を投票してから、歩いて夕暮れの新宿まで戻った。新宿文化センターの前に、遺跡の発掘現場のようなだだっぴろい空間があった。地図を見るとどうも「日本テレビゴルフガーデン」のようだ。ゴルフガーデンはなくなってしまい、通りの向こうにある長細いビルが何本も見える。
 それから今日はどうしてもしゃれたバーに行きたくて、しゃれたバーを探し回り、末広亭の前にあるしゃれたバー・ペインに入った。バーテンのにいさんに「発明学会に行ってきて」という話をしたら「は?」と聞き返された。
 バーテンとあとから来た女性客は、「今日、平井堅のコンサートだったの、よかったぁ〜」という話で盛り上がっていた。堅は感極まって泣いていたそうです。しゃれたバー・ペインは発明に興味はなさそうだし、私もしゃれたバー・ペインへの興味を失ったのでおあいこだった。


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