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第2回 | |
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| ■ 非日常的日常列車 まだ東京はお盆休みなのだろうか、今日は8月17日金曜日。山手線も中央線も観光っぽいおきゃくさまが多くて、サラリーマンや学生の姿が少ない。なのに冷房だけはいつも通りだから、背広を着ない人たちには寒過ぎる。非日常なおきゃくさまを、日常で出迎えるのが東京スタイルだ。 野岩鉄道=やがんてつどうは、その名の通り、トンネルからトンネルを継いで点在する温泉街をつなぐ鉄道だ。ひとつトンネルを抜けるたび、谷あいの町に小さな屋根が固まり、あるいは鉄橋の下に川が流れ、あるいは川沿いに増築を重ねたホテルが貼りつく、そんな風景がつらなる。 揺れが激しい車窓から見る眺めは、曇り空にとけ込んで灰いろ。繁茂する緑が川面に暗く倒れ込む。 私はどこに連れて行かれるのかな…。遠出すると見るものすべてが不吉に装っておびやかす。 向かいの4人掛けに座ってる2人の女の子たち、たぶん18歳ぐらい。ひとりは大きな鏡を手に、ラメ入りのアイシャドウをたっぷり塗ったり、マスカラをくるくる撫で付けたり、おけしょうに余念がない。もうひとりは膝を抱えて旅行雑誌、たぶん“じゃらん”とかそんなのをめくりながらMDを聴いている。おけしょう娘が鏡を携帯に持ち替えて、「もうすぐ着くからぁ」と電話。 列車は野岩鉄道を北上する。竜王峡駅の真ん前にどんよりした淵があって、あけびの蔓がだらんと垂れ下がる。鬱蒼とした木立ちの空気は、きっと列車が通過したって1ミリも動かない。息が詰まりそうな長い狭いトンネルの途中、 ドアの向こうは暗いトンネルの中。 湯西川温泉駅はトンネル駅だ。蛍光灯がぼんやり青くともり、空っぽの駅貼り板が並ぶ。ドアが開くと黴の臭い。こんなところで降りたくないと思うけど、目的地なんだから仕方がない。おけしょう娘たちを振り返ると、相変らず鏡を覗き込んだりMDを聴いたりしている。あの子たちは誰? さっきまで漂っていたあたたかさはもう感じない。私は荷物を持って列車を降りて、それでこっそり『バイバイ』とつぶやく。 |
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