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第17回 | |
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| ■最近、卒倒しそうなくらいに感激したこと 5年くらいまえだったか。福岡市中央区天神のソラリアの1階の広場みたいなとこに、すごくでかい写真作品のパネルが何点か展示してありました。 昼休みが終わって、さあ、会社に戻らないと。そんな慌ただしい中での出会いだったんだけど、誰の写真かわからないけど、そこに映っている、モノクロの子供の強烈な存在感というか、これって撮影している人と、子供との距離が異常に近くて、画面からはみだしてくるような、ずれた構図とかがあって、もう写真に釘付けになってしまったことがありました。 誰の写真なのか。そんなこと探るのは後回しだ。昼食の時間が終わって、サラリーマン生活の午後の仕事が始まるんだけど、そんな遅刻でおこられるくらいどうする。それどころぢゃないぜ。俺は、たった今、この写真見ないと! そう思って、ひとつづつ、結局は全部の写真を見たのでした。 |
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| だって、子供なんて、安直な被写体だよ。誰でも撮れそうじゃないか。自分の子供撮っても、このようにとれるかもしれない。誰でも挑めそうな、手軽そうな被写体。それが子供を撮るということなのではないか。 見ていると、誰でも撮れそうなんだけど、それが、誰でもできないことに気がつく。じゃあ撮れるかっていわれたら、こんな風には誰にも撮れない。なんてすごいんだ。もう、会社戻るの忘れて、写真見て、涙ぐむほどでした。その崇高な、子供達と過ごした撮影者の限り無く私的な時間のために! この時間って、もう決して戻って来ない。それが限りある生命の切なさなんだ。それをパネルの写真数点を通じて、もー、がんがん伝えて来てるのです。いっとくけど、ほんの何枚かだよ。写真集じゃないから、そんなたくさん見たわけじゃ無い。それにしても、なんてすごいガキの表情なんだろ。 |
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| すげええ。このガキ。さっちん。さっちんて名前なのか。ところで、だれ。この写真撮った人。文字が書いてあるパネルをやっと見て、それが『荒木経惟』撮影だということを初めて知ったのです。あの時の感動は、今でも鮮明ですね。アラーキーのデビュー作だったんだ。 ![]() だってさあ。写真だけで、あれだけ強烈に人をひっぱるんだよ。文字とか読まないで、誰が撮影したかさえ、どうでもよくて、とにかく、この写真『さっちん』のすごさは、ただひたすら写真がすごいんだよね。 写真で語る写真家。それは当たり前のことなんだけど、世の中、なかなかそうではない時があるんですよね。写真なのに、詩が添えてあったり、写真なのに、レンズ何使いました。焦点距離はなんだらかんだら。心情をつづった文章が添えてあったり、なんだかんだったり、とにかく写真だけで勝負迫ってくる当たり前のことが、意外に少ないのである。 あったとしても、立ち止まって見るほどのことでもないものが大半なんだけど。 明らかに、人とは決定的に違う何かを、アラーキーは、デビュー作の『さっちん』から、違って撮影していということなのでしょうか。すげえ。すげえのは、すげえだけぢゃない。 ![]() そうして、アラーキーに『いつか会いたい』俺が有名になって互角の立場で!なんてえ、ことは、夢みたいなので、その機会を虎視眈々と狙っていたら、今度、『日本の顔プロジェクト』という、一般の人の顔を撮りまくるという、嘘のような有り難い企画があったんで、もー。ナニガナンデモ、絶対に撮影してもらうぞ。撮影してもらうことより、アラーキーの前に立ちたい。しかも、アラーキーが俺を撮影してくれんだよ! |
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こんなすごいことないじゃんか。即応募しました。でも、当選するかしないか、分からないし。その日が決定ではないので、事前に休みの申請しても外れたらどうすんだ。 決定通知が来た時、勤務が決まっていて、仕事中に抜け出すしかないのだけど、抜け出しました。採用ハガキ握りしめて。それしかないじゃん。 もー。自分の順番が本当にやってくるのか。ほんとうに俺を撮ってくれるのか。暗幕の内側で先の順番で撮影している人たちに向かい『いいねー。おーいいなー背が高い人妻はいいよね。うーん、きれいだ。きれい。福岡って美人おおいよねー』って、あの語りそのまま。本人が中にいるんだああああああああああ。 |
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俺はもう。倒れそうなくらいに感動して、そして、もう、むちゃくちゃに緊張してゆきました。こんなに緊張したのって、幼稚園のときの音楽会で、シンバル鳴らすとこを忘れないように緊張しまくりでたっていた、あのとき以来ではないのか。こんな緊張、社会人になってしたことないぞ。 そのくらいに緊張してたら、俺の順番がやってきたのです。俺って、被写体にするには、ちっともおもしろくないであろうなあ。貧相だし。 ペンタックスのでかいカメラで、横顔から攻めてたけど、きっと俺の表情は、むちゃくちゃに緊張していたせいで、ぱっとしなかったにちがいない。ちょっと攻めあぐんでいるのか。いったんブレイクして、遠くからながめ、背を向けて振り向きざまにつぶやく。 『それ、いっちゃうね。はげちゃうよね。きっと』 髪が薄い助手とともに、苦笑するしかないか。苦笑いから本気笑いに。 椅子をおりると、アラーキーが握手してくれた。嬉しかったなああ。握手してくれて、こんなに胸がいっぱいになるなんて、生まれて今まで一度もなかった。これが初めてだ。握手してくれたんだよ。カリスマに心酔するって、こんな感覚だったのか。初めて知ったよ!小さな顔だったなー。白い淵のハート形みたいな眼鏡かけてたし。撮影の時に流れている音楽は、北原ミレイの『ニシンがキタトー。。オンボロロ』という歌でした。 ![]() というわけで、あの写真の中で、最強に貧相な男が俺です。25000円もする本ですけど、俺は買います。ミーハーです。心酔しやすいたちです。写真に写り慣れていない男です。ネットで将棋ばかりしている人間です。今読んでいるのは、『死闘の本土上空/渡辺洋二』です。『本土防空戦』を底本に加筆訂正した戦記ものです。B29を落とすには体当たり攻撃しかありません。 サラ・ブライトマン。夜中に聴くと悪霊が降りてくるような幽霊声です。ファンサイトの掲示板に、そう思ったまま書いたら、ファンにぼこぼこにされました。マリアカラスは大好きです。大相撲のファンですが、力士の歌は好きでありません。好きな力士は、闘牙です。上づっパリが空振りします。まわしをつまかれたらすぐに諦めます。押し相撲大好きです。 愛唱歌は『英国東洋艦隊壊滅』です。藤山一郎が歌っているものが好きです。おごれるイギリスとうようかんたいをー。すさぶー、うみにーほふりーさりぬー。カラオケで男女混成合唱してみたいです。デュエット希望者募集中です。 こんな俺を撮影してくれて、もう興奮と感謝に堪えません。 『英国東洋艦隊壊滅』藤山一郎 |
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