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第9回 | |
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| ■ カエルサボテンがやって来た カエルサボテンを初めて見たのは、平成10年の6月だった。 カエルグッズを満載した空間『福岡かえる展』会場を設営している最中に、カエルサボテンは、やってきた。 作者の女性は『これ、飾ってもらっていいですか』と声をかけて、鉢植えされた作品を置いていった。サボテンの胴体に、微笑みかけるカエルの顔がついている。 忙しかったので、由来とかも詳しく聞くことができず、『なんでカエルサボテンなんですか?』と聞くと、『どっちも私が好きなものだからです』という答えがあり、『では、最終日には取りに来て下さい。もちろんあすから6日間やってるんで、カエル展にも来てね』とだけ会話をかわして、設営作業を続けた。 カエルサボテンは、陳列物のひとつとして、ケースの一角に安置され、それきり作者が会場を訪れることもなかった。 ![]() |
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会期中。カエルサボテンを見た人が『これ?なんですか』と質問するたびに、彼女から聞いたただひとつの説明の文句をくり返し答えた。 『誰がつくったんですか?売り物ではないの?』 そんなことも聞かれたが、思えば作者がどこのだれかも知らないままに展示を引き受けたので、『さあ』と答えにならない答えをいうしかない。 作者が引き取りに来たのは、引き払い作業のまっただなか、慌ただしくて『出展ありがとう』と礼をのべただけで、『仕事が忙しくて見に来れなくてこめんなさい』という言葉とともにカエルサボテンは引き取られていった。 |
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カエルサボテンは、なぜカエルサボテンなんだろう。好きなものふたつを一度に存在させてしまう作者って、いったいどんな人なんだ。疑問がわいたが、どこのだれともわからないので、どうすることもできないままだった。 ![]() |
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| それから1年後、偶然にも仕事で訪れたデザイン事務所に作者本人を発見した。
『あ。カエルサボテンさんだ』 以来、福岡かえる展3実行委員長を引き受けてもらったり、ケロ天市場に出展してもらったりと、すっかり知り合いになったのだが、先日。僕の誕生日の月に、『いいことがたくさんありますように』というメッセージとともに、自作のカエルサボテン一体をプレゼントされた。 ケロ天市場用に、お客さんが買ってゆくたくさんのカエルサボテンの写真を撮影してきたが、自分のためのカエルサボテンは初めてだ。部屋で一人で、鉢植えされた彼をあらためて眺めていると、カエルサボテンの優しいまなざしに、心安ぐ。 大好きなカエルと大好きなサボテンを合体させた作品。こんなことがあっていいのか。植物の胴体に両生類の頭部。。。でも、カエルサボテンは、確かにここに存在している。 |
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カエルサボテンには、何かのあたたかな魂が込められていて、不安な夜や、苦渋に満ちた現実のできごととかに打ちひしがれそうな時に、部屋にカエルサボテンの視線を感じる。彼は沈黙したままなのに、いろいろと語りかけてくるのだ。 『どうしたの?僕はココニイルヨ』『いつもイルヂャナイ』 でも、まだ名前をつけていない。カエルサボテンある日に『僕は○○というんだよ』名乗ってくれるかも知れないから。 |
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