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第8回 | |
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| ■ わが寺の『百年の大計』 『百年の大計』について話し合いたい! 寺から、そんな案内状が届いたので、けっこうどきどきしながら『百年の大計』ってなんだろ。その日がちょうど休みだったので総会に参加できる。かなり、楽しみにしていた。 葬式仏教とかなんとか、いろいろいわれている我が真宗も、こんな壮大なプランについて檀家に諮ることがあるんだああああ。『百年の大計』って何?あれこれ想像を巡らせていたのである。 仏像をミサイルで破壊した異教徒のタリバンに仏罰を下すべくアフガニスタンに僧兵を派遣することを決断したとか。 ![]() その日、寺の本堂には60人近くの檀家が集まっていた。日頃から多額の寄進をする有力檀家の方々から、僕のように新興住宅地に住む、弱小檀家まで勢ぞろいしている。 檀家総会は、なんと15年ぶりに開催されたそうで、参加者も興奮気味だ。『えーそれでは、みなさまの忌憚のない挨拶を』という議長の挨拶が終わり(ほんとに忌憚のない意見が寄せられようとは議長も思わんかったでしょうなー)、寺側から、いよいよ示される『百年の大計』。それは、腰が抜けるほどに、矮小だったので、仏様も失笑されたかもしれん。 住職が示した『百年の大計』構想とは。思いきりかいつまんでいうと次のようなものであった。
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『百年の大計』というからには、百年たっても厳然と存在している、全館総檜作りで正倉院みたいな立派な木造建築をたてるのかと思えば、ただの鉄筋コンクリート建築なのである。これじゃーコンクリートの寿命が、どんなに延命しても50年くらいしか持つまい。しかも、50年後には、ぼろぼろの廃虚に近い老朽建築物になっているだけである。 そんな計画が『百年の大計』と言えるのか。『築30年の小計』だな。こりゃー。自分の心の中でチャチャ入れていたら、一部檀家が、寺を激しく非難攻撃をはじめたので、それにもびっくらこいた。 檀家総会とか、しゃんしゃん大会のとこが多い。ところが、ここでは、そうではなかった。提案を示そうとした住職の進行は『ちょっとまったア!』という有力檀家の発言で中断させられた。 |
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あとは、『そんなもん必要あるのか』『偉い坊さんを数日とめるだけのために宿泊施設は不要だ』『寺の経営内容を公開せよ』『住職が宗教法人である寺を私物化しているのではないか』『まず金の流れを檀家に分かるようにガラス張りにせよ』『不透明なままで会館建設を既成事実化するのは許さん』という激しい批判にさらされ、住職と宗教法人を構成する執行部側は、たじたじとなって、提案自体することもできずに、流会になってしまったのである。 檀家の不満は、住職のお参りのあり方にも及び。『読経の時間が短すぎる』『誠心誠意、御勤めをしてほしい』という、日頃、お坊様の勤め果たしているの?と、疑いたくなるような不満までぶつけられるにおよび、住職は満座の中で、顔面冷や汗、顔をあげることもできないという窮地に立たされたのである。 確かにまあ、住職さんの読経の時間は、スピード化が徹底していて、正味15分くらいの時が多いし、毎回していただく法話は、開き直ったかのように、『一休和尚の、シネシネ話し』で、毎回どこでも同じ内容なのである。もう20回くらいは聞いた。素晴らしい講和なので、他の話はしたくないのだと思っていたほどだ。 うちみたいな弱小檀家で手抜きするのは実害がなしとはいえ、有力檀家でも同じように手抜きしていたツケが総会満座の中での吊るし上げになったんだったら、自業自得というほかないが。。。 住職とともに前列に並ぶ、寺執行部側も『まあまあ。そこまで言わなくとも』と、消極的な住職擁護を試みるが形勢が悪い。 寺を支える檀家は、周辺地域にちらばっている。しかし、そのうちの最も大きな力を持つ地域の出身の檀家が最も激しく反発したため、『百年の大計』計画は、お膝元から反対されたようなものである。お膝元さえ固めていない提案に、ほかの檀家の支持がゆくはずがない。途中休憩をはさんで二時間。ほとんど、後半は、住職吊るし上げ大会のようになったんで、檀家総会は実質討議をしないまま流会になったというわけだ。 ![]() しかし、寺の檀家総会という地味な会議が、こんなにスリリングであるとは思わなかった。 これぞ『忌憚(きたん)のない本音の論議』という、展開をまのあたりにして、あああー会社の会議にも、町内会の論議にも、小学校の学級会とか、日本中の各地で形骸化しつつある本音の議論を、寺の檀家総会で体験できるなんて!民主主義社会の有り難さを実感したできごとに感動すら覚えて、総会を後にしたのである。南無阿弥陀仏!合掌。
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