第6回
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■ 上海の攻撃的いやしの旅

 15年ぶりに上海に行った。人口1600万人の巨大都市。
 15年前にいったときは、世界大戦前に存在していた共同租界の洋風建築物が、すすけた状態で残骸のように並んでいる、うすよごれた寂しい都会だったと記憶している。

 かつてを知る誰もが、『戦前の上海はきれいだった』と嘆いていたものだ。

 15年経って、街はまったく別の都会になっていた。
 なんぢゃこりゃああああっ!てなくらいに激変していた。

 まず、日本では考えられないくらいのでかいビル、でかいマンション、おそろしいまでの幅の片側3車線以上の単なるが普通道路の『高架道路』が、縦横無尽に走っているのである。片側6車線くらいある高速道路は、これとは別にあるんだからびっくりするではないか。

 高度経済成長時代のニッポンでさえ、こんなにぼこぼこ都市を改造できなかったはずだ。なにしろ民主主義社会は、手間がかかる。用地買収だけで30年とか40年とかかかってしまう。

 その点、共産主義中国は、国家が決めたら、どかああああああん、と一挙に街を改造できるのが強みだ。

 その結果、出現した上海の町並みは、かつての共同租界の対岸だった、さみしい中ノ島みたいなところに、俺が小学校二年生くらいのときに夏休みの宿題で描いた『にじゅういっせいきのみらいとし』そのものの超未来的建築物をにょろにょろ建てたのである。

 しかもだ。ビルのひとつひとつがでかい。ランドマークになっている、東方なんとか塔は、世界二位の高さを誇る電波塔で、しかも、だんごみたいな球体を串刺しにした奇抜なデザインで天空を目指しているのだ。一番上の展望台は、入場料100元の『太空腔』だったかな。

 そこから眺めると、上海のドでかさがはっきりわかる。これはもー東京どころではないぞ。ちまちましている日本の建築物は、マッチ棒みたいなものだ。たった15年かそこらで、これほどに都市を増殖改造してしまうなんて、中華民族の威力は恐るべしというものであろう。


 おまけに変わったのは、都市景観ばかりではない。人間も変わった。15年前、地味な人民服と人民帽をかぶって自転車に乗っていた人々は、いったいどこに消滅したのであろうか。試しに『人民服売っていませんか?』とあちこち聞きまくったが、誰一人として『ここで売っているよ!』と教えられなかった。

 かつて文化大革命当時に、5億人くらいが着用していた人民服を、今の上海の人は、よほど物持ちがよい年寄り以外は誰もきていないのだ。

 10月1日は、中華人民共和国の建国記念日なので、そこで、人民服姿の市民多数がくり出すのではないかと期待していたが、地方からのおのぼりさんの年寄りがたまに着ているくらいで、ほとんどみかけない。街頭にも『指導を誤らない偉大な中国共産党万歳!』とか、いちおうスローガン幕が下がっているものの、人々の行動形態は、『阪神優勝で興奮した関西人が、全力でしゃべりちらしながら、ぎっしりと、そこらじゅうをわめきながら歩いている状態』だ。

 マクドでハンバーガーを食う。ケンタで鳥を食べ、屋台で焼肉を食い、露天でジュースのみ、衣料品店で買い物しまくり、食料品店、電気製品ショップ、宝石店に土産物店。どこも、ものすごい人の数である。

 中国のゴールデンウイーク期間の10月初旬は、周辺の地域から、上海にどんどん国内観光客が流れ込んでくるので、もーすごいのなんのって、ちょうど箱崎の放生会雑踏が、どこまで歩いてももずっと続くという具合であろうか。
 

 買い物しようと200メートルくらい移動するだけでへとへとになる。買い物も少しでも気合いが落ちると、背後から、横から、脇から、またの下から、『おれはコレかうでーなんぼやー!』と、先をこされてしまう。外国人の俺は、言葉に不自由があるうえに、誰も遠慮なんかしてくれん。割り込まれる方が悪いのである。

 こんな風なので、二時間くらい外出しては、『ああー疲れたああああ』と宿舎に戻り仮眠し、気力と体力を回復して、再び雑踏の街に出る!というやわな旅行をした。ボクシングの試合みたいに、途中に休憩をはさまないと街を歩けないのだ。滞在ホテルが中心街になかったら、途中休憩することもできなかっただろう。人込みで酔ってしまって歩けなくなったかもしれん。
 

 上海で4日を過ごして帰国したら、肉体も気力もともに激しく疲労していた。出発前に聴いていた、ヘビメタの音楽を聴くと『ああーなんて静かで安らかな音楽なんだ』と思った。

 天神地下街のラッシュが、ここちよいスカスカ感で、人間が少ないってこれほどに優雅!と思った。

 5日ぶりの仕事が、全然辛いと思わなかった。

 というわけなので、みなさん。休暇で上海に行くよりも、全力で仕事したほうが気が休まる、ということだったのです。

 実人生で悩みが多くて気力を沮喪している方には、『ぼやぼや悩んでいる暇なんてねえんだよ。さっさと歩けよ』『一人になりたあああい。なんて、どこに行っても人がいるんだから、一人になんかなれねえんだよ』『あたしのことなんか誰もわかってくれなあい。あたりまえだろ自分でわめかない限りモノも売ってくれねえんだよ』『みんなに大切にされたあい。しるかバカやろう』『あたし疲れたアもう歩けなアい。道にしゃがんで寝るんだよ』『おトイレどこあるの。デパートトイレ30分待つか、道で今すぐするか自分で選べよ』という、パワフルな上海旅行がお薦めです。

【上海旅行のページ】
http://isweb26.infoseek.co.jp/diary/otama11/syanhai/syanhai.htm

   

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