第4回
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■ 番外編 6月9日日本−ロシア

その計画はひっそりと遂行された。場所はいつもより、すこし人通りの少ない新宿西口京王デパートの前。時間は日本がW杯で歴史的初勝利を納める試合のキックオフ20分前である。彼らはそれをセッティングし始めた。それとは、もちろん自転車による自家発電キット及び14インチテレビのことである。彼らは通行人の懐疑的な視線をよそに、黙々と作業を続ける。折りたたみテーブルの上にテレビが設置され、自転車、モーターの準備もできた。彼らの一人がおもむろに自転車にまたがる。その刹那、彼は一心不乱に自転車のペダルを漕ぎ出した。

漕ぐこと数分間。彼の額に汗がにじみ始めた頃、ついにブラウン管に映像が映し出されたのだ!固唾を飲んで見守っていた人々から湧き上がる歓声。私はFIFAアンセム、各国の国歌を胸に焼き付けるとキックオフと共に雄叫びを上げた。「うぉぉぉぉ!」勿論漕ぎ手は交代制である。男性も女性も、日本人も外国人も、関係なく漕ぐ。ただひたすら漕ぐ。日本が攻めているときや、コーナーキックを得たときなどは漕ぎ手も映像が途切れないように最大限の注意を払う。すでに、このテレビで日本戦を観戦してる人は100人を越え、サッカーの声援と漕ぎ手に対する「頑張れ!」「おつかれ」などの励ましとがあいまって、異常な一体感と興奮に包まれる。

そのときだった。

「責任者はだれ?」

ああ、この高圧的な態度。そう、ついにヤツらがあらわれたのだ。前半も残すところ後10分というところで、、、事情聴取のため、その場を離れる彼ら。ヤツらと厳しいやり取りがあったようだ。そして戻ってきた彼らが言った。

「すいません、コレで終わりで〜す。」

我々は笑っていいとものお客よりも高らかに叫んだ!
「えーーーーーっ!」

しかしヤツらの決定を不服とし、ここで暴れだしてしまっては彼らに迷惑がかかってしまう。ここは泣く泣く場を収めることにした。みな口々に「楽しかったよ!」「ありがとう!」などといいながら彼らと握手しあう。そして人々は解散した。しかし、撤収作業をしている彼らの一人がこう言ったのだ。

「なんか、公園ならいいらしいよ。」

なに!?その場に残っていた人たちから「やる?」「やろうよ!」「中央公園に行こう!」などの声があがる。ついに我々は第2次チャリ漕ぎ発電テレビ観戦団として出発したのだ!メンバーは、首謀者の一団と通りがかりの外国人多数、大学生風の男、カップル1組の約16人である。一行は大きな問題も無く新宿中央公園に到着。すぐさま、パブリックビューイングのセッティングに入る。ついに公園内で誰にも邪魔されず観戦できるのだ!漕ぎ手が一生懸命ペダルを踏む。ぼんやりとブラウン管に火がともる。しばらくすると日本の戦士達の姿が鮮明に映し出された!

あれ?「1−0?」うわー!点が入ってる!
ショーーーーーーーーック!しかし、日本が先制したことで、我々のテンションは一気に爆発し、漕ぎ手のハッスルぶりたるや筆舌しがたいものがあった。漕ぎ終わった人は「代表と一緒に頑張っている気持ちになる」と言っていた。私も同じ気持ちだ。選手は試合終了まで集中力を切らすことなく立派に戦い、我々も代表の頑張りに背中を押されながら、漕ぎきった。1−0で日本の勝利!!結局、前半のように飛び入りの漕ぎ手が参加することは無かったが、日本の勝利を参加者みなで分かち合った。そう、我々は完走したのだ!健闘を称えあい、握手を交わし、我々は解散した。

深夜、友人のオープンカーで多摩地区を凱旋パレード。次の日の筋肉痛が心地よい勝利の余韻と化したのは言うまでも無い。


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