第26回
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■最強の、猫

 猫つながりで、トムキャットなわけだが。

 単純に、そうではない。

 俺は本当にトムキャットが大好きだ。
 もう一度、言う。
 俺はF-14トムキャットが大好きなんだってばよ。
 トムキャットの写真だけで、おかずなしでご飯食べられる。それだけでお酒呑める。
 俺の棺桶には是非トムキャットを入れて欲しい。入ればの話だ。
 トムキャットが棺桶でもいい。そうして海にでも沈めてくれ。鋼鉄の戦闘機だから、溶鉱炉でもないと火葬できっこないから。
 
 トムキャットさんが何であるか、もう前回で語ったので、ここではもう書かない。
 しかし。
 今回は、俺のトムキャットへの愛を語らせていただく。
 熱い熱い愛の叫びを、聞いてくれ。


 人生の巡り合せには、意味がある。
 これも、多分そうなのだろう。
 『軍用機オール百科』に載っていたいろいろな情報を貪りつつ俺は、F-14を一目見た時、そのスタイリングと個性に惚れた。
 
 なぜだろうか?
  
 F-14が飛ぶ姿を左真横から捉えた写真、その見開き二ページに、見入った。
 この流線型・・・・何か見覚えがある。既視感めいたものがある。
 俺はその姿に引き込まれた。

 その時『エリア88』は知らなかったと思う。

 『マクロス』がきっかけでもない。

 アニメ『超時空要塞マクロス』の可変戦闘機VF-1バルキリーがきっかけでトムキャットのファンになったという人は枚挙に暇がない。
 『トップガン』には及ばないが、バルキリーはトムキャットの知名度を高めた。
 だが俺は『マクロス』が放映されて、「あのトムキャットが変形してロボットになる」と感動して見ていたのだから、多分違う。

 正統派はF-15『イーグル』を好きになる。
 今でもそうだが、当時アメリカの主力制空戦闘機。
 自衛隊での最強戦闘機も、このF-15である。F-15を駆るイーグル・ドライバーともなれば空自でも羨望の的である。
 当然子供達の間で、人気は高かった。
 完全無欠の正統派ヒーロー、という感じだ。

 でも、俺はトムキャット派だった。
 最強戦闘機イコール、グラマンF-14トムキャットだった。

 戦闘機界のアカレンジャーがイーグルなら、アオレンジャーはトムキャット。
 大型双発というF-15との共通点は持つが、トムキャットは個性的。個性が強烈過ぎて、杓子定規な正統派好きには受け入れられないが、その旨味を知ればもう病みつきという魅力を持つ。
 オンリーワン。個性で勝負。個性でなら誰にも負けない。その輝きはたったひとつのダイアモンド。
戦闘機界の宮内洋。自説である。

 俺は、どうもそういう方面に魅かれるようだ。


 男の子はギミックがあるものにいたく感動するものだ。
 
 さすがにロボットにはならないが、トムキャットは「変形」する。
 可変翼システム・・・・VG翼、バリアブル・ジオメトリー・ウイングとも呼ばれる。
 低速での安定性と機動力、高速での速力追求を両立。相反するそれらを統合した効率性、利便性を考えられて編み出された動く鋼鉄の翼。
 F-111やB-1はいうに及ばず、イギリスの主力機トーネードや、フロッガー、フェンサー、バックファイアといったソ連機にも採用されている機構だ。
 複雑なこの機構のおかげもあって、可変翼の代名詞F-14のコストは高い。
 しかもその頻繁に動く部分を日夜整備しなくてはならない。自分のせいで国民の血税で作られた戦闘機とエリート約二名が空に散華しては、オオゴトだ。整備員の労力と心労は並大抵のものではないだろう。
 「あーあ、なんでこんな面倒な戦闘機採用したんだろーなー」
しかしこれをオミットすれば、トムキャットはトムキャットでなくなる。「僕が僕であるために」必要な要素なのだ。

 羽ばたきこそしないが、飛行条件に適応するためにリアルタイムで変化する翼。
 これを見ればリリエンタールやダヴィンチはいたく感動したことだろう。
 
 低速域では大きく広げて安定性を増大させ、高速域では翼をすぼめ、擬似デルタ翼と化す。
 一機のボディにして様々な性格を持つ戦闘機に変化できる・・・・しかも瞬時に。
 この欲張り。
 第二次大戦のドイツ機が発祥という可変翼は、重い機体での離発艦を容易にし、しかも高性能を実現した。
 手動操作ではパイロットの操作負担が多いが、コンピュータ制御によってトムキャットでは自動化されている。もちろんマニュアル操作も可能。
 この柔軟性がトムキャットの強みだ。
 
 「変形」・・・・それは、それは男の子心を熱く揺さぶる。

 この機構がある事によって、F-14は他の艦載機と違い、翼を無理矢理折り畳む事なくして自分の占める面積を小さく出来るのだ。可変翼を最大後退角にすればいい。
 旧式コルセア二世や、あのいまいましいハチ助(F-18)みたいに、翼を上に折り曲げて「おむすび山」状態にする必要がない。
可変翼を閉じて空母上でうずくまるトムキャットは、まさにアヒルか、日なたで丸まる猫そのものである。
 図体デカい割にしては意外とコンパクトにまとまっているのである。
 それでも、あの巨大な舷側エレベーターはトムキャットを一機しか運べない。クソF-18ハチ助なら、同時に二機は堅いのだが。

 しかも、トムキャットが空母から「発進」する時の発艦シークエンス・・・・つまりウルトラマン・シリーズ風にいうと「ワンダバシーン」・・・・はカッコいいの一語に尽きる。
 胸が震える。
 出撃を命じられたトムキャットが完全武装で、巨大な舷側エレベーターによって格納甲板から飛行甲板に持ち上げられる。
 誘導員の大仰なハンドサインによって、カタパルト・シャトルが待つ前部甲板の発艦スペースの定位置につく。
 そのもったいぶった、ゆっくりさ。
 ハマちゃんに「はよせんかい!」と頭をはたかれそうだ。
 そうこうしながら。

 大空へと羽ばたくため、その力をためるために、可変翼が開く、
 トムキャットに限らず、格納された翼を広げるというのは、艦載機フェチにとっては魅力的なシーンだ。眠りから覚め、大空へと臨む、 目覚めの時だ。
 もう目一杯に開かれた翼。鋼鉄のボディに力がみなぎる。
 
 空母は合成揚力風力を得るため、風上に向けて全力疾走する。
 吹きすさぶ風。流れる白い蒸気。トムキャットの周囲で発艦クルーが動く。
 カタパルト・シャトルにトムキャットの前脚のレバーが連結されるなど、さまざまな作業が進行されてゆく。
 トムキャットの後ろで、ジェット・ブラスト・ディフレクターという遮蔽版が立ち上がる。
 対を成すエンジンから、青く輝く炎。
 発艦士官(シューター)と合図を交し合うパイロット。
 シューターのゴーサインで、トムキャットは弾かれたように突進。僅か百メートル程度の甲板を走って、大空に飛び出した。
 
 まんま、『マクロス』のオープニングである。
 「(めざめてーくれーと)はーなーたれたー」である。
 まんま『トップガン』のオープニングである。
 ケニー・ロギンス『デンジャー・ゾーン』ギターギンギンである。

 この発艦シーンが最も絵になる戦闘機ナンバーワンは、トムキャットをおいて他にないのである。
 
 しかもF-14Aは高速飛行時の安定性と機動性を得るため「ヴォーテックス・ジェネレイター」という可変翼の付け根の部分から隠し翼「グローブベーン」という小さな翼を出すのだ。
 ラファールの機首に付いているカナード翼の簡易版みたいなものだろうか。
 これによって、F-14はまた違った顔を見せる。
 その存在を知ったとき、俺は「ヤマトの大気圏内飛行みたい!」と感動したものだ。
 宇宙戦艦ヤマトも重力圏内から飛び立つ時、舷側からデルタ翼を出すのだ。オモチャのギミックでもそれは再現されている。
 プラモ好きのお子様なら、これだけでもうドンブリ飯をかっこめるのである。
 
 今はっとした。
 
 F-14のあのうねりのあるナイスバディ、どこかヤマトに似ている。
 逆に言えばヤマトは、あの鋼板の継ぎ目の質感、流線型や曲線やらが誇張された描写・・・・どこかスタイリング的にF-14に似ているのである。
 キュッと絞られたノズルあたりがもうクリソツ。
 しかも、ヤマトには意味わかんねえウイング風なの沢山付いてるし。
 航空機と戦艦との違いはあるにせよ。F-14は双胴ボディ・・・・F-14には砲塔も巨大な上部構造物もない。しかし、F-14はどことなくヤマトに似ているのだ。
 しかもF-14のコクピットはグラスコクピット化される前の、眩暈がする程の計器の大洪水である。
999を思い出してくれ。ヤマトの航海艦橋を思い出してくれ。F-14の複雑カッコいいコクピットは、どこかレージ・マツモト臭がするのである。
 エリパチの戦闘機のコクピットの描き方も、どうもレージ・マツモトっぽかったし。新谷かおるのクセとは思うのだが、とても現用戦闘機の中には見えなかった。コスモタイガーの中じゃねえの、とか思った。

 日本人がF-14に惹き付けられるその秘密・・・・トムキャットの優美なスタイリングがヤマトに似ているため、そのイメージがダブり、日本人の心を惹き付けてやまないのではないか?

 ちがうかも。
 
 私見も甚だしいが、俺的にF-14の姿は、ヤマトのそれにカブる。
 特に後姿だ。見比べて欲しい。あの悲壮美。
 『トップガン』のF-14は、今にもイスカンダルに行きそうである。
 アニメソングの皇帝ささきいさおの歌声が聞こえてきそうである。
 「さっらっばー」

 レージ・マツモトといえば「男のロマン」。
 そう、トムキャットは、そうなのだ。

 スペックが、カタログ値が、実績がどうとかの次元ではないのである。
 それが、ヤマトの前身(沈没した大和の超近代化がヤマト)、世界最強46センチ砲搭載の不沈艦・・・・大和級戦艦に共通している。
 考えてみれば、大和の46センチ砲と、F-14のフェニックス・・・・あまりにも境遇が似ている。
 当時でも最新の性能。にもかかわらず、世界最強と言われながら、あんまり実績がないのも大和。トムキャットに酷似している。
 
 でもやるときゃやってるのである。
 
 言うまでもない、大和は死んだ。
 これでもかというくらい、叩きのめされてである。一方的に。
 人はそれを、良いも悪いも、侍の死と言う。
 戦艦というジャンルの死、大鑑巨砲主義の死。銃に滅びた、剣に生きるサムライの死。
 まさにラストサムライ。剣が銃に敗れたのと同様、巨砲が航空機に敗れた。
 大和の同型艦の武蔵も航空機の雷爆撃によって非業の死を遂げたが、それでも魚雷二十本という驚異的な不沈性を発揮した。
 あーあ、でも、残酷。中に人がいなければよかったのに。
 軍艦の歯車は水兵なのだから・・・・その惨状はいわずもがなだ。
魚雷というが、今でも当時でも一撃必殺の対艦ウェポンである。駆逐艦なら、一発で轟沈である。
 あの、巡航戦艦バトルクルーザー金剛も魚雷一発で沈んでいるのである。
でも武蔵は二十発。その他爆弾も受けている。大和も左舷に集中攻撃を受けなければ、それぐらいは余裕で持ちこたえていた。
 46センチ砲にしても、想定通りに相手が戦艦なら威力は掛け値なしだった。ただ、来てくれたのは、もっぱら航空機だった。
 ナパームのルーツとなったという三式散弾もあるにはあったが、自分の近距離を高速で飛び回る航空機を、巨砲が追いきれるわけがない。対空戦ともなれば、46センチ砲はまったく役立たずだった。
 人力の限界。これがレーダーとリンクしたコンピュータ制御で、レスポンスのいい駆動系なら、話は違っていただろうが。
 想定外である。
 対戦艦戦の究極を目指して建造された決戦戦艦だったために、相手がウンカの如く迫る航空機の群れが相手では「それ無理」の状態である。
 巨砲を振るって巨艦を倒す。
 ただ、そういう場面がなかっただけだ。

 冷戦時であんまり目立たない実績のF-14だって、同じ事だ。
 でも根っからのアメリカンなトムキャットだから、あんまり悲壮感はない。
模擬空戦でF-15を圧倒。たぶんトップガンが相手をしたのだろう。
テロリストによるハイジャック機を空中でハイジャックし返して空港に強制着陸させたという荒業。
 空母艦隊に喧嘩を仕掛けた共産系戦闘機をインターセプトして追い払ったりは日常茶飯事。
時には調子に乗った輩を撃墜したり・・・・やる事やってるのである。
 輸出数も少ないし、あんまり撃墜してないけど・・・・。
 それでもいい。

 わー思いつきで書いてて、今ビックリ。
 結構共通項あるかも。

 ま、とにかく。これでわかって頂けたのではないかと思う。

 トムキャットは、男のロマンなのだ。

 その凝集体なのである。


 男の子は強い武器に憧れるものだ。
 
 米空母艦隊を守る守護神F-14トムキャットの先代は、F-4ファントム。
偶然だがなにかは知らないが、なんかこの酷似したネーミングつながりは燃える。トムつながり。
 かたや「雄猫」、かたや「亡霊」だが。
 その他にも、空母には猫つながりのネーミングがある。航空管制ルーム、キャットシー。
 舷側に張り巡らされた通路、キャットウォーク。
 で、何が言いたいのかというと、トムキャットはファントムにはない武装を持っている。
 
 今やドッグファイターのたしなみ、「バルカン砲」である。
 
 機銃を搭載する戦闘機は「ガン・ファイター」と呼ばれる。
 F-14は機首左側に装備。グラマン社のイラストでは「サウスポーのカウボーイ猫」として描かれた。
 いかにも腕自慢の、不遜そうな顔つきである。

 かつてミサイル万能主義によって冷戦中期に姿を消した航空機搭載機銃だが、あまりにミサイルが頭でっかちで融通が利かない事から、米軍はついに機関砲を復活させるにいたった。
 共産圏戦闘機はミサイルの神通力に惑わされず、その必要不可欠性を理解していた。ソ連戦闘機はおしなべて機銃装備である。
そうぶちあげれば聞こえはいいが・・・・安価だし、それしかねえ、というのもあっただろうが。
ミサイルには最低使用距離がある。その懐に飛び込まれてしまえば、円錐状の必殺圏(バルナラビリティ・コーン)に相手を収めても手も足も出ないのである。
 ベトナム戦争たけなわ。
 米海軍のファントム乗りランディ・カニンガムとドリスコル組。ベトナムのシャア、トップエースのトゥーム大佐との決戦。
 雑魚を蹴散らしたトップガン輩出カニンガムのファントムは、突如飛来したトゥーム大佐のMigと伝説の空戦を繰り広げた。
 機体の性能と己の技をカードゲームのように出し合う、極限のドッグファイト。
 結果的にカニンガムのファントムが勝利したが、近距離でキル出来る黄金のチャンスはあったのだ。
 もし、あの時ファントムに機銃があれば・・・・とアメリカ海軍の英雄カニンガムは涙をのんだ。

 それに眼下においしい地上ターゲットを見つけても、指を咥えて見ているだけ。
 やはり、オプションは数多く持っているに限るのである。

 あのガンダムやGMも頭部ユニットに標準装備、アメリカ系艦船も近接防衛システム、バルカン・ファランクスCIWS(シウス)として積んでいるというバルカン砲。

 近接自衛用機関砲といえば、バルカン砲である。

 トムキャットでは20ミリ砲弾の装弾数600発強。
 種を頬張ったハムスターみたいに膨らんだ愛らしい機首ユニットの左側に装備され、軽く引き金を引いたら目の前のものを存在自体なかったもの同然にする。
 もう「撃つ」の世界を超えて、「注ぎ込む」の世界である。
 高速で飛び回る二十メートル前後のジェット戦闘機を隙あらば掴まえて、数キロ先から蜂の巣にしようという機関砲である。

 F-14装備はM61A1。.
 泣く子も黙る、航空機標準装備機関砲のベストセラーである。
 その名、火の神(バルカン、ヴォルケーノ)にあやかった「バルカン」。

 それこそ一瞬の、その貴重なゴールデンチャンスをものにして、一刹那の瞬間にあらん限りの弾幕を集中して、ケリをつけるための大破壊力。

 ガンダムが頭に二つ付けているバルカン砲を、トムキャットも装備している事に子供の頃は燃えたが、実は大きな間違い。

 「バルカン砲」とはM61A1機関砲そのものを指すのであり、その商標である。
 「バルカン砲」というカテゴリーはないのである。
 あればカッコいい事無比だが、そうではないのである。

 無限軌道キャタピラーと猫大好きツナ缶シーチキンと同じケースである。
 ホッチキスって、ホッチキス社って会社ある事知ってた?

 ゆえに、ガンダムが装備しているのは「バルカン砲っぽい、無茶苦茶弾幕張れる、でもビームライフルからしたら貧相な威力の接近戦用機関砲」である。
 一斉射でザクを蜂の巣にしても、だ。
 まあガンダムや他のアニメ世界で「機関砲の代名詞であるバルカン砲をレスペクトして、そういう名前をつけた」という設定なら、それはそれでいい。
 実際のF-14でも、ミサイルが切れた時の保険。ミサイルが撃てない間合いでの近接兵器。地上掃射用の機銃。と、位置づけされているようだ。
 ミサイルをビームライフルに置き換えてみよう。
 要は、ガンダムとあまり使用条件は変わらないのである。

 さらに空戦屋トムキャットの仕事道具の数々。
 空対空ミサイルのスパロー、サイドワインダー。
 加えて、今となっては大いなる無駄の、特大超射程ミサイル『フェニックス』。
 このミサイルがほとんど活躍しなかったのは、ある意味世界が幸運である証左だ。
 謳い文句程には、性能に実際性がない事が大きな原因だが。
 ある意味F-14同様、その存在がソ連機を封じる抑止力として機能していたのかも知れない。
 あまり、そう言い切れる自信はないが。


 それでいながら、「トムキャット」というこのネーミングに痺れた。

 空戦自慢の泣く子も黙る最強制空戦闘機のクセに「トムキャット」という脱力もののネーミングセンスに惹かれた。
 車じゃあるまいし。でも肩肘張った「イーグル」とかいういかにもなものとか、「ファイティングファルコン」てな感じのやる気満々なネーミングより、遥かに親近感は沸く。
 戦闘機に親近感を要求するのはどこか間違っていると思うが、アメリカではこの「ペットネーム」で戦闘機に「らしい」名前を与え、パイロット達は親愛の情を込めて自分の愛機を呼ぶのだ。
 「大喰いドラ猫」。
 命を預ける以上、感情移入は大事だ。

 最強の、猫。

 戦闘機にドラ猫なんて、アメリカっぽくていい。
 旧日本軍でそういう提案をすれば永井一郎声で「貴様ぁー!! 何たる軟弱極まるぅぅう・・・・!!」と血管ブチ切れ状態で叱責され、絶対大却下だったろう。
 そこへ仲代達矢のような風貌をした大林隆介声の昼行灯的なキャラの将官が「いいんじゃないの? そういうのあってもさ? 俺、いいと思う」とフォローされたりも。
 んなわけねえか。

 アメリカ海軍ご用達の艦載機メーカーの老舗中の老舗、ペンシルバニア一丁目(モトネタはホンダ)の伝説グラマン社。
 空母と共に歩んだ重みある歴史。
 グラマンは空母のために戦闘機はもちろんとして、雷撃機、攻撃機、輸送機とありとあらゆる艦載機を作ってきた。
 アメリカの戦闘機といえば、グラマン。故に日本では第二次大戦中の敵機の代名詞として「グラマン」とさえ呼ばれた。

 グラマン社は伝統として戦闘機に猫科の名前をつける。
 ワイルドキャット、ヘルキャット、クーガー・・・・どれも戦闘機らしい厳しい名前だが、その末裔である最強の守護神に名付けられたのが、トムキャットである。
グラマン社のネーミングコンテストで採用された。
 社運を賭けた、しかもアメリカ海軍の戦闘機に「トムキャット」である。
 アメリカは、粋だ。

 トムキャットは愛されている。
 パイロットはトムキャットを戦闘機の中の戦闘機と誇らしげに語り、クルーもトムキャットに愛着を感じている。
 そのトムキャットと離れ離れにならねばならない現今の世を、さぞかし嘆いているだろう。

 しかもそれは、一時代の終わりである。自分の心のオモチャ箱を仕舞い込まねばならないという、寂寥の時である。

 トムキャットは背中が平べったいので、空母乗組員は、その上でパンツいっちょで日光浴をしたりする。
 その姿は微笑ましい。
 空母の上でトムと人とが仲睦まじく日光浴、ゴロゴロゴロ・・・・と嬉しそうに喉を鳴らすトムキャットの声が聞こえそうだ。
 それ程空母乗り組みに親しまれ、世界最強のアメリカ海軍の誇りの翼なのだ。


 しかもそのスタイリングたるや、趣味の世界である。

 緻密に計算されて、御用軍用機会社数社集まってのコンペで選抜決定されたルックスだが、どうみても趣味でデザインされたとしか思えない。
 商業デザインのように「戦う」よりも「魅了」する事を目的にした意匠のようだ。機能的である事は前提とされて、だ。
 スポーツカーのように機能的でありながらの美しさを備えている。
 他の戦闘機に見られるような無骨さはなく、どの角度から見ても絵になる。

 いってみれば、「セクシー」なのである。

 まさに「猫」である。
 愛らしく、時に精悍で、時にセクシー。

 しかも、F-5やA-4はどことなく魚類っぽいが、トムキャットはまさに鳥だ。
 可変翼を広げて空に舞い上がる様はまさにそれだし、着陸する姿はパイロット達に「七面鳥」と呼ばれるほど。
 空母上で翼をすぼめてじっとしている様はまさに翼を休めているかのようだ。

 表情豊か。
 
 『デンジャーゾーン』に並ぶ『トップガン』のもう一つの主題歌でありトムキャットのテーマともいえる、チープトリック『マイティウィング』の一節「銀色の鳩に乗って、舞い上がりたい」という「シルバードーヴ」という例えは、まさにトムキャットを形容している。
 「その力強い翼に乗せてくれ」
 あたしも乗せてって欲しいい!!


 おまけに戦闘機のクセして、二ケツである。

 バックシーターが居なくても飛ばせる事はエリパチ(漫画『エリア88』)のエース、ミッキー・サイモンが証明している。
 海軍裁判アメリカドラマ『ネイビーファイル』でも、主人公の元トムキャット・ライダーのハーモン・ラブ・ジュニア中佐(かなりのトムキャットフェチ)が素人を後部座席に乗せて、操縦を自分だけでやってのけている。
 
 じゃあ、なぜに、タンデム?

 しかし、二ケツデフォルトでないと、トムキャットの限界性能は発揮出来ない。
 伝家の宝刀フェニックスも撃てないし、レーダー操作やあれこれややこしい仕事を処理してくれないのである。
 トムキャットを退役に追い込んだクソ万能機F-18を見るがいい。
 この二十一世紀を活躍するハイテク機のアビオニクスなら同程度の、二人分以上の仕事をワンマンで当たり前のようにやれる。それ程コンピュータ技術によって省力化が進んでいるのである。

 なんていまいましいのかしら、おむすび山のクセに。

 だが昔の戦闘機の性能では二ケツじゃないと一人分の仕事量を超えて戦闘どころではない。
 「あ、敵・・・・えっとミサイル・・・・あ、何? 何この警報。え・・・・ちょっと待って、ああもうコレ無理無理!! 出来なーい!! 出来なーい!!」

 脳内オーバーフロー。
 テンパった新米OL(ボブヘアーで妹キャラ)化してしまうのである。

 しかもバックシーターは有視界戦では第二の目となって、注意を喚起する。
 「目標・・・・方位270。300ノット。一機だが、接近してみて確認した方よさそうだな」
 「敵は六時方向下方! いい動きしてる!! なあ相棒、芸当を見せてやれ!!」
 とか、
 「敵機は三機、ものの見事に囲まれたな・・・・なあに、お前なら、公園の散歩だよ!」
 「レーダーロックされた! 畜生、撃ってくるぞ!! 心配しちゃいないが、当たるなよ!!」
 「急上昇!! ありゃあ、まるでロケットだ!! おい相棒、ジェットコースターじゃあるまいし、丁重な運転を頼むぜ? トムキャットにはむかつき袋は用意されてないんでねえ!!」
 とか、
 「機銃!! ああクソ!! 第一エンジン被弾!! カットだ!! 片肺で飛べ!!」
 「よーしビンゴ!! 敵機をキル(撃墜)!! さすがだな!! 帰って打ち上げといこう!! ・・・・わかってるよ、俺の奢りだろ?」
 とか、
 「燃料が心細い・・・・おうちへ帰る時間だ」
 「フラフラだな。計器が全部真っ赤っかなのはわかるが、ちゃんと着艦してくれよ? 俺は腹ペコなんだ。メシ喰う前に棺桶に直行は御免だぜ」
 いきがる無法者パイロットに、
 「管制塔にフライバイ!? 本気かお前!? 儀礼飛行にも程がある!! 俺はやだね!! どうしてもって言うんならベイルアウト(射出脱出)するぞ!! おこごと喰らうよかましだね!!」
 「あいたた・・・・ほうら、無線越しに雷雲迫ってくるのわかるだろ・・・・? 後生だぜ相棒・・・・ボスのヤカンが沸騰しないうちに、おとなしく降りてくれ」
 と嘆いたり、
 「あーあ・・・・言わんこっちゃない・・・・艦隊司令はおかんむりだ。降りたら即刻ボスのオフィスに呼ばれるぞ? 俺知らね。土下座の練習でもしとけよ、相棒」
 「いい加減にしろよ。俺はまだ海軍にいたいんだぜ? 新聞の求人欄とにらめっこは御免だ。お前と違って、俺は妻子持ちだしな」
 と、諌めたりする。

 ただの戦闘情報を提供するだけではない。要所要所で世話女房っぽいナイスな発言をあれこれしてくれるのだ。
 「こいつと飛んでいるから」とパイロットは勇気百倍。戦闘力は俄然高まるのだ。
 人間は本当に信頼出来る存在と一緒にいれば、自分の限界を超えた力を発揮出来るものだ。
 そして、頑張れる。
 人間は一人で出来る事は微々たるものだが、仲間とで事にあたれば、大抵の事は成し遂げられる。
 どんな困難な目標でも、心は折れにくくなる。
 信じ合う。助け合う。支えあって、一つになる。
 そこから生み出されるパワー。それが、人間の力。

 え、ひぃとと、ひっとはたがいにささえあってえー(武田鉄矢)。

 逆に喧嘩していたり、関係が冷めきっていたりしたら、最悪だが。
 デメリット全開である。
 無論、チームの組み合わせはいつでも変更出来るようになっている。ご一緒したくない相方なら、いつでもコンビ解消出来るのだ。
 上官に訴え出て、事は終わり。
 トムキャットはメンタル面含めて総合性能だからである。
 一機で豪邸買える戦闘機である。痴話喧嘩ぐらいでスクラップにされては溜まらないのである。
 しかも戦闘機乗組員一人当たりに投資した海軍の経費も馬鹿にならないのである。

 トムキャットの名誉のために一つ付言しておくが、最新型Dスペックや、近代化改装されたF-14は戦闘機の域を越えて、AWACS機としても使用されているのだ。
 他の戦闘機に情報を与え、指揮統制するのだ。後席のRIOが管制指揮を受け持つという。
 それに爆撃機仕様「ボムキャット」という、マルチロールファイターとして活躍出来る事も証明済み。
 それぐらい、近代化されたトムキャットはオーバースペックなのである。
 トムキャットがハチ(唾棄すべきF-18クソ)と同程度のアビオニクスを持てば、退役などしなくてもいいのだ。

 でも、退役すっけどね!
 元からこいつお金かかるから。

 トムキャットに限らず、戦闘機の最大の敵は、金なのである。


 一機の戦闘機を二人の力で操るという熱さ。

 そう、トムキャットは、二人の力を合わせる事によって他の戦闘機では真似出来ない戦闘能力を発揮するのだ。
 二人のパワーが合体すれば、無敵なのである。
 チームワークが無限のパワー。愛と正義と友情と。
 戦隊ヒーローや合体スーパーロボットもののノリである。
 寂しくソロ活動のおむすび山など目じゃないのである。

 水木一郎やささきいさおスメルがもうプンプン。
 「天にぃー舞い踊―るとーむーきゃあっとおおー(テイクオーフ!!)」
 「ゆーくぞーう平和をーまーもーるうーためー(ロックローン!!)」
 「お前と俺との必殺技だ」
 「撃つーぞー無敵のふぇにっいいーくすー(ファイヤー!!)」
 もう主題歌(熱い絶叫付)が聞こえてきそうだ。

 「ウイングオープン!!」
 「ランディングギア・・(溜め)・・ダウン!!」
 と何かワンモーションやるたびにパイロットが叫んだり、
 RIO「テッペイ!! 今がチャンスだ!!」
 パイロット「ようし!! ダイゴ!! 新必殺技を使う!!」
 オペレーター(主人公に片思い)「駄目!! あの技はまだテストも・・・・」
 RIO「そんな事やってみるまでわからねえぜ!! なあテッペイ!!」
 パイロット「ああ!! 特訓の成果を見せてやるんだ!!」
 博士(基地でぬくぬくしているヒゲ)「あの二人ならば可能かもしれん・・・・信じよう彼らを。そして、トムキャットを」
 オペレーター「博士・・・・」
 パイロット「行くぞ!! バリアブルジオメトリーックバルカーン・・・・キャノン!!」
 と神谷明声で言えば威力も倍増だ。


 『トップガン』で見られるような、軽妙な掛け合いも楽しい。一人で黙々とやっていても、時に寂しさが胸に去来するものである(んなこたぁない)。
 しかもアメリカ戦闘機ともなれば『ジョン&パンチ』みたいなやりとりも期待出来る。

 狭いコクピット内で・・・・

 RIO「マズいぞメガマック、何やってる!! ボギー(敵機)は六時だ!! ケツについてるぞ!! お遊びじゃない!! 撃つ気満々だ!!」
 パイロット「どこだエビフィレオ!! クッ・・・・逆光だ、太陽で見えない!! 奴はどこへ行った!?」
 RIO「だからケツだって言ってんだろがメガマック!! どこ目ぇ付けてんだ!! 後ろ見ろって後ろ!! 頚椎おかしくなってもいいから後ろ見ろって!!」 
 パイロット「いてて・・・・」
 RIO「お前それ首の曲げ方無理過ぎるって!! マジ頚椎おかしくなるって!」
 パイロット「あ今一瞬お花畑見えた・・・・ええと、後ろってどこの後ろよ!! いないって、わからないって!! テメエ嘘ぶっこいてんだろエビフィレオ!! お前この前俺が・・・・そう、お前が冷蔵庫の奥に隠しておいたケンタッキーの喰い残しくすねたの、根に持ってるだろ!!」
 RIO「マジか? それ? 全っ然気付かなかった!! ていうか忘れてた!! 入れてたんだそんなの冷蔵庫に俺。それはいいけど、お前そんな恥ずかしい事したわけ?」
 パイロット「え、気付かなかったの? しまったー!! 図らずもカミングアウトしたー!! ヤベえメガマック超顔から火が出る!! メガマックピンチー!!」
 RIO「ホント馬鹿だなお前」
 パイロット「ええと、ああ、じゃああれだ! こないだ俺がさあ、お前が買い置きしてるスーパードライ勝手に飲んだのまだ怒ってるだろ?」
 RIO「はあ!? なにソレ!! お前それマジか!?」
 パイロット「わかってんだって!! 知ってたんだろ? その日のお前の態度なんか違ってたもーん!! なんか冷ややかな視線で見てるっていうかさー」
 RIO「俺そー言われるの一番気にしてるんだ馬鹿!! よく言われるのよ、魚が死んだような目だって。俺実際魚って、魚屋で売ってるのしか見た事ねえから、よくわかんないだけど。生きてるのとか見ないのね。テレビとかでしか。スーパーだと切り身とか、死んでるのばっかじゃん」
 パイロット「ああね。俺もそれ系」
 RIO「だからこれぶっちゃけちゃうと、ちょい上の世代の人に結構引かれるんだけど? 死んだ魚って言われても? なんか感じは伝わるけどピンと実感こないわけ。あんま水族館って行かないし、釣りとか行かねえ人だから俺。生きてる死んでるの対比出来ないわけね・・・・で、ていうか俺今お前にコクられるまで全っ然気付かなかったわ!! 別に飲んでもいいけどさー、仲間じゃん。わー信じられねえお前って、器ちっちぇー」
 パイロット「ウソだお前ぇー、絶対気付いてたって!! そーゆーの細かいもーん!!」
 RIO「(溜め息)あーそれより後ろって後ろだ!! あーあーヤバいヤバいリアルにヤベえって!! 急旋回だ急旋回超曲がれって!! 早く振り切れってこの下手糞!! 死ぬだろが!!」
 パイロット「下手・・・・なんだとコノやんのかテメー!! それ俺カチンきたべ!? トップガン卒業したこのエリート様、空翔る危険な野生児にして天才でしかもいい男でボリューム満点(パテ四枚)のメガマック様になんて事いいやがるんだってば貴様!!」
 RIO「うるせー!! トップガンっつっても所詮運のいい繰り上げ当選入校で、ビッグマウスの癖に成績は二番手と中途半端でイケてない。しかも問題行動連発で退学ギリだったじゃねーか!!」
 パイロット「ああ俺は危険な男・・・・オンリーワンで裏ナンバーワンなカウボーイそれが俺メガマック!! 規格外ノー比較ガイ!!」
 RIO「わあー危険児っぽいそのスタンスマジ惚れるー・・・・馬鹿!! しかもテメエ勉強そっちのけでクラブで女コマしまくってただけじゃねえか!! 女教官までコマしやがって(それで成績にイロつけてもらった)、普通にうらやましいじゃなくて普通に神経疑うぞ、このエロ野郎!! 変態!!」
 パイロット「馬鹿野郎聞けって!! 俺の類まれなフェロモンに吸引されて女の方から寄って来たってんだって!! 悔しかったら戦闘機も女もテメエが操縦しろってんだこのお荷物!!」
 RIO「うまい事言いやがって、お荷物とはなんだこのド下手パイロット!!」
 パイロット「お荷物ってお荷物だ、このエロゲーマニア!! お前実際使えねーべ? 文句があるならオモテに出やがれ!! 話はそれからだ!!」
 RIO「あーそうもうわかった。もうテメエみたいなすぐテンパるサンピン芋パイロットなんかと飛んでられねーし!! 俺もう超頭キタんで、リアルに出てってやっからマジで!! いいな!! 射出装置で飛び出っからな!! あばよ!!」
 パイロット「待て!! レバーから手を離せって!! 今飛び出ちゃマズいだろが!!(やっくん風) お前今どういう状況かわかってんのかって!! これ一機いくらすると思ってんだって!! ハウマッチ!!」
 RIO「ハウマッチじゃねーよ!! 大橋巨泉か!! 今危うく正確に回答するところだったじゃねーか!!」
パイロット「後生だから考え直せって!! 話し合おうって!! やり直そうって!!  二人の時間を思い出せって!!」
 RIO「うるせーあたし達もうお仕舞いね状態かよ!! 今瞬間的にお前との思い出が脳内に過ぎっただろうが!! 今スゴい涙目になったじゃねえか!! いいか聞けもう金輪際テメエの後ろには・・・・あー! レーダー照射ぁー! ロックされたー!! ヤバいー!! 超ヤバーい!!」
 パイロット「あー!! なんか来るー!! ミサイルっぽいのが来るー!!」
 RIO「っていうかそれ完璧ミサイル。やだー!! おかーさーん!! 死ぬのやだー!! 肉じゃがー!! 肉じゃがー!!(母の味思い出している)」
 パイロット「ヘイ!! カモン!! カモンカモンカモン!!」
 RIO「お前それこういう状況で野生児的言動っていうかカウボーイぶる意味マジわかんねえ!! っていうか意外にその向こう見ずなスタンスカッコいいかも!! っていうかそのやる気満々のお前の勢いに、何かやってくれそう的な気合感じっから、凄い期待感湧いてくんだけど!!」
 パイロット「でも、全然勢いだけの俺」
 RIO「・・・・涅槃で待ってるぜ」

 ・・・・死亡。
 タッタッタッタタタタッタッ!!
 「ありがとーございましたー」

 という楽しい掛け合いも可能だ。エアロダンシングコントである。
 ドッグファイトは目が命。
 一つの頭より二つの頭脳、一つの目をより二つの目である。


 とにかく、この戦闘機、只者じゃない。
 だからこそ俺はF-14トムキャット戦闘機が好きになったのだ。

 だが、あの映画を見るまで、F-14が実際に動いて飛び回る姿を、見た事がなかった。
 写真でも見た。漫画でもトムキャットは活躍していたが、動いているわけじゃない。
 
 映像として、動いているトムキャットを、見た記憶がない。

 ああ・・・・待てよ。テレビの日曜洋画劇場とかで放映された映画『ファイナルカウントダウン』で動いているトムキャットを見た事が ある。でもチョイ役。登場時間も少なかったし、あんまり印象的じゃなかった。
 
 俺の心の中のトムキャットは、もっとカッコいいはずだった。

 『軍用機オール百科』を見ながら空想の中で世界の戦闘機を戦わせていたあの頃。
 生き物のように動く可変後退翼と反則フェニックスミサイルを備えた無敵の猫は空母から発進し、Migや小賢しいイーグルやファルコンを蹴散らしていた。
 
 伝説の航空傭兵ミッキー・サイモンのように。
 孤高のエア・マーセナリー、ミッキー・サイモン。永遠なれ。
 心臓はビス止め、血管にはジェット燃料が流れている、ミサイル除けの魔法を使う。
 ミッキー・サイモンとトムキャットのパッケージングは、俺の中ではマストである。
 たとえ、航空傭兵が堕天使(フォーリン・エンジェル)と呼ばれても。

 そんな俺は中坊の頃、ある映画の冒頭からエンドロールまでガンガン飛び回るF-14の格好良さに魅入られたものだ。
 初めて見たときは映画も公開され、レンタルビデオが界隈に出回っていた頃だった。
 「これはお前なら喰いつく!」と勧められて兄貴の部屋で見た時の、あの衝撃。
 
 もう、クリティカル・ヒット。
 鮮烈な出会い、どころではない。
 
 待っていたものが、目の前に現れた瞬間だった。
 
 そう、それは・・・・。

 「さっきから『トップガン』、『トップガン』連呼してたじゃねーか」って言うなかれ。

 えーマジで? リアルにマジで? そーいう水差し、マジ引くんだけど。
 普通そういう言動なくねえ? やべえ! 超信じられねえ!!
 超不信感! 普通空気読まなくねー?
 流れ的に、そういうの言っちゃうのナッシングだっての不文律じゃね?

 俺天然装ってえけど、実際こう皆と? 感動分かち合いたいわけ?

 (天真爛漫系のチアー部所属の妹元気キャラ)
 溜めよう? 溜めようよ、もっと!!
 カンドーしようよ!? 感動イッキ、しちゃおうよ!!

 その映画の名は・・・・

 『トップガン』
 
 やべえ、今回超長い。

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