第25回
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■軍用機に頬染めて

 F-14が全機退役する。

 ていうか、した。

 近々退役するとは知っていたが、もうすでに日本でのラストフライトを終えたと聞き、寂しさを禁じえない。
 もうアメリカの航空母艦にはF-14は一機もいないという話だ。

 F-14とは、言うまでもなくアメリカ海軍の超音速制空戦闘機、『F-14トムキャット』戦闘機の事である。

 世界最強の艦載戦闘機と呼ばれ、機体は大型。可変後退翼を持ち、鳥そのものを思わせるユニークで優美なシルエットは表情豊かで、ファンが多い。
 空戦を任務とする戦闘機としては珍しいとされる複座(ベストセラー機F-4ファントムも二ケツだが)。
 強力なレーダーを装備、航続距離も長い。コンピュータ制御の可変翼で運動性能もトップクラス。
 しかも世界でも類を見ないヘビィ級の長射程空対空ミサイル「フェニックス」を唯一運用出来る戦闘機だ。

 アメリカ海軍が誇るドッグファイター。戦うステータスシンボルである。

 日本では漫画『エリア88』でも有名。天下御免の航空傭兵ミッキー・サイモンといえば、トムキャットだ。
 尾翼に描かれたパーソナルマーク(プレイボーイのバニー)はアメリカン気質全開という感じでイケている。
 その他無数の映像作品に数多く「出演」している。
 日本のロボットアニメ『マクロス』に登場する三段可変戦闘機『VF-1バルキリー』のモデルとしても有名だ。
 漫画にせよ、アニメにせよ、映画にせよ、ゲームにせよ大抵ヒーロー側のマシンであり、役どころは正義の味方。
 人気者である。

 その最たるものは、映画『トップガン』。

 この映画で超人気ハリウッド・スターとして世界でブレイクしたトム・クルーズだが、それもこのF-14の名演があっての事だ。
 主人公マベリックの闘志、怒り、歓喜、苦悩が投影されたトムキャットは、まさに魂の宿った分身。縦横無尽に活躍して敵を撃退し、困難を乗り越える。
 トム・クルーズすら喰うトムキャットの存在感。蒼穹を駆け、大空をマッハで羽ばたくその美しさは人々を魅了した。
 エンドロール手前の、二機のトムキャットが仲睦まじく夕日をバックに飛び去る姿は、胸を打つ。
 いろんな意味でこれは「トムキャット映画」だった。

 はい。月並みな、F-14の紹介、終わり。

 お前、トムキャット好きだろう? お前は?
 イーグル? 聞こえんな。トムキャットと言え。

 トムキャットさん、と言え。

 俺は、大好きだ。
 戦争大嫌いだが、トムキャットは大好きだ。
 実績がない? あんまり敵を撃ち落してない? イランで輸出型のペルシャ猫が何機も撃墜されただろう?
 本当に世界最強かどうか疑わしい?
 積んでるエンジンがショボい? 二ケツカッコ悪い? 値段高い? 空母にいる時アヒルみたい?
 くぬぬぬうぬぬう!!!
 なーにまだ言いたい事があるのか貴様?

 フェニックス使えない?(禁句)

 馬鹿野郎! トムキャットが実績残してたら大変じゃないか!
 もしそうなってたら、その時アメリカはソ連と戦争してたって事だ。第三次世界大戦だ。世界はとうの昔に火の海になっている。
 ある意味、地味で貧相なキャリアで良かったのである。
 それに強いとかどうとかじゃないだろう! 欠点もひっくるめて全て好きになるのが愛というものだろう!
 愛を持て! 愛だよ!

 みんなトムキャットが大好きなんだ!!

 もっとも愛された戦闘機。
 その退役がニュースで報じられるくらい、愛されている。記事を読めば、なんか書いてる奴の思い入れたっぷりだ。
 絶対出てくる肩書き「トップガンに出てた戦闘機」。

 愛されて、三十年。
 お馴染みの翼が、消える。
 アメリカ海軍の守護神は死なず、ただ消え去るのみ。
 ネイビー達からこよなく愛された猫は、長らく住まいとしていた航空母艦から、一機残らずいなくなった。
 冷戦時代を戦い抜いた猫達はもう飛ばず、静かな眠りにつく。

 一機でいいから、くれ。

 以前からトムキャット戦闘機にご執心だった俺・・・・。

 俺は、軍用機が好きだった。
 自他ともに認める、軍用機マニアだった。

 なんせ小学校入るか入らないかぐらいの頃に『軍用機オール百科』なる本を買ってもらってて熱心に読み耽っていたのだから。
 今ではボロボロである。ボロボロ、どころの話ではなく、見事に三つぐらいに分かれている。
 全三巻だ。
 ガキのみぎりだ。本でも何でも使い方が荒かったのだし。
 でも、いかに熱心に読み耽っていたかがよくわかる。
 その本を見ながら、その中に登場する軍用機達を空想の中で戦わせていた。
 憧れの戦う飛行機達の姿を思い描き、空想の翼をどこまででも広げていた。心は高く高く、どこまでも飛んでいった。
 今でいう虫キングのハシリである(違うがな)。

 あの頃俺は戦闘機の知識に関しては自信を持っていた。
 (ここからは好きな人以外は次の■までざっと読みで、もしくはいっそ飛ばしてもいいです)

 F-15イーグルやF-16ファイティングファルコン、日本でもお馴染みF-4ファントムといった人気機種は言うに及ばず。
 当時マイナーだったタンクバスターA-10。
 アメリカの戦略輸出品F-5タイガー、フリーダムファイター。その発展型のタイガーシャークはエリパチ(新谷かおるの戦闘機漫画の金字塔『エリア88』)のせいで日本で人気が高い。
 ベトナムではやられキャラだったF-105サンダーチーフ。
 機首真下のインテイクがキュートなクルセイダー。
 高速道路から発進出来るスウェーデン製のサーブ社製局地戦闘機ドラケン、ビゲン。
 フランスのミラージュシリーズやシュペルエタンダール。
 イギリスが誇るホーカーシドレー・ハリア−VTOL戦闘機はフォークランド紛争で活躍した垂直離着陸戦闘機だ。
 国際共同開発のジャギュア攻撃機。
 それに「見た目スケールダウントムキャット」のパナビア・トーネード戦闘機はベルリンの壁崩壊前、東西統合前当時の西ドイツも使っている。。
 イスラエル製のクフィル。
 アメリカの軽戦闘機のブロンコ。
 インドのヒンドスタン・ナット。
 ソ連のMigシリーズも外せない。ナンバー21のベストセラー機フィッシュベッド、可変翼機23のフロッガー、マッハ3の25フォックスバット。
 スホーイならフェンサーの想像図が印象的だった。
 当時冷戦時代もあってソ連製戦闘機は俺のヒール的戦闘機だった。見た目もどこか不細工でやられメカっぽかったし。
 ヤコブレフ、イリューシン・・・・かつて冷戦時代。鉄のカーテンに遮られてきた、ソ連ブランド。

 爆撃機ならベトナムでカーペット・ボミングを敢行し「死の鳥」と呼ばれたB-52ストラトフォートレス。
 可変翼を持ちスマートなB-1。
 リビア空爆で活躍したF-111レイブンはトムキャットの前身だ。
 イギリスならエイのような見た目のバルカン。

 輸送機の代名詞はC-130ハーキュリーズ。その地上掃討モディファイ型は「空の戦艦」スペクター・ガンシップ。
 巨人輸送機と呼ばれる程のペイロードを誇るロッキード社製ギャラクシーの威容はまさに空飛ぶ鯨。大型トレーラーや戦闘ヘリ数機を丸呑み。
 その他中堅スターリフタ―。
 フランスのトランザール。
 
 ミサイルの知識もある。
 赤外線誘導型(ヒーター)のベストセラー『サイドワインダー』空対空ミサイルは撃ちっ放しが利き機敏、格闘戦には持って来いだが、あまりに自分に正直なために欺瞞熱源体フレアに騙され、勢い余って味方機すらも撃ち落とす。
 レーダー誘導型のスパローは射程は長いが「ほら、あっちあっち行ってー!」と発射母機からハイハイしてあげないと目標には到達出来ないマザコンミサイル。

 世界でF-14だけが装備出来るスーパーデリシャス遊星ゴールデンスペシャルリザーブゴージャスアフターケアーキッド28号的ウルトラミサイル『フェニックス』は軍事ロマンチズムの典型を具現化したスーパー兵器だが、一発でそこそこの戦闘機が買えそうな値段のハイコストごく潰しだ。
 しかも、実績は、ほとんど皆無だ。

 テレビ誘導型対地ミサイルのマベリック。
 レーダー潰しのシュライク。
 湾岸戦争でブレイクしたペーブウェイ・レーザー誘導爆弾はかなり前から完成していた。これはアメリカにとって「ピンポイント爆撃」という必殺技と流行語大賞を生み出した、掛け値なしの当たりウェポンだった。
 イギリスの空対空スカイフラッシュ。フランスのマジック。対艦ミサイルのエグゾセやハープーン。

 その他ヘリ全般・・・・超ド級ツインローター輸送ヘリ、チヌーク。
 それよりも小粒なボーイングバートルV-107は自衛隊でも有名。
 大型ツインローター氏族を陵駕するボディと大積載量のスタリオン。
 救難、対潜、輸送と万能選手のシーキング。
 薄型ボディで被弾面積も少ない元祖空中騎兵隊コブラ戦闘ヘリは、実はヒューイ輸送ヘリの大胆改造型だ。海兵隊仕様シーコブラもある。
 開発途上でボツになったシャイアン。
 当時は開発途上で未知数のAH-6アパッチ。

 対潜哨戒機、電子戦機といったカテゴリーも豊富。
 レシプロ機だが空母航空団の目、早期警戒機ホークアイの背中に円盤しょった威容は印象的である。
 海上自衛隊が世界に誇る新明和US-1飛行艇に誰か愛称つけてやれよって感じである。あれだけ民間救難活動のために頑張っているのに。

 他にも変り種、大統領専用機エアフォース・ワンも乗っていた。

 その本ではファイターパイロットが晒されるGの影響まで漫画で説明されていた。
 戦闘機講座的なコーナーがてんこ盛りだったわけだ。

 いくら性能のいい戦闘機に乗ったからって調子こいて急加速、急旋回を繰り返したら、自分の体重の七倍、九倍のGに張り倒され、押し潰され、下手をすると失神してしまうよ、というのがわかりやすく描いてあった。
 そのおかげで俺は小学校一年にして「Gスーツ」の必要性を理解していた。
 しかしその漫画のおかげで、いや、せいで俺はGスーツの事を宇宙服のようなものだと勘違いさせられた。
 だってそういうふうに描写してあったから!
 実際はスカーレット・オハラのコルセットと萌え系の必須アイテムであるニーハイソックスとガーターベルトを足して三で割ったものだ。
 ツナギ式のフライトスーツの上から装着し、急旋回時には空気をはらんでパンパンに膨らむ。
 下半身の血流を止めて脳の虚血状態を防ごうというものだ。はっきりいって、痛そうである。
 映画『トップガン』に出てくるエリートパイロット達も皆筋骨隆々(見るからにオヤジのマイケル・アイアンサイドでさえ!)だ。スーパーマンのようなイケメンスマートマッチョ揃いだ。
 顔はともかくとして、これは本当にタフでマッシブな肉体を持っていないと強烈なGに叩きのめされて使い物にならないからだろう。かといって筋肉ダルマでもいけない。コクピットに入らないからだ。
 だから映画に出てくるトップガン達は、皆一様にフライトスーツで逞しく均整のとれた肉体で包んでいて、この上なく粋に着こなしている。
 映画ではそういうシーンは出てこなかったが、フィルムの裏では相当フィジカルなシゴキシーンがあったに違いない。

 若干後付けもしたが、これだけの知識を仕入れていたのは凄い事なのだ。

 いくら戦闘機好きのガキだといっても戦闘機と攻撃機の違いがわからない、説明出来ないのがほとんどだったのだ。
 「戦闘攻撃機」(今風でいう「マルチロールファイター」だ)とかなるともうわけがわからない。
 漢字五文字くるだけで、小学校低学年のおつむはオーバーフローする。
 地味な輸送機、爆撃機の知識など皆無。
 ヘリ関係もアパッチやコブラのガンシップぐらいで、ツインローターの大型ヘリ、チヌークの名前なんて知るはずがなかった。

 ソ連のホーカムっていうヘリ知ってる?

 哨戒って何? 紹介じゃないよね?
 早期警戒ってこの漢字なんて読むんだっけ?
 電子戦機プラウラーの風防の先に付いてるあの角から電気出るの?(正解・・・・あれは空中給油するためのプローブというものです。あの角を給油機が曳航するドローグというものにネジ入れてジェット燃料をチュッチュッします。ジャミングとは一切関係ありません)

 ・・・・とかまずその辺の意味がよくわかっていないのである。

 ところが俺ときたら、戦闘機に備え付けられた一発加速装置「アフターバーナー」の存在まで学んでいた。

 意訳で「再燃焼装置」と訳される。

 あれは燃焼室にもう一回燃料をぶち込んでその爆発的な反作用でド派手な加速を得ようというものだ。
 燃費もへったくれもないが、一瞬の速度不足が命取りになるドッグファイターにはありがたいアイテムなのだ。ていうか、ないと困るのである。
 ドッグファイターの忘れちゃいけない身だしなみなのである。

 あの有名な体感ゲームが出た時、俺はそのネーミングセンスに痺れたものだ。
 そのゲームは当時のゲーム業界を驚愕させた。

 スピード感はもとより、瞬時に一回転する画面に眩暈する。
 殺到する敵機。交錯する敵と自分のミサイル。激しくダンスするF-14。
 爆発、爆発、爆発。
 それはまさに「戦闘機のドッグファイト」の迫力を再現するに足るものだった。
 ゲーセンに鎮座する巨大なゴンドラ。それはゲームの中のF-14の動きに素早く反応して、二重構造により縦と横に激しく動く。
 BGもギンギン鳴り響くディストーションギターのハードロック。ノリノリで気分は高揚。戦闘意欲満タン。
 敵機をロックすれば「ファイア!」と音声がプレイヤーを急かせる。ミサイルの轟音、鼓膜を破る爆発音。
 ド迫力、という他ない。
 視覚を直撃するビジュアルの攻撃、鼓膜を乱打するサウンドの大音量攻撃、そして体をこれでもかと揺さぶる体感攻撃。このアンサンブルが見事なまでに絡み合い生み出された小宇宙。どれ一つ欠けてもいけない。
 これはゲームの域を超えた一人用アトラクションライド、というべきだろう。
 まあ一言で言えば「バブリー」なゲームだったのだ。

 普通ああいうゲームだったら「ジェットファイター」とか、「スカイアタック」とか、そんなネーミングに走る。
 まあ「ドックファイター」で無難な線だが、もうそういう名前は似たようなゲームでアメリカで使われていそうだ。

 だが、『アフターバーナー』である。

 これは素晴らしい。
 確かにマイキャラのF-14はプレイヤーにケツを晒してアフターバーナーを見せびらかしている。
 しかも、マイナーチェンジ版(これが本命だろう)の『2』では筐体にスロットルレバーが付いて速度調節可能ときた。
 これで戦術性が一気に広がり、単なるミサイルかわしゲー、ボーナスステージ崖かわしゲーではなくなった。
 低速から高速域への操作で敵ミサイルをやり過ごし、また低速域に持っていって素早く数機をロックオン、撃墜数を稼ぐ。ボーナスステージでは、渓谷の下に鈴なりの地上ターゲットを機銃掃射するために低速域に頼りっきりだ。
 まあそういうわけ。
 だが重要なのは、「アフターバーナー」というネーミングのミーニングがここへ来て昇華した・・・・という事となったのだ。

 しかもローからハイに、さらにローに一気に叩き込めばタイトル通りに「アフターバーナー」が作動し、スピードメーターを振り切る超 絶加速が体感出来るのだ!!
 しかも回数制限なしである。
 緊急回避、もしくは逃げの一手にうってつけ。

 キイイ―ン、キイイーン!! とかっ飛ばし最大戦速。

 ひたすらスロットルを漕ぐ! 漕ぐ!! 漕ぐコノヤロウ!!!
 そのオーバースピードで相対速度バリバリで飛んでくるミサイル群の隙間を縫って一気にかわす!!
 敵機にあたり判定はないからニアミスを気にする必要はない。ミサイルの挙動に気を配っていればいい。
 でも、だからって。
 無理だぜ! ヤベえ! 超ありえねえ!!

 だが、俺ときたら。

 これが不思議な事にかわせるものである。
 多分、神の領域に一瞬なれど踏み込んでしまえるのだろう(言い過ぎ)。メンタルターボかかりまくり。
 その速度感覚、神仙の領域(多分違う)。

 俺、ニュータイプ状態。

 スーパーサイヤ人化。イッちゃうのである。ハジけてしまうのである。
 ストレスなど1mgほども残さない爽快感なのである。

 こうなればとかく、「もう他の事なんてどうだっていい」の境地に突入する。刹那的快感に身悶えし、酔い痴れる。
 人とは皆ある瞬間に「イっちゃう」もの。
 ドライバーズハイ、ダンサーズハイ、ロケンローラーズハイいろいろとあるが、同じようなものだ。

 ゲーマーズハイだ。

 ドーパミン出まくり。
 一発いけないクスリをキメちゃったかのような一種の陶酔状態の高みへ、絶頂感の極みへとトリップするのだ。
 俺、音速の貴公子アイルトン・セナ状態。
 俺はもうマクロス版冴羽遼、スカル隊の好色空戦快男児ロイ・フォッカーの気分。
 「イィイイイヤッハオオー!!」と奇声をあげながら電脳空間をマッハでかっ飛ばしていた。
 そして一度その快感を知ってしまったが最後、もう元には戻れない。
 高まる欲求はエスカレートしこそすれ、元には戻れないのである。
 その瞬間に自分の全てを賭けてしまえる危うい自分になってしまえる、あるいはそうなってしまうのである。

 これでギャラリーでもいれば、モチベーション急上昇。
 もう俺を見てくれ状態。
 「おお! スゲェー!!」という感嘆の声でも聞こえて御覧なさい。
 テンション上がりまくり。羨望の視線に身を捩りながらミサイル回避ショーを熱演してしまうのだ。
 その瞬間、アフターバーナーをプレイする者はスペシャルな存在になれる。
 ゴットンゴットン揺れるアフターバーナー筐体は、ステージアクトの場と化す!
 オーディエンスの熱狂すら吸収してパワーに変えるロッカーのように、信じられない力が自分にみなぎる。
 ヘイヘイヘーイ!!!
 もしくは、これぞ潜在能力の発露って奴か?

 今じゃ考えられない。
 ゲームマスターが勇者と称えられた過去の日々。
 ゲームセンターが戦いの場、武勇伝の場であった少し昔。今みたいにサラリーマンの暇潰しやガキの戯れ、カップルのイチャイチャの場でなく、コイン一つに賭けた男達の闘争本能の捌け口であったあの日々。
 ゲームによってあまたの腕自慢が名を上げた日々。

 アフターバーナー・ハイ。

 それは追憶。
 爽快、無比。威風堂々。
 メンタルとフィジカルを酷使して『アフターバーナー』というキャンバスに自分らしさを描き殴れば・・・・ほん僅かな瞬間にせよ、俺が俺であるというたった一つの輝きを見出す事が出来たなら!(俺はオザキか)
 その日の自分的MVPを自分自身に進呈してあげる気持ち大だ。

 ・・・・はい、話戻そう。
 で、意味がわからない英語程、日本人を魅了し、興味津々にさせるものはない。
 「なによ、アフターバーナーって」とバージョン『2』が出るまで、戦闘機マニアでない人々はその意味がわからなかった。
 そこで俺は「それはねー」と、いぶかる友人達に得意満面で説明してやったものだ。
 つまりは、そういうわけなのである。

 だから俺はバージョン『2』が出た時、「来た!!」と快哉を叫んだものだ。

 本に話を戻そう。

 あと航空自衛隊におけるスクランブル発進の手順。
 軍用機のスピード記録、ペイロード比べ。
 世界各国の軍用機保有数(推定)や、訓練カリキュラムの概要。子供向けとはいえ、なかなかどうして気合の入ったものだった。
 無論、これらのデータは賞味期限切れなので今まったく使えない。だがまあいじゃないか。
 イラストを多用して、わかりやすいのも素晴らしい。難解にしようと思えばいくらでも出来る。だが、それを、子供の知識欲が満足するラインでとどめている。
 さすが、ケイブンシャ。

 何より興味を惹いたのは「空母」の特集だった。
 
 空母・・・・つまり航空母艦。
 欧米式に言うとエアクラフトキャリアー。
 特にアメリカの巨大空母は、スーパーキャリアーと呼ばれる。
 空母が始めて活躍した戦争、太平洋戦争当時の空母は巨大ではあったが、船の域を脱しなかった。
 当時は低速のレシプロ機が全てであったし、それならば戦艦の全長と大差ない二百数十メートルクラスで事足りたわけである。
 離発感速度的にもそれで充分。
 だが、ジェット時代の空母となると、そうはいかない。
 三百メートルをゆうに越すスーパーキャリアーのスケールは違う。全幅も昔の空母の二倍。
 規模的には船と一大航空基地との差があるのだ。
 エリパチ(新谷かおるの『エリア88』)での有名な台詞だが、「一隻あれば国一つ灰に出来る」戦力を持った、もはや軍事拠点なのだ。

 海上を走る航空基地、というコピーは燃えた。
 
 串に刺さったししゃもか、かたくちいわしのように航空機がズラリと所狭しと並ぶ広大な飛行甲板は、ジョギングコースにうってつけ。
 大戦時の米空母とは違い、エンクローズドバウ構造の閉鎖型格納甲板は核攻撃を想定している。
 百近い航空機を飲み込み整備が行われるマンモス空間は、平時には巨大なレセプション会場にもなる。
 
 戦後空母の大発明アングルドデッキ(斜め着艦甲板)。
 空母黎明期からのジレンマ、飛行機が船に降りるという不条理を可能にしたアレスティング・ギア(降着装置)。
 重たい現在の戦闘機を百メートル程度の距離で空に打ち出す、射出用スチームカタパルト。
 これら現代空母三種の神器のメカニズムに、航空機用巨大エレベーター。
 
 空母の頭脳、飛行甲板上にそそり立つ塔アイランド。
 
 翼折り畳み機構を備えた艦載機の工夫。
 
 そういった男の子心を鷲掴みにする航空基地としての機能はもちろん網羅し、その上五千人以上もの乗組員が働く航空母艦の都市としての機能まで説明してある。
 食堂は何箇所もあり、二十四時間営業。
 図書館、床屋、クリーニング屋、郵便局、病院、歯医者、銀行、スポーツジム、PX(生活必需品や食品を販売する売店)なんでも艦内にそなえている。
 あまたある宗教の分け隔てなく相談に乗る牧師さんが常駐、テレビ局まである。
 まさに街一つ洋上に浮かんでいる。
 
 本とは関係ないが、今ではなんとインターネットし放題である。かつてはご法度だった女性もどんどん乗り込んで働いているという。
 
 アメリカ空母、恐るべし、である。
 「一つの街が航海しているようなものだ」という感じの記述に、俺は興奮した。
 軍用機満載の軍事基地兼都市。男の子心揺さぶる存在だ。

 それだけではなかった。
 ここが重要な事だが、空母は、名機F-14が飛び立つ母艦だったのだ。

 そう、最強の猫・・・・トムキャット戦闘機である。


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