第24回
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■ 俺の、ロイ・フォッカー

 警告!!

 本コラムは凄く偏った趣味的なもので好きな人には堪らないかもしれませんが、そうでない人には突っ走り過ぎてついていけない場合があります。
 
 しかも多少、いやかなりの妄想と感情移入が入っていて全般的に因果地平の彼方へ飛んでいってしまっているので、お気をつけください。 あと、当の本人は抑えたつもりでも文中勢い余って下品な表現に走る場合も無きにしも非ずであり、どうかご容赦ください。
 
 読み進めてうちに鈍い頭痛に襲われたら、一度ブラウザを閉じて、ハンマーを投擲した後の室伏広治選手ばりに大音量でひとしきり喚き散らすのをお勧めいたします。実際にそうして近所から苦情が出ても当方一切責任を負いません。

 以上をご確認の上、以下をご覧頂けたら幸いです。

 まず予備知識。 
 世界に誇る日本アニメの金字塔『超時空要塞マクロス』をご存知ない方のために。

(注!! 次の区切りのところまで、凄いタルいです。ここは読み飛ばしても支障ありません) 

 一筋の光芒が、引き金となった。
 
 地球統合軍の新鋭宇宙戦艦SDF-1『マクロス』の進宙式。華やかなりし式典のその最中、事件は起こった。
 地球周辺宙域に重力異変。異星人の宇宙船団と思しき艦影が確認された。
 突如、艦内に今だ存在していた未確認のプログラムが作動。『マクロス』の艦橋要員に緊張と恐怖にも似た驚愕がみなぎる。
 悪霊にとりつかれたかのように動き出す『マクロス』。ブロック構造の長大な艦首が左右に分かれ、主砲発射体制。
 轟音。マクロスがある南アタリア島の地形を削って、放たれる主砲。
 果てしなく延びる破壊的な光の奔流は宇宙へと届き、異星人の船団を貫いた!!
 時は西暦2009年・・・・。 

 アニメ史に燦然と輝く名作、『超時空要塞マクロス』の冒頭部分である。
 
 『マクロス』の原型、異星人宇宙船ASS-1を地球へ落とした異星人の「ブービートラップ」。持ち主である観察軍による十年先を見越しての姦計か、とにかく拾ったものを有効活用しようとした宇宙にやさしいリサイクル精神が仇となったのは間違いない。
 
 地球人類は、星間戦争へと巻き込まれた。
 
 第一級戦闘配備を知らせるけたたましいサイレン。飛び立つ味方機。これまでの平穏さは打ち破られ戦場と化す、南アタリア島(マクロスがぶち当たったから、こういうネーミングなのか)。
 かくして、なしくずしに謎の異星人軍団と交戦状態に突入した。
 
 全ての発端は十年前。
 
 地球へ落着した異星人の宇宙船ASS-1(エイリアン・スペース・シップ)は、人類に大気振動その他もろもろによる世界規模的惨禍を与えた。未曾有の大破局である。
 それだけではない。ASS-1が人類の約十倍はあろうかという巨大異星人達が運用している「宇宙戦艦」であると判明したのである。
 その紛れもない事実は、世界を牛耳っていた支配階層に大きな衝撃を与えた。
 いつかは地球人類が異星人達の戦争に巻き込まれ、あるいは侵略の対象とされるかも知れない。この憂慮すべき事態に対処するため、人類の悲願、世界統合への歩みは一気に加速した。
 そして、『統合政府』樹立を巡って全地球規模の『統合戦争』が始まった。道は平坦ではなかったのだ。統合政府と反対勢力との戦いは長きに渡り、世界に大きな爪跡を残した。
 その間も、全ての引き金となったASS-1は、統合宇宙軍の戦力となるべく、新造巨大戦艦SDF-1『マクロス』級一番艦へと大改装された。
 戦中戦後、ASS-1・・・・つまり『マクロス』から得られたオーバーテクノロジーは主に軍事関連で多くの恩恵をもたらしたという。
 
 その一例が、当時統合軍主力戦闘機F-14をベースにして開発された(後付け)元祖可変戦闘機、VF-1『バルキリー』だった。
 
 この機体は、従来の戦闘機から巨大な異星人との交戦を想定した人型ロボット形態『バトロイド』へとトランスフォームが可能で、前出二つの中間形態である半戦闘機半ロボット『ガウォーク』を加える事により、無限の戦闘空間を演出出来うるこれまでにない戦闘機だったのだ。
 これはつまり従来の戦闘のあり方を一変させるものであり、新しい次元の高機動戦闘の必要性を用兵側に提示する結果となる。パンドラの箱は開けられたのだ。
 そしてそれは、はからずもユニバーススタンダードともいえる宇宙標準の戦闘様式だった。敵異星人は未知の姿勢制御方式のバトルスーツや戦闘ポッドなどに乗り込み、三次元空間を巧みに使った変幻自在な戦い方をするからだ。それはあまりにも地球人の常識を超えていた。
 これら地球の旧式兵器では到底太刀打ち出来ない超兵器のオンパレードにまともに対抗するのは、バルキリーなしでは考えられない。
 そして、バルキリーはそれら異星人製兵器すらも超えた、圧倒的なポテンシャルを示したのだ。
 
 攻撃と防衛、その速やかな転換も瞬時にして自由自在。
 装備によってありとあらゆる任務に耐え、汎用性も高い。
 (陸戦用に考案された、重ね着式追加装甲オプションGBP-1S『アーマードシステム』、大気圏外用ブースターシステム『ファストパック』などはバルキリーに当初のスペック以上の能力を付与している。こういった追加兵装システムにより、バルキリーは限界を何倍にも広げているわけだ)
 戦場も選ばない。陸、海(短時間)、空の限定された一空間だけにとどまらず、ありとあらゆる領域で活躍出来る万能戦闘マシンの完成・・・・戦闘機でもない、戦車でもない、船でもない。用兵者が長年夢見てきた超兵器がここへきて実現した瞬間だった。
 実際、統合戦争中に実戦投入されたバルキリーの先行実用試験型(VF-0)は従来の航空機を遥かに凌駕する性能だった。
 それは、明らかにこれまでの兵器とは異質なものだ。実用性を示し、未完成ながらその実力を知らしめた。空間を目一杯使った戦闘力に加え、多数のマイクロミサイル、大火力ガンポッドの威力。従来のドッグファイトの概念すら覆した、新機軸機。
 
 まさに、軍事上の「奇跡」だった。
 
 同時期に開発されていた陸軍主導の能力特化型陸戦ロボット『デストロイド・シリーズ(先行試作運用型・シャイアン)』が、すでにこの段階で時代遅れにされてしまった事実から、『バルキリー』イコール、VFフォーマットの先進性は明白だ。
 
 何より、『バルキリー』は後の対異星人戦争における花形、主戦力として、目覚しい活躍を見せる事となる・・・・。
 新時代の英雄・・・・数々の名バルキリー・パイロット達の令名と武勇伝と共に。かくて、戦天使によってバルハラの門は開かれた。

 はい、自慰行為終了。

 長くてウザい文章、お疲れさんでした。
 そしてフォールド(読み飛ばして)してここまで来た方、こんにちわ。 

 劇中『マクロス』において主役機(雑魚機としても)として登場する三段変形可変戦闘機、VF-1・・・・『バルキリー』。
 ロボットアニメ史上のエポックメイキング的存在である。
 このバルキリーを縦横無尽に駆るバルキリー・ライダー列伝の中で、外せない男がいる。

 男の中の男だ。
 
 一機で異星人どものファッキン芋兵器多数を向こうに回し、かつ叩き落す豪の者どもの中にあり・・・・燦然として光り輝き、伝説として語り継がれる、その男。
 
 俺達の、兄貴。
 
 彼は、こうして再び戦いに赴く事になる。
 華かやな進宙式は一転して戦時下に置かれた。スクランブル。予想だにしなかった非常事態に、全機に発進命令が下る。
 愛機のコクピットに飛び乗ったその男はシートに背を預け、目を閉じる。
 感慨深げに一言。
 
 「また戦争かぁ・・・・二年ぶりだぜぇ・・・・」

 はよ出撃せんかい。
 
 外の大騒ぎなんかどこ吹く風の呑気さで、しみじみと、神谷明声(ケンシロウ系)で悦に入る。
 戦争を体験した軍人といった感じの、感性のどこかが鈍化した部分。彼は静かに戦闘の高揚感に浸りきり、完全に一人だけの陶酔境に入っていた。
 陰惨な統合戦争が終結し、やっと訪れたつかの間の平穏な日常をそれなりに楽しみながらも(多分)、命のやり取りのスリル分欠乏に常々飢え乾いていた(多分)、その男・・・・。
 これで、死と生の拮抗する危険なワンダーランドへ・・・・心躍るミサイルと敵機が舞う戦闘パラダイスへと帰れる。自分が存分に腕を振るえる、自家薬籠中の世界へ。

 そう、故郷へ。

 それは戦い。
 それは、ありきたりの日々のくだらなさに飽き飽きしていた男の中の男の乾ききった心に、さあ今こそ甦れという復活の聖水を与えてくれていた(メイビー)。
 味方がムシケラのように死ぬ中、彼はふと思い起こす(多分)。雪の中・・・・フランスパンの突き出た買い物袋を抱えて、恋人と夜の石畳の道を歩くのも最高の贅沢だ。それから愛する人の手料理に舌鼓を打ち、暖炉の前でワインを飲りながら、ギターの弾き語り。
 平和なる、日々・・・・。
 
 だが、わかったんだ。俺の住む世界は・・・・。

 そう、出撃を前に控えてこの空の勇者はそういう短い思索に耽っていたに違いないんだ、多分。 
 
 感慨ひとしお。あんた今スクランブルですから! 陣頭指揮をとらなきゃいけない指揮官なんだからとっとと発進すりゃあいいのに、目を閉じてニヤついている。
 離陸を促す航空管制オペレーターの声(もしかしてこいつの指示を待つ間がてらトリップしていたかもしれないが)に、
 「了解!」
 とようやく、好戦的な会心の微笑で答える。
 そしてフルスロットル。『マクロス』ファンの中であまりにも有名な名機『スカル1』、またの名を『ロイ・フォッカー・スペシャル』は、大地を蹴りたてて大空へと飛び立った。
 不謹慎な戦争の犬、と言うなかれ。彼は、戦いの中でしか生きられない、そういう悲しい男なのだ(決め付け)。
 だがそう・・・・だからって決して酷薄な冷血漢ではない。変幻自在な可変後退翼を持った空飛ぶ鬼畜ではない。
 
 血の通った、熱血漢だ。
 間違いない。
 
 頭に血が昇りやすく、自分の上官でも気に喰わない事があったら処分なんか糞喰らえで遠慮なく文句を言う。
 初の空間転移を試み、装置の暴走で島の避難民もろとも太陽系の縁に飛ばされた(あるいは飛ばした)マクロス。決断した艦長グローバルの面目丸潰れ。五万人の人命を救うため、受け入れ態勢を進めるグローバルやクローディアらに、呑気なフォッカーは迷子になった後輩を探してくれと無理難題を言う始末。
 だがもちろんそんな余裕はない。即刻拒否られてキレるフォッカー。
 「わかりましたぁー!! 一人の命より、うん万人の方が大事だって言うんですねえー!?」
 そりゃそうだよ。
 きかん気の強い、腕白軍人だ。ある意味わからず屋。
 『マクロス』の生命線であるバルキリー隊のリーダー『ロイ・フォッカー』を頼りにしている(あるいはせざるを得ない)グローバル艦長としては、頭の痛い日々だったかもしれない。

 長々と前フリを書いてきたが、俺の言わんとする事はこういう事だ。
 
 俺は、ロイ・フォッカーになりたかった。
 
 二十世紀末に勃発した世界統合戦争のトップエースで、可変戦闘機VF-1『バルキリー』のテストパイロット(テストパイロットはベストパイロットの証明だ)。
 
 その男、百戦錬磨の戦闘機乗り。

 世界初の三段可変戦闘機を、骨の髄まで知り尽くした男。
 巷で『板野サーカス』と呼ばれる、あの戦闘シーン。けしかけられた猟犬の如く迫るミサイル群を、その日の予定でも片付けるように余裕しゃくしゃくにかつ淡々と回避し、叩きつけられる機関砲弾の豪雨も軽い操縦桿捌きで一蹴。
 
 自分の眼前にケツを晒した迂闊で愚鈍な敵機を躊躇なく速攻撃墜。
 堕ち行く火の玉を見下ろし、嘲るように一笑。撃墜記録更新。
 
 そのフォッカーが駆るは、マクロス航空団リーダーの証・・・・栄光の『スカル1』。
 俺も玩具で持ってた、今は亡きタカトクトイス(倒産)製完全変形『スカル1』。
 それは大空好色一代男に約束された最強のバルキリー・・・・S型。傍若無人の馬の鞍。黒いラインの可変後退翼を生やした戦天使。阪神タイガースかと見紛うアグレッシブ感ありありの白地に黄色と黒の塗装。
 髑髏マークの愛機。
 爪先から頭のてっぺんまでグラマラス無比なフォッカーらしいマシンだ。 

 このロイ・フォッカーという男。
 存在感のある、類稀なルックス。
 目にも眩い金髪。ちょっと矢吹ジョーチックな前髪。鋭い眼光。口元に湛えた不敵な笑いに、時折少年のそれのように無邪気になる目元。
 浅黒い肌。軍隊生活で機能的に鍛え上げられた戦闘的な肉体。すらりと伸びた長身の偉丈夫。バーボンとラッキーストライクが似合いそうな風貌。
 滲み出る男の渋み。
 ミスター・パイロット。口元に湛えた、男性フェロモン全開な笑み。
 彼がこよなく愛すのは、いい酒といい女といい飛行機と、自らの心を癒すかのように爪弾くアコースティックギター。そして、生業としての戦い。そこに空虚さを感じつつも最高のエクスタシーを見出す、生と死ギリギリのスリルに魅せられた救い難い気質。
 渋い・・・・とにかく、グラマラス無比な容姿。内から外まで申し分ないダンディズムフル装備。
 これで、お茶目さと精悍さを硬軟織り交ぜて使い分ける神谷明御大声だから、女としては腰が砕けずにはおられまい。男でもカウパー腺全開、前立腺フル稼働もののナイスガイだ。 
  
 豪放にして剛毅。大胆かつ繊細。酒と女と戦闘の日々・・・・なにより果てしなき大空をこよなく愛するフライング快男児。
 スカル大隊のヘッド。第一線で戦う武闘派管理職。
 入隊前は飛行機のアクロバットチームに所属していて、俺のフォッカーはそのころから空の素晴らしさに魅せられていた。
 フォッカーは空そのもの、広大無辺な大空を思わせるスケールの大きい男だった。 
 芸術的なまでに磨き上げられた操縦センスで愛機スカル1を駆り、ウンカの如く押し寄せる敵機をことごとく叩き落す。
 
 出会い頭に挨拶代わりに撃墜。
 
 初めての戦争体験でおたつく後輩をからかいつつ、たまたま目に付いた奴を通り魔的に撃墜(テレビ版第一話)。
 
 撃墜、撃墜。とにかく撃墜。ミサイルで撃墜、ガンポッドで撃墜。敵の命をムシケラのように一撃で踏みにじる撃墜にとりつかれた金髪の悪魔。 
 
 テレビ版の映像を見る限り、俺のフォッカーは敵が堕ち行く様を見て、
 「おー死んだ死んだぁ」
 ぐらいの感覚でしか見ていないようだ。
 さすが歴戦の勇士という渋い感じ。これが戦争だぁ人の死が何だぁ、と割り切っている。良心の呵責とか、自責の念とか、そういう甘っちょろい迷いなんかとうの昔にふっきっている。
 ・・・・という以前に、我らがフォッカーは前の戦争で完全に死生観がイっちゃってる節がありそうなのだ。神経を疑うぐらいに。
 とにかくロイ・フォッカーを買えばもれなく撃墜王の称号が付いてきます、というぐらいの人非人っぷり。
 
 それでいて、ちょいとブルーになる時もある。テレビ第二話。後輩に襲いかかる人間に酷似した巨人異星人をガンポットで撃ち殺して、
 「まさか・・・・ここまで人間にそっくりとはな・・・・」
 とヘルメットに手をやりつつ、もの思わし気に呟く。
 万年お助けマン、いつだって若年層のお助けマン、ロイ・フォッカーは暗い苦笑を浮かべる。
 
 でもそこはでっかい子供。エアレース(飛行機レース)で数回優勝したぐらいでいきがる後輩に、
 「俺なんか統合戦争で180機撃墜したわい」
 と撃墜数を挙げて自慢返しをしている時、後輩に「人殺し」とごくまっとうに揶揄されてさすがの空飛ぶ一騎当千気質も良心が痛んだのか、
 「しょーがねーだろお、それが戦争なんだからよおぉー」
 と気後れして弁解する、まあまあ人間性の残った正常な面も持ち合わせている。
 まあフォッカーが人殺しなのも、敵を殺さなければ自分の生もない悲しい戦争の成せる業。大量殺人が称揚される戦時下であればやむを得ない。
 行動でも示しているように、彼が、軍人は軍人でも民間人を守るために命を懸けるのを是をする軍人である事は明白だ。
 
 が、それでもやっぱり俺のフォッカー。
 ただの百戦錬磨ではない。かますところはかますのである。

 劇場版にこういう逸話がある。 

 マクロスの居住区画で人気沸騰のアイドル、リン・ミンメイといい仲になりデートを敢行、挙句の果てには彼女を連れ出して土星でラブラブ飛行と洒落込むフォッカー・・・・の後輩、一条輝。
 意中のあの娘との心踊る、二人だけのフライト。土星のリングでアクロバット飛行をするオレンジ色のバルキリー。鮮やかで軽快な挙動が、ウキウキモードの輝の心を表している。
 デートたけなわだが、後を追ってきた早瀬(上司)とカイフン(ミンメイのマネージャーでロン毛)の乗る連絡艇に、あっさり御用となる。
 その場の勢いとはいえ、許可もないのに民間人を宇宙へ連れ出し、バルキリーの無断使用。気持ちはわかるが、軍人失格である。
 「ミンメイに関しては手を打ったが、君に関しては容赦しないからな!!」
 ミンメイのマネージャー、カイフンは大いにエキサイトしている。当たり前だ。二人は悄然とし、輝はミンメイに「帰ろうか」と促す。
 そこへ彼らを捕虜にせんと襲来する無数のバトルスーツ。
 
 まずい!! 敵に見つかってしまった!!
 
 もっとまずい事に、見るからに弱そうな連絡艇にはもちろん武装が付いてない上に、輝が持ち出した複座型のVT-1は練習用の非武装バルキリーだったのだ。
 丸腰、である。逃げっきゃねえ。
 
 さあ、盛り上がって参りました。
 
 もちろんそこへ、我らがお助けマン、ロイ・フォッカーが颯爽と登場する。

 敵機が次々と爆砕する。 
 見れば、土星を背に、敵集団に猛然と突進するロイ・フォッカー・スペシャル。美沙の要請に対し短時間でかっ飛んで来た出前迅速ぶりはさすが。エニタイム臨戦態勢だ。
 しかし、何かが違う。
 
 「ヒカルゥ!! また面倒かけやがって!! ヒィークッ!!」
 
 酔ってます。
 上官として怒り心頭間違いなしの後輩兼部下の大失態にも、彼はこううそぶく。
 「だけど、よくやった!! 男はそれぐらい積極的じゃないと、女はモノには出来ん!! ・・・・ヒィークッ!!」 
 やっぱり、酔ってます。
 「先輩!! 酔ってますね!?」
 という当然の突っ込みに、フォッカーはあの名台詞を吐き出す。
 「バーロー!!」とすかさず一喝。
 
 「酒が怖くて、戦が出来るかああ!!」
 
 やってくれます。
 言ってしまった必殺の一言。フォッカーを表現するにふさわしい、台詞だ。
 
 豪傑である。

 もうこうなると怖いもんはない。
 酒気帯び操縦で「イヤッーホォオオオー!!!」と陽気で能天気なヤンキーらしい雄叫びをあげ、ド派手なロールをうちつつ機銃をぶっ放す豪快さ。
 エリート機のSスペックのみが許される、ファストパックのニ連装ビームキャノンを乱射御礼状態である。欲求、本能、感性のおもむくまま撃墜。
 脳内にアルコールが回って後先考えない無謀さはまさに戦う男のお茶目。大集団に単機で乗り付けて、さして臆さず勝つ気満々。VIP(リン・ミンメイ)を救援しにきたんだからもっと手勢を率いてくれゃあいいのに、と思う。
 はっきりいって剛毅を通り越して無茶苦茶。いくら勤務時間外に呼び出されて、酒回りまくりのバッドコンディションで後輩の危急に駆けつけた、とはいっても。
 だが結局、勇戦空しく自分もろとも敵に捕まってしまうのだが・・・・まあ無理もない。
 クールな天才バルキリー使い、マックスなら絶対にしない醜態だ。

 基本的に、酒癖はあまりよくはない。
 
 仕事上がりに隊内クラブへ繰り出し、バーボンあたりをかっくらって部下や後輩にくだをまく。もちろん酒には混ぜ物なし。グラスに氷をぶち込んで、琥珀色の液体をどぼどぼ注ぎ込む。
 「コッコッコッ」という瓶口の泣き声。ストレート命。何とかフィンガー関係なし。中庸は許さない。
 グラスを豪快に呷る。中身を一気に空ける。胸のすくような気持ちのいい呑みっぷり。生粋の呑んべえフォッカーの酌に待ったなし。手酌も厭わない。酒も戦闘機も他人任せに出来るか。
 ドッグファイトにも飲酒にも全力投球の、不死身のロイ・フォッカーに休肝日はなさそうだ。
 明日をも知れぬ命。だから呑んじゃえ。非番中はとことん呑んじゃえ。いつ全機スクランブルがわからないという状況でも、とにかく呑む!! 呑んでも戦闘に差し支えなし!! 荒くれ者の兵隊イズム、古きよき時代の飛行機乗り気質を感じる。 
 朝帰りしても、任務に支障はございません!! 細かい事は気にしない豪傑の気概!!
 刹那主義。待ったなし、将来展望無用の今だけニスト。退役、予備役、軍人恩給なんざあフォッカーの辞書にない。男の鑑、ザ・パイロット、イッツ・パイロットだ。
 一緒に酒を酌み交わせば、気分が良くなったフォッカーの口からいろいろな武勇伝やちょっとした逸話なんかが聞けそうだ。部下の輝や柿崎あたりがお供であれば、空の話、空戦テクニック談義に始まって、果ては男がなんたるかというおだや、これまでの人生で築き上げたありがたい恋愛論も拝聴出来るに違いない。
 三軒目ぐらいになると、完璧に出来上がって上機嫌。そろそろ好色フォッカーらしい猥談も飛び出しそうだ。華麗な夜のテクニック『ロイ・フォッカー・スペシャル』を講義してくれるのかも、とその手の話が大好きそうな憎めない巨漢柿崎の胸はときめく。
 定番の下ネタのニ、三個くらい持っていても不思議ではない。
 
 「あー早瀬!! なんだそのツラはあ!! お前こういう楽しい宴の席でいつまでもそう針鼠みたいにツンツンしてやがると、俺の自慢のガンポッドで・・・・おうわ!!」
 殴られる。
 
 はい、妄想解除。
 
 劇場版でも、酒が入ったフォッカーは男とはなんたるか、女はこうあるべし、と危なっかしい眼をして、ろくにろれつの回らない舌で熱く語っていた。同席していた早瀬美沙、パトロール編成表をフォッカーに提出しようとして運悪く捕まってしまった後輩の輝。はっきりいって、かなり迷惑そうな顔をしていた。
 目が普通じゃない。話を聞かされる側としては迷惑極まりない。どう査定に響こうが一発蹴りを貰おうが早く敬礼して辞去したい。
 目に入る奴は全部自分のいじり道具。酔った勢いで、隣りに控える恋人クローディアに無理矢理キスを強要し、そのままソファーに押し倒したりもする。
 「二人が呆れてるじゃないの・・・・!!」
 フォッカーの背中をグーで叩き、引き剥がそうと身悶えるクローディア。しかしお構いなしでフォッカーはいやらしく笑う。
 「ハハ・・・・構うもんか」

 今思ったが、はっきり言って感心出来ない傍迷惑なセクハラオヤジだ。呑み会に行く時、こういう男のお供にはなりたくない。

 酒癖は悪いが、女癖はどうだろう?
 天下ご免のロイ・フォッカーだ。もちろん悪い。
 
 「俺が何で軍隊に入ったかってなあ・・・・女が好きだからだ!! 好きな女を守る、いい仕事じゃあないかあ!! どわっはっはっ!!」
 と公言してのける、胸がすくような気持ちのいい好色っぷり。「なっんはっはっ」と、笑いも頭悪い程に豪快だ。
 声が同じだからかも知れないが、どうも『シティハンター』の主人公、冴羽遼とカブる。
 エニタイム道行く可愛いギャルに興味津々。
 テレビ版の映像から察するに、どちらかというと尻フェチの方だろう。相手を選んでいるが、セクハラもざらだ。彼の視線は常にいいケツを網膜に焼き付けようとし、隙あらば甘美な感触を試してみようと虎視眈々と狙っている。ミンメイを初めて見た時も尻に目を奪われていた(テレビ版)。
 しかし万事好色でいい女ハント態勢万端のロイ・フォッカーだから、ケツのみならず、チチその他もろもろ全部ひっくるめて女上等なのだろう。
 恋人クローディアとの仲もいいし、別に八方美人の軟派野郎というわけでもないが、いい女ハンターとしての本能は眠らないだろう。男とは、そういうもんだ。
 
 思えば、クローディアと本格的に付き合う前の思い出話の回。
 
 女性隊員を見れば見境なくデートに誘い(テレビ版33話)、ホイホイ快諾したギャル数人とジープにハコ乗りしてデートに繰り出す日々。戦闘時、航空管制官として着任したてのクローディアをお気楽に口説いたりもする。
 これだけなら軽薄街道まっしぐらだが、決めるとこは決める。
 若かりし頃のフォッカーは、野山を駆け回り夢中になって虫を捕まえる純粋無垢な少年のような、そんなイノセントな表情で敵機を叩き落す(非道)。コートの中でラケットを振るう王子様のような爽やかさで、血生臭い空の戦場を駆け抜ける。
 
 腕は確かだが、呆れるほど陽気で図々しい女たらし・・・・それがフォッカーに対するクローディアの第一印象だった。
 そのファーストインプレッションは決して間違いではなかったのだが、実際の所はちょっと違っていた。
 フォッカーの他愛のない振る舞いや素行が生んだ、クローディアのごくまっとうな誤解だったのだ。
 
 試作機のテスト飛行の前でも格納庫でギャルとイチャイチャ・・・・下手すると死人が出る確立大の、危険な飛行試験もどこ吹く風の能天気さ。だが、フォッカーは後々になってクローディアに「だが、俺だって怖かったんだ」と、明日をも知れぬ命のパイロットの心情を吐露するのだ。
 
 テスト飛行を終えた夜。クローディアが寝息をたてる寝室にアナクロな電話のベルが鳴り響く。どうやら彼女は携帯を持ってないらしい。
 フォッカーは「会いたいんだ」と酔った勢いで人を雨の真夜中に呼び出し、「こんな雨の中、呼び出してすまない」と素直に謝る。いつもとは違う様子に戸惑うクローディア。
 試作機(回想当時)バルキリーのテストパイロットに抜擢されたフォッカーは、じつの所怯えていた。不完全な、未知の戦闘機に対する不安。恐竜並みに無神経そうに見えるフォッカーでも、人並みに恐怖感を覚えるのだ。
 さらに回想・・・・いざ離陸の緊張感。見れば、滑走路脇に無残に転がる同僚機の残骸。自分もああなるかも知れないという不吉な予感。恐怖を振り払おうと滑走路を見詰め、歯を喰いしばるフォッカー。
 「パイロットなんてそんなもんさ。平気な顔して飛んでるように見えるが、明日は死んじまうんじゃないかって、ふと思ったりする」
 だから「馬鹿やってないと」やってられない時もある。フォッカーに関しては馬鹿やり過ぎだが、それは触れないようにしよう。クローディアに近づいたのも最初はそんな気持ちからだったという。「怒らないでくれ」とフォッカーは真摯に許しを乞うた。
 そういえばこころなしか、昼間よりも後ろ髪が少し短い。それまでは軽薄さ全開のロングだったのだが、今回の件で反省してバッサリいったのか?
 反省してハサミを入れたにしては中途半端だが、まあいい。
 「女友達は沢山いる・・・・だが、こんな愚痴を聞いて欲しいと思ったのは、君しかいなかったんだ」
 と神妙な面持ちで内心を語るフォッカーに、クローディアはメロメロになった。
 
 「君しかいなかった」・・・・自分にしか秘められた一面を見せない彼。外面に隠された意外な繊細さ。あの不死身のフォッカーが・・・・今穿って考えればかなり巧妙な口説き文句に思える。
 
 天然に見えて意外と策士なのかも知れない。女に関しても撃墜王!!
 バトルが趣味で、スケベが仕事!!
 俺はそんなフォッカーが好きだ。
 
 名前もいい。
 『ロイ』・・・・という男の色気を感じさせる渋く甘い響きに、精悍な『フォッカー』という響き(ちなみにフォッカーという名は実際にある戦闘機メーカーだ。第一次大戦期の撃墜王リヒトフォーフェンの複葉機もそれだったような気がする)。
 名前からして、男。空。
 きびきびした仕事に生きる姿勢と、甘い私生活を表現した、見事なネーミングだ。
 男はかくあるべし、と無言に語っている。ダンディズムというのはこうだ、というのを名で表している。

 それともうひとつ。
 フォッカーの階級は『少佐』だ。
 
 大尉でも中佐でも駄目だ。フォッカーは『少佐』なのだ。『少佐』しかないのだ。
 
 フォッカーはテレビ版でも劇場版でも死ぬ。こういう主人公の後見人顔のキャラは惜しまれつつも殺されちまう。いい味出しててもだ。そうして、主人公が自分の死を乗り越えてゆく課程で、その精神的成長の糧となるのだ。

 そのテレビ版フォッカーの死後、後輩の一条何がしはかくも言ったものだ。

 彼は、先輩の遺したバルキリーのコクピットに収まっていた。そう、彼はフォッカーの遺志を継ぐために、この機体に乗る事を決めたのだ。

 つまりおさがりである。

 先輩の愛機・・・・結構な形見分けだ。
 それはそうとフォッカーの傍で生死を共にしたであろう、旧スカル小隊の直属の部下達はどう思ったのだろう。「俺達を差し置いて」とムッとしたのだろうか。「あのコになんかもったいないわ」「まあずうずうしい!」とエースをねらえ音羽さん状態のジェラシーに駆られたのかもしれない。
 男の憧れ。白地に黄色と黒のカラーリングに、ぶっちがいに合わさった骨二本に髑髏マーク。馬面頭部の四連装レーザー機銃。かつての米海軍F-14トムキャット使いの集団『ジュリーロジャース』を彷彿とさせるその機体。
 フォッカーが死んでも堕ちなかった不死身の名機(これはテレビ版の話。最終回まで生き残る。映画は主と共にしたが)。
 踊る海賊スカル1。泣く子も黙る『ロイ・フォッカー・スペシャル』。ちょいと(プレイボーイの)バニーっぽい馬面頭部の四連装機銃ターレットがキュート。
 敵から見ても、タダモノじゃない感満点だ。そういう心理的効果も期待出来る。
 ミリタリー臭プンプン。ヒロイックなデザインじゃないが(派手だが)、一見悪役っぽい姿が男の子心を燃やす、えもいわれぬ「渋さ」を感じさせた。主人公より全然強い豪傑ロイ・フォッカーの乗機、というのも、そのプラスイメージに一役買っていただろう。バルキリー・ラインナップの最上位機種という設定は男の子心を燃えさせる。
 ガンダムの赤い彗星シャア専用機と同じ感じだ。同じバルキリーだが、しょぼい茶色の雑魚キリーや、輝の日の丸カラーのジャパキリーとは違う。
 ましてやそれがフォッカーの死によるおさがり効果で、一転して主人公のマシンとなるのだ。まさにリアルロボット時代の新しいヒーローメカ像を提案したわけだ。
 
 「強そう」・・・・と子供心に憧れた。しかも、実際強い。茶色の雑魚キリーとは一線を画す。
 
 製作者サイドとしても、結構趣味に走ったデサインじゃないだろうか。
 シリーズ最強のVF-1S。放映当時から、主人公機のJタイプよりも人気があるVF下克上機。実際、テレビ版の後期主役機となったではないか。
 一条輝も二本角のJスペックからSに乗り換えてから、見違えるように強くなったように思う。今まで敵にやられまくっていたというのに、Sに乗ってからは狩る側に回ったのだ。敵機を苦もなく七面鳥撃ちである。本人の成長というより、戦い足りないフォッカーの霊が機体に乗り移っていたのかもしれない。
 
 つまりは、一種のステータスシンボルとしての地位を確立しているS。
 
 フォッカーゆかりの者でなければ機体から拒否反応を喰らってベイルアウト(座席射出)間違いなしのこの黄金のシート(いやこれは例えだから)に座し、マクロス的図らずも出世男、一条は亡きフォッカーに語りかけた。
 
 「フォッカー少佐・・・・俺、先輩のバルキリーに乗せて頂きます」
 
 あれ?
 戦死したのに、まだ少佐?
 
 フォッカーに軍隊の慣例、戦死後の二階級特進はない。シャアと違ってフォッカーは永遠に少佐なのだ。
 一条輝の中では。
 そして、俺の中でも。
 
 「先輩の分まで・・・・働きます」
 先輩の分まで酒呑みます、先輩の分まで女コマします(これはスケールダウンして受け継いだか)、先輩の分までシティハンター声で馬鹿笑いします・・・・とまでは全部受け継がない不肖な後輩だ。
 彼がスカル1で大空をどこまでも駆け抜ける事は、確かだが。

 あ、いかん。
 話はもの凄く脱線したが、俺は『少佐』という階級がとにかく大好きだ。それはシャアと、フォッカーの影響からだ。あるいはそのせいだ。
 二人の活躍や渋さによって、脳にある扁桃体にそうしかと仕込まれてしまったのだ。「少佐」イコール「好き」判定を下してしまったわけである。
 
 少佐・・・・かっこいい、という印象がある。
  
 まあフィーリングで好きなのだが、それ以外にも確たる論理的な理由があるに違いない。憧れずにはいられない理由が。

 偉さへの憧れ。
 偉いが、偉すぎず、自ら実戦部隊を率いる頼もしいキレモノの大人の士官。
 強い。強くて戦場では傍若無人な戦いぶりを見せるが、苦闘する部下の援護にも抜かりがない冷静さと思いやり。でいて、経験豊富な円熟した大人。

 そういうイメージがある。
 
 強くて、憎たらしいくらい颯爽としていて・・・・とにかく素敵。
 シャアにしたってフォッカーにしたって専用機を持っているのが、少佐だ。
 俺は現実の軍隊でも少佐になれば、派手なカラーリングの専用高性能機があてがわれると本気で思い込んでいたのだ。『なんとかスペシャル』とか、『なんとか専用機』とか。
 しかも、それが漫画の世界だけかと思いきや実際現実の軍隊でもあったりするので、二度ビックリだった。米海軍の航空団司令(CAG)機はロービジ塗装ではないハデハデハイビジカラーである(ベトナム戦争の記録でCAG機損失というのを見たが、あれで出ていったんだろうか・・・・)。航空ショーにも展示されてるし、部隊のシンボル的意味合いもあろう。
 レッドバロンで知られるドイツの撃墜王マンフリート・フォン・リヒトホーフェンの愛機も、乗っている奴の神経が疑われるほど赤かったという。

 乗る奴の心意気はどうかわからないが、撃ち落せるもんならやってみろこの野郎!! の世界である。
 戦国時代の武士の鎧兜同様、将たるもの派手でないといけないのである。「俺だよ、俺」とわかってもらえないと悲しいのである。オレオレマシンなのである。 

 通常の三倍。通信機能特化型指揮官機。特別なカラーリング。角付き。
 考えてみればそれは『少佐』とは何も関係ない。大佐だろうが曹長だろうが、彼らは指揮官だからそれに乗れるのだ。エースだからでもある。
 でも、『少佐』は専用機に乗らなくてはいけない。
 
 憧れの階級。
 
 全てシャアと、フォッカーのイメージだ。フォッカーは三の線がちょいと強いが、まあ颯爽という言葉は当てはまるだろう。
 アニメ界のいい役どころの士官も、結構『少佐』が多いのではないか。あらゆるストーリーで、要所要所で、少佐が物語を引き締める。俺が『少佐』というキーワードに過剰反応しているから、というのは否定できないが、それでも!
 否定してもらってもいい。俺はそう決め付けるから。もう天上天下唯我独尊モード。
 俺はそうとしか思えない。だから俺は世界の中心で『少佐』への愛を叫ぶのだ。
 
 だが、悲しむべき事に俺にとっては、『少佐』はフォッカーだけしかいないのだ。
 いなくなってしまった。
 仮面のキザ士官シャアは物語の途中で『大佐』に格上げされて「しまった」し、『大佐』になってからの凋落ぶりは見るも無残だった。そうなると、もう俺の中では、『少佐』はフォッカーしかいなくなるのだ。
 『少佐』在位期間中に壮絶な死に様を見せた士官、フォッカーに俺は敬意を表して『永世少佐』の階級を送りたい。
 
 つまり、死後も出世なしである。二階級特進封印である。

 豪快、パワフル、無敵、酒豪、自分勝手、熱血、スケベ、能天気、空を愛する浪漫チスト、唯我独尊・・・・のようでいて実はナイーブな一面を持ち、思慮深く世話焼き。ミンメイいわく「思いやりのある人」。
 生まれながらのヒコーキ野郎。空の職人。
 こういう奴がパイロットにならなくてどうするのってくらい一昔前の豪傑戦闘機乗りのステロタイプ的好人物である。

 戦いに巻き込まれた少年を導いていく頼もしい後見人という、その役回り。主人公達のピンチを何度も救う。
 困ってる奴とか死にそうな奴がいたら放っておけない根っからのお助けマン気質。
 
 そして、微笑ましい馬鹿な振る舞い。
 そう時折やる事、馬鹿。後輩の輝ですら、いや輝だからこそ、たまについていけない時がある。
 
 陽気で仕事が出来て、誰からも頼られ、実際頼もしい。厳しいところは厳しく、馴れ合いはなく締めるところは締め、決めるところは決めるが、たまにご愛嬌で大ポカもかまし、それでも「しょうがないなあ」と周囲に苦笑される愛すべき馬鹿。
 ちょっと気分屋で暴君だとか、酒癖悪いとか、女癖悪いとか、そんなのささいな欠点だ。多くのものを与えてくれ、また与えたくなる人だ。
 
 こんな上司や兄貴分や先輩がいたら、慕わずにはいられない。
 
 男の中の男。生まれ付いてのパイロット。
 どんな戦闘でもビビらず勇猛果敢、余裕の笑みでスマートに戦ったりもするが嫌味さがない。
 肝の太い、翼を生やした優しい戦士。

 俺の中では彼こそが、ミスター・バルキリー。ミスター・マクロスまでいかないのが、フォッカーらしさだ。
 
 あんな人に、私はなりたかった。

 ビフォア『マクロス』の方、これを機会に是非ご覧ください。
 フォッカーの活躍に注視しながら。

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