第22回
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■ なんというモンキー野郎どもだ!!

 新年早々アンニュイで申し訳ないが、カミンググアウトする。

 だりー。
 
 さるばどーる、だりー。
 
 しかしこれではいかん。我ながら不甲斐なき事よ。
 この夢心地な正月気分から脱却するためには、無理矢理にでもテンションを上げなければならん。
 こういうのはどうだ。
 
 ふとん猫第二十二かーい!!
 エブリボデ元気かーい!! エニタイム元気かーい!!
 お屠蘇呑んでるかーい!! 餅を嚥下し損なってしん吟(シンギン)グしてるかーい!? 

 失礼。
 
 空回りだ。
 
 いまひとつというところだ。
 エンジンがかかりきっていない。これじゃあ正月明けはどうするっていうんだ!!
 自分的暖気をせねばならん。
 
 猛烈に忙しい後人間休みをとると、どこか感覚が鈍ってしまうものだ。
 どこかおかしい。どこか、本調子じゃなくなる。
 
 そう。
 特に、年末年始はテレビに釘付けで(ザ・テレビジョン購入済み)元日ときたらまったくの寝正月だった俺には。

 大晦日は『イノキボンバイエ』を録画しようか、『サップ対曙』の方にしようかと迷い、結局後者に(もう一つ『K1』もあったけどね)。
 今思えば、「イノキ」の方を撮るべきだった。俺的に面白かったし、猪木御大も「バカになれー!」とあの調子だし。こっちの方が間違いなくエンタテイメントしていたし楽しめたしポイント高かった。
 しかし近年、大晦日にはこういう格闘系の催しものが多いが、どうした事だろう。まあ別にどうだっていいが。
 もちろん俺は正しい日本人なので、これらの裏番組の合間に『紅白歌合戦』も小刻みに鑑賞する事を忘れない。
 はっきり言って、俺はあまり面白くない。第一、最近の曲もあまりわからないし。ただ、近頃演歌の方が心の琴線にふれるのは、なぜだろう。
 さて誰でしょう。
 「このぉおうおうとうきょおうさばあうあうくうくうくうくうくう」
 答え・・・・前川清。あなあとぉわあがあがあがあがあいれえれえれえばあばあばあばあ。
 
 まあいい。
 
 だがこれは、俺にとって年越しの気分を盛り上げるためにマストな要素なのだ。前川清じゃない。『紅白』がだ。
 良きワンパターンさ、とでもいおうか。これがあると、年越し。そういうのを期待して、そこから受ける気分に酔いしれるためのものなのだ。
 
 もちろん俺は『紅白』を観ながら年越し蕎麦をすする事も忘れない。
 
 クライマックスを迎えた『紅白』が大団円のうちに終わると一転、「ボーン」という荘厳な響き。静寂に包まれた由緒ある寺の映像。神妙な調子のアナウンサーの声。
 先程までの華やかさから打って変わって、薄ら寂しく、厳粛な雰囲気だ。映し出される映像も、凍てついた外気を視聴者に感じさせる秀逸さ。
 お祭り騒ぎは一時中断。去りゆく年に名残を惜しみ、やってくる新たな一年を迎える心構えが出来る。
 思わず、居住まいを正してしまう自分がいる。
 そう、『ゆく年くる年』・・・・これまで録画してしまう猛者がいれば、義兄弟の契りを結んでもいい。保証人になってやってもいい。
 もちろん冗談だが。
 
 さて、新年。お祭り騒ぎがまた再開。各局とも夜の夜中だというのにテンションが高い。御馴染み『朝まで生テレビ』もあって今後の日本の行く末を案じる・・・・新年早々厳しい現実を突きつけるというピリリとしたスパイスも高得点。
 この元旦深夜のお正月番組で新年の夜を過ごすというのも、初詣以上に味わい深いと俺は思う。このお祭り騒ぎがいいじゃないか。
 
 無論、元旦といえば『隠し芸大会』のチェキにも抜かりが無い。その他も。俺はそのためにビデオテープを大量に買い込んでいるのだ。
 コタツに入って広げた『ザ・テレビジョン』と睨めっこ。
 「あ、今日『トリビア』撮ろーっと」
 新年恒例ものまねバトルがある事を知ってシャアっぽく一言。
 「ええい、こうでなくてはなあ!!」
 まさに、テレビと過ごすお正月である。
 ご想像出来るだろうか。休みの時はインドア派を自認している俺は猫と一緒に寝正月。そう、大抵寝ている。
 関係ないが、柴咲コウだって休みの日はインドア派なんだ。そう、大抵寝ている。
 何が悪い。
 
 あ、俺とした事が、またしても不覚。
 新年のご挨拶を失念していた。
 遅ればせながら、ご覧の皆さんに新年のご挨拶を。
 
 あけましておめでとうございます。
 今年も宜しくお願いいたします。
 2004年も始動いたしました。この年が皆様にとって素晴らしく良き一年でありますよう。
 心からお祈り申し上げます。
 
 我が猫も十歳近い齢となり老いたとはいえ、やっぱり元気。
 今年も、猫と歩む一年です。
 さて。
 テンション上げていこう。
 
 今年の干支と言えば、猿!!
 
 なんか漫才みたいな入り方だが、俺はこの時を待っていたんだ。
 
 猿、マンキー、エテ公・・・・素晴らしい響きだ。
 俊敏、身軽、芸達者。
 愛嬌があり、バカっぽくもある。
 猿とひとくくりしなくとも、ゴリラ、オランウータン、チンパンジー・・・・と各種キャラが立っている。いい味出してる。手乗りザル系などはリスみたいに愛らしいものだ。
 今でこそ不倶戴天の天敵ワン公に押されているが、一昔前は、動物タレントとしてかなりの需要があった。
 ヘッドホンをしてうっとりと音楽を聴く、サル。あのソニーのウォークマンの有名なCMだ。何でもあのサル、まだご存命との事。
 
 猿とは、いいもんだ。
 キャラクター的においしい。今年は動物園で猿山のマンキーどもがひっぱりだこだろう。
 いや、ひっぱりサル、かな・・・・ハハハハ!!!(ヒステリックな笑い)
 是非、マンキーどもにらっきょうを投げつけたいものだ。
 
 ゴダイゴの名曲『モンキー・マジック』もここぞとばかりにかかり出した。
 俺としてはアラベスクのディスコナンバー『ハローミスターモンキー』の復活を期待したいところだ。

 モンキー。
 
 俺には、思い入れのある言葉だ。
 
 なぜかって、こういう事だ。

 SFの巨匠、ロバート・A・ハインラインの名作『宇宙の戦士』というものがある。
 
 『夏への扉』同様、俺の心のバイブルである。
 
 宇宙時代の戦士ともいうべき『機動歩兵』なるいかつき汗臭き男達が、クモ型生物とバトルを繰り広げる熾烈な星間戦争の話だ。て、いうか、メインは訓練の話だ。あとハインライン的イデオロギーのぶちあげだ。
 
 冒頭はこうだ。 

 彼ら『機動歩兵』は航宙強襲コルベット艦『ロジャー・ヤング』号で敵惑星衛星軌道上に乗り付け、落花生型の降下カプセルに身を託して決死の挺身降下を行う。午後のティータイム同様に、彼らにとってはごくありふれた事だ。出撃前、部隊をたばねるジェラル軍曹のゲキが飛ぶ。
 「何だ貴様!! 自分の装備にはちゃんと気を配れ!! お脳の愚鈍なモンキー野郎め・・・・それはお前の命に関わる事なんだぞ!!」
 そんな中、戦いの前の武者ぶるいなのか・・・・降下への、はたまた死への恐怖なのか・・・・カプセルの中で機動歩兵ジョニーは震えていた。
 がたがたと、どうしようもないほどに。
 そして、ついに軍曹の降下命令が下る。射出点到着。愚連隊、降下せよ!!
 「ブリッジへ! 『ラスチャック愚連隊』降下用意よろし!!」
 「中央発射管・・・・発射!! 左右両舷連続発射!!」
 『ロジャー・ヤング』から吐き出されるカプセル降下兵達。瞬く間に嵐のような対空砲火に包まれる。炸裂する砲弾。すぐそこにある「死」。敵の心臓部に殴りこみをかける『機動歩兵』は、地獄の一丁目を高速で駆け抜ける。 
 四散する外殻。かなぐり捨てられたカプセルの内部から、神秘の力を秘めた「鋼鉄の鎧」がついにその姿を現した!!
 彼らこそ一人で戦車部隊を壊滅する実力を持った地獄の尖兵であり、熱い血が流れた戦闘マシーンであり、地球人類の鋭い矛先だった。 宇宙最強の兵科。海千山千の修羅場をくぐりぬけた選りすぐりの男達。
 泣く子も黙る、宇宙の戦士。
 しかし、彼らがそうなるためには志願者を心身共に改造する命がけの訓練が背景にあったのだ・・・・という話だ。
 
 この作中で活躍する高機動、大火力、重装甲のエクソスケルタル・パワードスーツは、アニメ界のマスターピース『機動戦士ガンダム』のモビルスーツのヒントになったというエピソードはあまりにも有名だ。
 主人公ジョニーのあまりにもかっこいい一人称で語られる成長物語。時には渋く、時にはコミカルに、時にはセンチメンタルに。まさにハインライン節。これには訳者の矢野徹氏の功績も大きいだろう。
 内容は、男おとこした、汗臭いSF兵隊馬鹿一代ものだ。野球部の部室か、柔道着の匂いを想像してくれればいい。期待されて当然の戦闘シーン自体は、実はあまりにも短い。
 『愛と青春の旅立ち』とか好きだといいだろう。クリント・イーストウッドの『ハートブレイク・リッジ』の感覚にも似ている。
 
 描かれるのは、とにかく『男』。
 
 これにはもう『男』しかない。そこには女性はいない。いるにはいるが、その汗臭い熱血漢達の憧れの対象としてだけしか存在しないのだ。
 実を言うと、この『宇宙の戦士』。いわくつきの作品だ。
 今でもこの『宇宙の戦士』は右寄りの作品とか、国家至上主義だとか、軍国主義復古的だとか、戦争賛美とか、アメリカナショナリズムの典型だとかいろいろ揶揄されているが・・・・大当たりだ。
 しかし、ハインラインが作品によって、多様な視点でテーマを変える事はあまり知られていない。いろんな価値観でものを見ているのだ。
 SFという枠を越えたタイムパラドックスものの名作『夏への扉』もしかり。なんと彼の作品の中には、胸ときめくようなラブコメもあるのだ。
 その作品達の内容たるやなんともバラエティに富むこと!!
 ハインラインがアメリカ大好き、生粋の愛国者だというのは明白だ。名作『月は無慈悲な夜の女王』では月世界の地球からの独立というのをテーマにしているが、それはあくまでアメリカ独立戦争という「革命」をモチーフにしたものだろう。かと思えば劇中ではアメリカに対して集中的な隕石落としを敢行するという過激さだ(敵に回せば最も脅威的なのは大国のアメリカ、というシミュレーションに基づいてだろうが)。公聴会の場で月の革命政府を激しく非難するのも、他ならぬ北アメリカ代表だ。
 ちなみに、ロバート・A・ハインラインは士官学校出の元海軍将校だ。
 つまりハインラインという人の人生で得た財産を素材にして生み出された絵空事・・・・それが『宇宙の戦士』なのだろう。俺はそう感じた。彼本人のイデオロギーだけじゃなくて、自分が未来に想像した国家全体主義的体制ではこういう感じになりますよ、という。
 この作品で彼が伝えたいメッセージ・・・・それは、これまで多くの評論家達が論じ、これはけしからんとくさしてきた。そして、その通りだと思うし、違うんじゃないかとも、思う。
 だが、影響されるのは個人の勝手。否定するのも個人の勝手。それが民主主義だ。自由社会だ。おのおのが思うように、好きなように受け止めるがいい。
 思想に関する限り、あなたは自由だ。あなたの心次第では誰もあなたを幸福に出来ないし、誰もあなたを不幸に出来ないのだから。 
 
 さて、本題。 
 この本に登場する鬼軍曹達は、居並ぶ男達にこうよく言った。厳しい訓練で鍛え上げられたひたむきで、純粋な男達にだ。
 首を振って、嘆くように一言。
 「なんというモンキー野郎どもだ!!」
 それから彼は罵倒ともとりかねない激しい言いようで、部下達を叱咤するのだ。ここでは割愛するが、まさに親分肌の男。おっかない親分が気合を入れるために子分を怒鳴り散らすのに似ている。
 ただ単に気に喰わないからそういう態度で接しているのではない。
 そこには「愛」が感じられる。「愛」があるのだ。スト2風に言うと「あいがぁーあるあっぱーかっと!!(空耳系)」なのだ。
 軍曹達の言い方はきついが「お前、馬鹿野郎だなあ」というニュアンスの、親しみのある感じだ。ビートたけしの「馬鹿野郎!」と同じだ。
 まあある意味、蔑称としても使われているに違いない。
 兵隊、イコール、猿野郎ども。モンキーまでもいかん救いがたいエテ公の烏合の衆。
 地べたをとっとこ走り回るしか能のない猿並の兵隊。
 しかし、『宇宙の戦士』に登場するクソ真面目でクソ一途でクソ食い意地のはったクソモンキー無比なブルシット芋機動歩兵どもは、その『モンキー野郎』という蔑称を誇らしく、輝かしい勲章のように受け止めているようだ。
 もちろん、自嘲的にも使っている。間違いないのは自分達を表現するのに、これほどうってつけの言葉はない、という事だ。
 
 第二次世界大戦中の話だったと思うが、『GI』という言葉がある。
 元の意味は「官給品」の略だ。当時の兵隊達が自分達の呼び名として使い出すのに、そう時間はかからなかった・・・・トリビアでした。

 『モンキー野郎』・・・・。
 そこに諦観はない。自嘲の翳りこそあるが、胸を張って、不器用にでも健気に努力を続ける男の姿が見える。
 
 それは、いたって前向きなマゾヒズム。
 「馬鹿で結構」「馬鹿万歳」・・・・「馬鹿上等」。
 まったくどうしようもないがどこか味のあるクソゲーを賛美し、慈しむのに似ている。
 単なる愚かさを表す言葉とはまったく違う響き・・・・それがモンキーなのだ。
 やんちゃであれ。破天荒であれ。腕白でもいい、逞しく育ってくれ。
 俺は、この男気のある『モンキー野郎』という言葉が大好きなのだ。

 猪木御大も言った。
 「馬鹿になれえー!! 夢を持てー!!」
 
 あと、元気ですかーだ。

 俺はついにこの『モンキー野郎』という言葉の出番が来たと確信している。
 猿年の2004年・・・・今使わずいつ使うってんだ。
 失敗や失望にもめげない大馬鹿野郎のモンキー魂。
 暗い気分も楽天的に笑い飛ばせば、人もついてくる。
 そして俺たちなりの、モンキーマジックを世の中に見せてやるのだ。
 コンビニをフルチンで走り回るとか、公園でパンツ被って女を襲うとか・・・・違う違う!! そういう馬鹿じゃない!! ポジティブにいこうじゃないか!!
 
 だから、新年のご挨拶にもうひとつ。
 
 「さあいくぞモンキー野郎ども!! 2004年は俺たち馬鹿の年だ!! もたもたするな!! 顎を引け!! つべこべいわずに気合を入れろ!!」
 (注意・・・・使う対象、使い所に注意しましょう。まずくいくと全てを失いかねません)
 粗野な男風演技の神谷明御大っぽく言うと、爽快感すら感じられるだろう。
 
 ちなみに、そういう私の干支はウサギです。
 ウサー!!(鳴き方知らない)

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