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第16回 | |
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| ■ ひさびさに、猫 寝苦しい夜が続く。暑くてかなわぬ。 許せない事がある。ただでさえじとじとして寝苦しいというのにプラスして、うちの猫が人が寝付いた頃を見計らって、起こしにきやがるのである。人恋しくなってだ。 その事自体罪ではない。飼い猫たるもの、幼少の頃から人によって飼われているのは特にだが、結構甘えん坊度満点な所があるのだ。猫とは我がまま勝手、ゴーイングマイウェイなところ顕著なのであるが、我が家の猫はそれに付加価値がつくのである。 松平健が暴れん坊将軍なら、うちの二ャン公様は甘えん坊将軍なのである。 まあ悪い事じゃない。 せっかくだ。最近猫の話題がないので、今回はそれで。 ![]() 雨の日の電話ボックス生まれ。生まれたてに母親から離れ、その死に体を我が家に拾われたという、そこそこにドラマチックな生い立ちだ。体中ずぶ濡れの、手の平サイズのちっちゃな怪獣だった。 しかし今は、そんな過去とは無縁の日々を送っている。 こいつは人がメシを喰っている時には、その横でスフィンクスかハチ公ばりのお姿で鎮座ましましたり、メシを終えるや否や「御飯、御飯」という言葉と似たアクセント(多分空耳系)でしきりに話かけてくるのだ。 ああそうだよ、今俺はハンバーグライスを喰ったよ、悪いかい。猫はしばらく「御飯、御飯」と足元にまとわりつく。そして、自分もやおらメシと洒落込むのである。常時スタンバイオーケーのドライフードをカリカリだ。 それに付き合う、俺(見てるだけ)。人の顔を見ながら食べる猫。 帰宅時には、玄関にちゃんと迎えに来たりする。我が家までの距離十メートルほどになると、あやつの鳴き声が聞こえるのである。我が家は閑静な住宅街のなかにあり、結構猫の鳴き声でも遠くからでも聞こえる。で、ドアを開けると案の定、あやつが玄関で体をこねらせながら出迎えるのである。 まあ、可愛い奴だ。 ただ寝ている姿も愛嬌がある。最近は暑いのでこいつも廊下とかひんやりした場所で長々と伸び気味である。その様はいかにも癒し系であり、ちょっかいを出したくなるほどの愛くるしさなのだ。暑苦しくもある。 それに、うちの猫様の必殺技、「深窓のご令嬢っぽく窓辺から外を眺める」という芸当もある。その姿はご近所にも好評だ。こちらも外に回って眺め返してやると、悪さでも見つかったような感じで驚いたようにうめくのだが。 んが、とと。 そんな味わい深い十数年ものの我が家の猫様のなさる事でも、許せない事があるのだ。 悪癖と言っていい。 夜中に人を起こす事だ。これだけは勘弁だ。マジやめて欲しい。 人が寝付いて心地よさげな寝息をたてていると、耳元に足音もなく歩み寄り、悲壮感たっぷりの鳴き声で喚き散らすのである。 勘弁だ。後生だからやめてください。 まず俺は内心哀願する。 その鳴き声たるや後頭部に頭痛を引き起こさんほどで、甲高く、大音量で、どこから声を出しているかわからないワン公の遠吠えめいたものだ。これがてきめんにキクのである。 俺は猫擁護派なのだが、この時ばかりはさすがに背徳的な殺意が芽生えてしまう。耐え難い衝動が全身をみなぎり、一気にダークサイドに心が支配される瞬間だ。暗黒面への誘いだ。 マジぶち切れみたいな感じである。 ばっと上体は起こし、悪鬼のような形相で一言。 「じゃかーしか、きさーん!!」 期せずして博多弁丸出しで怒鳴る。遁走する猫。その後姿はどこか嬉しそうだ。嬉々とした鳴き声をあげ、柱に設置した爪研ぎマシーンでガリガリだ。 こいつは。 まあ一度だけならいい。よかですばい。 しかし、これが何度も続くとどうだ? 軽く勘定して、毎夜ごとに最低三回ぐらい同じ事をしやがるのである。みのもんたに電話して涙ながらに相談したくなるくらいだ。 俺はこいつのために、毛玉吐き用の植物を栽培し(ホームセンターに売っている。こんなに喰えるかというくらいよく育つ)、毎日水をやってその成長を見守っているというのに。 それは無償の愛だというのは、俺にもわかる。飼主の義務、責務という以前にその対象を大切だと思うからこそ、してあげるのである。彼が自分を必要とし、自分が彼を必要とするからこそ、そうするのだ。 俺はこれをしたから、あれをしたからといって彼に何も求めない。家族とは、そういうものだ。ただ好きだから、何かをしてあげたいと思うのだ。 だが、ちょっとは気持ちをくんで、多少手加減してくれてもいいじゃないか。 こいつはまるでお構いなしなのだ。底抜けに甘えん坊気質満点のクセしやがりやがって、猫本来の奔放さと好き勝手さはしっかり持ち合わせているのだ。 それだけの事をしておきながら、てめえが満足すると、さっさと寝に入るのである。俺を起こしといて、だ。なんという非道、なんという無軌道ぶりか。 唾棄すべきやつめ。 一度ジェダイに斬ってもらわねばならん。 ![]() とりあえず、今部屋にオシッコかまされたので、うちの猫には仕返しします。 |
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