第11回
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■ 馬よ、馬よ!

 まずは、ご挨拶から。
 
 新年あけましておめでとうございます。
 今年も、よろしくお願いいたします。
 2002年、よき年でありますように・・・。
 私の正月は、やっぱり寝正月でした。

 では、今年一発目。

 猫もいいが、

 もっと役に立つペットっていないものか、とつくづく考える。
 猫は確かにいい。ああ、最高だ。ベリナイス。猫に魅せられた者は数知れない。
 だが、お遣いにはいってくれない。帰宅したら食事と風呂の用意をして待っていてくれない。日曜の昼下がりに日曜大工で本箱を作ってくれない。パチスロの秘・奥義を伝授してはくれない。ションベンはするがな、してはいけない所に。
 猫にそんな事を要求するのは酷だ。そんな事はわかっている。猫たるもの愛玩動物の極北であり、生まれついての癒し系であり、ハートウォーミングたるものなのだ。自明の理だ。我々にとってそれで十分なのであり、心の拠り所、愛情を注ぐ対象であり、家族となってくれれば、それだけで最上なのだ。用もないのに夜中起こすのはやめて欲しいがな。
 猫だって結構実用的だ。ネズミは捕るし、ゴキブリともバトルする。多少人見知りの気はあるが、来客の際、気に入った人間ならとびっきりの応対をしてくれる。人がサンマの蒲焼きの缶詰喰おうというときに横取りする気満々なのはやめて欲しいがな。
 だが、もっと使いでのあるペットはないか。人の役に立つ、ベストフレンド。
 例えば今年の干支、馬は良い。最高だ。
 馬といえば、男のロマンだ。
 強健な四肢。荒々しい嘶き。
 大地をひづめの音高らかに駆ける雄々しき姿。
 乗用によし、荷役にもよし、つぶらな瞳が愛らしい愛玩用にもよし。臆病で、猛々しい。馬には魅力満点。
 フェラーリのエンブレムのモチーフになるくらい。古の幻獣のモデルとしても多用され、官能的なまでゴージャスに渋きその姿。人類の乗用動物として、友として、共に歴史を築いていった得難い存在。「馬並」という形容に引き合いに出されるほど、畏敬と憧憬の対象にもなっている。サラブレッドともなればその神々しさは息を呑むほど。
 実用的無比の、馬。
 俺は馬など飼った経験など皆無なので、いったい全体どれくらいの食い扶持が必要なのか皆目見当がつかないのだが、それに見合うだけの事は期待できそうだ。
 所有するだけで、優越感大。明らかに他とは一線を画せそうだ。現に競走馬を所有する事は一種のステータスじゃないか。
 何より乗用として利用できる。御するのには相当の苦労と努力が必要だし、訓練がいるだろう。だが愛があるならそんな障害問題ではない。
 ラブ・イズ・ストロング。愛は強い。愛のマジックで乗馬テクはメキメキ上達する事だろう。
 そうとも、是が非でもしたいんだ!!

 近所のタバコ屋にちょっと・・・という時には重宝で便利にちがいない。
 鞭を手に「はっ!」と凛々しく声をあげ、暴れん坊将軍よろしく涼やかな笑顔を閃かせつつ町内を軽やかに駆け抜ける。格好いいじゃないですか。
 重なる呼吸。馬との一体感。これだ、この感覚。至福の瞬間。馬を飼って良かったと実感を新たにする一瞬。口元から、思わず笑みがこぼれ落ちる。
 集まる(奇異な)視線。俺は注目されている!! 確実に目立っている!! 俺最高。
 さあどうだ我がいとしの愛馬「哭王」号(今つけた)よ!! 俺は最高にイけてるか? 新世紀最大にかっトんでいるか?
 唯我独尊モード。
 そして颯爽とひなびたタバコ屋の前に乗り付けるや、流麗無比の、一切の無駄がない動作で馬から降り一言。後ろで馬がぶるるぶるる。
 「おばば、マイセンを1カートンくれぬか?」
 台詞の頭にカカンッと拍子木のようなSEが入れば申し分ない。(イメージは松平健です。キリリ)
 おお、アルティメット激かっこいい。最高に渋い感じ。
 で、そのおばあちゃんがちょっとボケ気味で、耳に手を当てて「あんだって?」とシムラケン調で一発かますと、まったくたじろぎもせず、終始余裕げにこういうのだ。
 カカンッ
 「どうしたおばば? しばらく会わぬうちに、余の顔を忘れたか?」
 ちょっと高貴なお方のお戯れ気味に、高原を駆け抜ける涼風のようなさわやかな笑顔の中に、片眉をつり上げる仕草なんか入れてやると完璧だ。
 代金(税込み)を支払い、老いのために小刻みにヴァイブレーションするおばばの干からびた両の手から商品を受け取るや、高貴なる身分の片鱗を感じさせざるおえない秀麗無比の微笑を閃かせて愛馬に騎乗。
 「はっ!」とかけ声、ひひーんと閑静な住宅街に響きわたらんほどの嘶き。
 そして彼は風のように去っていった・・・。
 去り際に、「おばば、達者でな」と労りの言葉を残しておくと、名君ぽくっていい(お前誰だよ)。
 とまあこんな素敵な自分を演出できそうだし、移動手段を馬にすることでお買い物、ちょっと銀行まで、といった日常的な外出も、目先が変わって楽しくなる。
 なるかよ。
 こんなシチュエーションもいい。

 馬を白馬にして、原っぱで人知れず花摘みに夢中になっている、ちょっと浮き世離れした美少女のところに乗り付けるのもいい。
 「娘、何をしている。」
 気さくに笑いかけるが、その美少女は同調しない。視線は花を足蹴にする我らがおうまさんの足元。そこで発した第一声。
 「花を踏まないで!」(なんかそういうのあったな)
 なぜ自分が非難されるのか。とっさに悟性が働かず、思わずたじろぐ。
 さらに追い打ち。少女は一気にまくしたて、糾弾する。
 「どうしてお花を踏むの花だって生きているのよ可愛そうだとはおもわないわけ鬼あなたそれでも人の子なの変態どういう神経してるの信じられないスカした激ワック乗馬野郎がかっこいいんかざけんじゃねえパン買ってこい。」
 お前だって花摘んではかない植物の命を摘み取っているじゃねえかコノヤロウ。
 開幕の一撃。感じ悪い出会い。少女の剣幕に決まり悪く手綱を引く。
 ようやく事態を把握する。どうやら育ちの良さゆえの天然さか、期せずして少女の大事な花園を荒らしてしまったようだ。馬を降りるや、頭を下げ、素直に詫びる。
 「娘、すまなんだ。余が悪かった。許してはくれまいか。」
 公明正大な高貴なお方は、決して自らの権威をかさにきて立ち振る舞う事なく、己に非あらば殊勝に反省、謝罪する事もやぶさかではない。
 率直に反省、素直に謝る態度、これが好印象を与えた。
 娘は、悪い人ではなさそうね、という感じで一転眩しいほどの笑顔を輝やかせると、おもむろに立ち上がり、「いいのよ、あたしもちょっと言い過ぎたわ。」と事もなげに免罪した。
 そしてロマンスが・・・。
 はじまらねえよ。
 とまあ、ナンパの小道具にも活躍する事請け合い(なわけない)。ただし、あくまで以上のようなシチュエーションが望ましい。それ以外では保証の限りではない。
 繁華街の街頭やゲーセンあたりでこんな事をしてたら、被ナンパ側に致命的なまでに引かれるのはもちろん(まずゲーセンに馬は入れない)、必要以上に周囲の目を引いてしまい、ヘタをすると町中の人気者になってしまってナンパどころの騒ぎではなくなってしまう。
 それに都会の喧噪に興奮した愛馬が暴走して、不測の事態を呼んでしまうかもしれない。

 ・・・そうとも、そうだ。
 不覚、俺は忘れていた。
 大体、公道で車や原チャリと併走したら間違いなく警察に止められる事請け合いじゃないのか。
 公道に馬。それだけでパニックになるに違いない。多分クラクションの雨霰だ。
 かといって歩道を駆け抜けるのも危険だ。よく「馬の方が避けてくれる」というが、疾走する重量物が人体に衝突した時のダメージを想像してみるがいい。もののはずみというものはあるのだ。時代劇や西部劇のワンシーンみたい死人が出そうだ。
 これはもしかしたらデメリットだらけなんじゃないのか、馬。ガソリン代がいらないのは魅力だが、その分飯喰うだろうし、グルーミングとか世話も大変だろうし・・・。
 だいたい牧場でもねえのにどこに飼うよ? どこにわら敷くよ?

 馬は、駄目なのか。やっぱり。

 馬が悪いのではない。馬は、飼う側にも能力が要求されるという事だ。もっというならば、現今の我々の社会環境では、犬猫と同じような感覚で馬を飼うという事は至極困難なのだ。
 なんという現実。
 なんという悲しさ。男の夢、暴れん坊将軍ごっこが・・・。
 もうひとつ言えば、隆々たる肉体にトゲトゲのいっぱいついた世紀末ファッション。その姿で巨躯の馬に跨って「どうあっても退けぬか!」と威厳たっぷりにのたまう事もできないのか・・・(元ネタ、アレです。知らない人スイマセン)。

 やはり、猫で我慢か。

 あ、カンガルーはどうだろうな。
 本気を出せば結構な速力を誇る俊足動物。乗用には向かないが、お遣いぐらいいってくれそうだ。
 腹のポケットにお財布入れてちょっと近所のスーパーまで。品物もポッケに入れればいいんでビニール袋いらずで地球にやさしい。そのポッケに頼んでなかった週間現代まで入っているのはご愛敬。
 セキュリティにも対応。侵入者とか入ってもカンガルーパンチ!! しつこいセールスマンにもカンガルーキック!!
 でも散歩の時には大変だろうな。犬の散歩みたいな感覚で紐付けたら、もうもうたる土煙を上げて町内を引きずり回される事請け合いだ。

 今年も、猫でいいや。


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