第21回
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■ ルイージ崇拝

 柔道に励む高校生たちよ。
 君たちの中にはとても高校生に見えない方がいらっしゃる。
 高校生Bというジャンルを新設すべきと毎年思うのだ。
 君たちはあまりに大きい。

 ああむさ苦しい柔道男児よ、甲高い剣道女子よ。
 1年に1度の再会だ。夏は暑い。

 そう、僕は福岡に9日間滞在した。毎朝6時に起き、準備をして朝食をとり、ホテルを出て西鉄バスに乗り、現場(マリンメッセ福岡)に向かった。ホテルの朝食ビュッフェは朝7時から。一方試合開始は8時。どう考えても時間がない。しかし食べないと昼まで持たないので絶対に食べなくてはならないのだ。
 スクランブルエッグにソーセージ、シーザーサラダにミニトマト、水菜にキュウリを添えてドレッシングをかけ、隣にパイナップルとスイカをのせ、ロールパンとクロワッサンが1つずつ、グレープフルーツジュースにミルク多目のコーヒーを次々と。だいたい3日目ともなると、手順の最適化が進んできて、動きに無駄が一切なくなる。来年はぜひビデオに記録して研究したい。

 さて、福岡にずっと住んでいたので、福岡のホテルというのは利用したことがなかったのだが、全日空ホテルはよい。ハイアットリージェンシーはさらによい。付属の中華料理を出すダイニングバーでは、ダイエー戦をみながらジョッキをぐいぐいやった。仕事のあとのこれはかなりやばい。朝は朝で、さすがパン屋がホテルの中にあるだけあって、パンがうまい。
 仕事が単調なので、朝食でどれだけいい思いをできるかは非常に重要なポイントだ。普段、ご飯にたまご、もしくはご飯に納豆、それですべて、という生活を繰り返していると、この多種多様な朝食というのはそれだけで、おれってトラベラー?という気持ちになる。


   
 会場に着くと、全国高校柔剣道大会のインターネットでの速報業務がまっている。もうこのイベントのシステム、最初に作ってからもう5年になる。インターネット速報のために開発したシステムとはいえ、矛盾のある記録を入力時に受け付けないといった精度が高い記録が可能になっているので、近年はこれがひそかに試合進行の要になりつつある。勝ち抜きトーナメント戦なので、たとえば1回戦の試合結果が確定しないと、2回戦の組み合わせを決めることができない仕組みだ。
 そもそも試合進行を補助するつもりではじめているので、「おいどうなっているんだ、次の試合ができないじゃないか」と苦情を言われて、新聞社の担当者は毎年かなり困っている。少し前まで、夕刊に間に合えばよく、正確でさえあればよかった入力作業に、なぜか妙にスピードが求められる時があるのだ。

 記録ブースのすぐ隣で白熱した試合が同時に10試合も行われている。そこで繰り広げられている対戦は、彼らにとってはものすごい密度で体感した若き日の記憶として残るに違いない。
 しかし僕にとってそれは10個の試合場から集まる1300試合データのうちの1つ、その中のさらに1バイトのデータに過ぎない。それは現場にいる人間の視点としてはあまりに遠すぎて、完全におかしいといえる。



気が遠くなる試合数


気が遠くなっている人
 

 月に着陸した人が地球に戻って月をみたとき、はじめて具体的に月というものを意識できるのではないかと考える。僕らが夜空の小さな月を見て、月を実体として意識するのはあまりに難しい。月との距離をはじめて理解した人は、それが分かった瞬間、いつか人類が月に行くことを果たして想像できたのだろうか。

 夕方、仕事が終わるとまたバスに乗り、親、妹、友人、知り合いなど、毎日誰かと食事。学生の頃、福岡をメインに活動している頃、よく通った店を中心に歩きまわった。
 バスの中で携帯電話で話す若者、電車の席を自らの荷物で占拠するおばちゃん。マナーは最低だけれど、みんななんとなく元気だ。
 福岡に友人が多くいるということで僕が特にそう感じやすいというのはあるだろう。しかし、福岡には希薄なものが広がっている感じがまるでないのだ。利益追求主義からどこかはずれたような世界がある。映画ではなくて演劇を見ている感じ、それが福岡という街なのではないか。

 借金をかかえてあんなに痛い思いをしたのに、まだゲームを作りたいという欲求が消えない。つまり、前回はあまりに中途半端だったということだ。それが自分の努力が足らないのが原因であって、しかもあれが最後というのでは、人生はあまりにくやしい。

 ゲームを作りたいという欲求は、システムエンジニアとして4年目になる現在のウェブ制作会社勤務がこのまま続くかどうかを微妙にしている。だが、ウェブ制作会社にあって、ゲームの制作も一部行っているという事実がそれをさらに微妙にしている。

 サラリーマンは楽だ。仕事の量の多少によって給与は変動しない。だがそれに甘えて守りに入ってしまうサラリーマン集団は嫌いだ。会社が大きくなるのはよいことだ。徹夜する日がなくなるのもいいことだ。けれどもこうして安定していくのは、僕にとってつまらないとしかいいようがない。止まっていてはだめやないかと思う。ルイージはジャンプし続けなければならないはずだ。

 セントクリストファー・ネイビスは、東カリブ海の国だ。ルイージならすぐにチェックするに違いない。

   

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