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第10回 | |
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| ■ 武士と入院(1) 「武士道といふは、死ぬことと見付けたり」 武士道の本質は、生死2つのどちらかを選ぶことなったら早く死ぬほうを選ぶということにある。常に決断としての死を覚悟していれば、二者択一を迫られたときでも、腹を据えて、まい進できるというのだ。 余計なことは考えず、覚悟を決めて前に進めということだ。 入院をすることになった。前々からなんとかしたいと思っていた慢性の病気を、27歳になったこのあたりで一気に払うべく、手術を受けるためだ。別に放っておいても、匂いがわかりにくいとか、ちょっと呼吸がしづらいとか、そのせいでものごとに集中できないとかそういうことなので、生命に別状はないと思っていた。 紹介状をみながら今井医師は診察をし、とりあえずいままでと違う薬を飲んで様子を見るという結論をだした。手術はいやだなと思っていたので、ちょっとほっとする。手術を受けてみたらと紹介されて、手術はいやだなと思うのも変なはなしだ。まるで覚悟がなっていない。 さて、そんな薬もいまいち効かないということがわかった頃、じゃあちょっとレントゲンを撮ってみましょうということになった。レントゲンをとってみたら、「あー、ちょっとこのあたり曇ってるね」と言われた。びっくりした。ドラマや映画の影響だろう。レントゲンを見て「影がある」「曇っている」といわれるとかなりドキドキする。手術したらどうかという話になって、入院は1週間ぐらいだろうということを聞いたりした。 いつも匂いがするようになれば味覚も変わり、その上呼吸も楽になれば頭脳明瞭、これまでにない全く斬新な発想が次から次へと・・・、というバラ色の世界を期待した。しかし、医者によれば、手術によって逆にアレルギーがひどくなったりする可能性もあり、また長年じわじわと弱められた嗅覚神経が活動を開始するかどうかは難しいところらしい。 入院ということばは、本人もさることながら、まわりの人間を不安にさせる効果があるようだ。 聖路加国際病院は、院内のどこへいくにもIDカードが必要だ。たとえばレントゲンを撮るときは、医師がパソコンの画面を患者にみせながら、目の前でどういう部位のレントゲンを撮るのか予約する。そして画像診断部というところに歩いていき、IDカードを提示するとその部位が撮影されるのだ。もちろん、名前も聞かれるし、たしかに本人を対象に、医師が出したリクエスト通りのものが過不足なく検査される。患者も医者も安心。よいではないか。 病床管理室でIDカードを提示して、入院について説明を受ける。入院保証金は20万円。とりあえずわかんないけど最低20万くらい用意しといてよ、ということだろう。入院ってそんなに金がかかるのか。知らなかった。 入院が近づいたある日の診察では、入院前の検査が医者によって予約された。まず血液検査だ。院内で他の患者に感染してしまうような病気をもっていないか調べるのだろう。採血室にIDカードを渡して、ちょっと待つと、バーコードがはってある容器が4本ならべた台の前に座らされる。針をさす腕は選べる。「申し訳ないですねー」とか言われながら、僕は左腕を差し出し、管のついた針をさされる。申し訳ないと思うならやめてくれ、いたいよ。管が4本の容器に次々と血液を送り込む。採血担当は話上手でないといけない。かつてIDカードの代わりに銀行のカードを出したという患者の話を聞かされた。一体何人の人に同じ話をしたのか知らないが、だまっているよりは時間がたつのでありがたい限りだ。 入院まであと3日。パジャマは一体どこに行けば買えるのだ。 もってくるもの:同意書、誓約書、IDカード、保険証、保証金、パジャマ、着替え、靴下、洗面道具、時計、ティッシュ、スリッパ |
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