第8回
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■ わるものと順序

「前の方に続いて順序良くご乗車ください」
 そうか、ちゃんとならんでなきゃな。
 でも、乗ったあとはどうかというと、俺は次の駅で降りるからな、という人が乗ってすぐ立ち止まってみせたり、いまいちな感じだ。でもまぁ分かりやすいルールだ。なにしろ前の人に続いていればいいのだから。

 人はならぶのが好きだ。なんでもならんでみせる。ならばなくてもいいところでならんでみたりもする。レストランで遊園地で、ここはおいしいだろう、おもしろいことになっているのだろう、と期待がふくらむのだ。順序を重んじる気持ちのよい民族ともいえる。
 でもぼくは困る。順序よく待っている間、一体どこを見て何をしていればいればいいのか。どうせなら、乗車のところだけではなく、待ちかたまでルール化してもらえば楽なのではないか。
 「前の人の首に息を吹きかけ、順序良くご乗車ください」
 やっぱりルールがなくてよかったと思う。

 しかし「ならぶのはなんとかならんか」と誰かが言ったのだろう。番号札という概念があらわれた。
 「番号札をとってお待ちください」
これによって人の背中をみながら時間が経つのを待つ貴重なチャンスは激減した。札といっても多くは感熱紙なので、爪で傷をつけたりして遊ぶ。でも、やっぱり目のやり場には困るし、次第にやることもなくなる。週刊現代とか読む気にもなれないので、寝たふりをして待っていたりする。

 空港のエスカレーターもだ。大抵のエスカレーターは1段につき2人の人が乗れるようにできている。そこで登場する謎のルールがこれだ。
 「お急ぎの方のために左側にお立ちください」
 電車を降りた彼は「俺は急いでいるからそこをどけ」という顔をして右側をかけあがっていったが、切符をポケットからみつけるのに手間取ったのか、改札をでるときにはすでに後ろにいた。僕の予想では、彼はイライラした顔つきで改札をでたあとも全速力で進むだろう。誰かのわずか数秒のアドバンテージのために右側全部をあけておくというのは、世の中の理不尽ルールの1つだ。

 福岡都市高速は現在T字型だ。南からまっすぐ北にきて、海に当たると2手に分かれる。その西の端が先日さらに伸びた。ちょっとしたニュースだった。ゆくゆくは西と南がつながり、環状線になるという。
 作りかけの高速道路の終点では「車線減少」が起こる。2車線の道が途中で1車線になるところでかならず起こる問題だ。
 ところが、この簡単にクリアできる課題であるはずの「車線減少」が、のんびりした人が多いためか、福岡では深刻な問題となっている。

 

 同じ台数の車が左右の車線にならんで「車線減少」するのは東京。先頭で交互に合流していくので問題も起こらない。理想的な合流といえる。車線減少時の渋滞の長さは車の台数の約半分になる。ならんだ順番に合流でき、トラブルはおきにくい。

 福岡ではどうか。なぜか彼らは片側に1列にならぶ。「前の人の後ろにならぶ」という考えを2車線に応用できない悲しい人々だ。もう1つの車線を来た車を「わるもの」として認識して自分の前に入れようとしない。渋滞は無駄に長くなり、渋滞が渋滞を呼ぶ悪循環が待っている。ならんでいる100台もの車を横にみながら、もう1つの車線を先頭まで進んで一気に合流できるのは爽快だがしかしなぜか心が痛む。

(右図をご覧になるには、Flash5のプラグインが必要です。Flashファイル提供:恋愛狩猟民族の星

東京 福岡
 
 
 ぼくは考えた。
 「ならぶ」というルールは、きっと人が多くて忙しい東京の人たちが作ったのではないかと。
 そして「わるもの」のぼくは今日もまた右車線を走り抜ける。
   

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