第7回
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■ 朝食の梅干し

会社で働くものとして忘れがちなのは、朝食だ。
朝食は単なる活力のもとであるだけでなく、単調になりがちな平日の午前中を一気に盛り上げる魔法と考えたほうがよい。
特に、会社の自分の机でものを食べることはおろか、歯磨き、洗顔に洗髪、髭剃りなどをこなす人がいる会社では、朝来るときにコンビニでにぎりめし、あるいはコーヒーショップなどでパン類を仕入れ、それをむさぼり食いながら来ることに慣れてしまうともう戻れない。

そこで、朝起きて家を出るまでに何か食べれないか考えるとする。
すでに身をもってお気づきの通り、前日に朝食の材料を買っておき、簡単な調理くらいこなせるような時間の余裕を持つことが、朝にはとても重要だ。
ぼくも、有事の際に、起きて1分後には家の鍵をかけるところまで到達できるように、日々鍛えているつもりだが、「早起きは3ベルの得」と、どうぶつたちがいうように、早起きすればそのうちいいことがあるものだ。

さて、材料を買って保管しておくのが冷蔵庫。
「冷蔵庫の中で生活したい」などと、しゃれたことをいわず、質素に常温で生活をする人であれば、家に冷蔵庫があることがまず重要になってくる。
一人暮らしといえばなんだろう。「一人暮らしといえば加湿器」という現実派から、「一人暮らしといえば同棲」という空想派までいろいろだとは思うのだけれど、やはり基本は冷蔵庫だろう。そう、冷蔵庫は重要だ。
冷蔵庫ぐらいあるだろう、と思って泊まりに来る友達に、「冷蔵庫はないよ」といえる勇気。それも結構。事実、コンビニが近いと、そのコンビニが冷蔵庫の役割を果たす場合もあるくらいだが、しかしそれにしても冷蔵庫ぐらいあってもいいだろう。

さて、冷蔵庫があれば話ははやい。
朝食のためにスーパーなどでいろいろ買ってきたら冷蔵庫に入れて寝るだけだ。
そして幸運にも予定よりはやく目覚め、頭も重くない。
朝食をつくるチャンスだ。
二度寝の誘惑に打ち勝ち、朝起きて、冷蔵庫をあける。これほど喜びに満ちた瞬間が他にあるだろうか。
当然、冷蔵庫の中になにが入っているかによって、朝食も変わってくる。


― 冷蔵庫をあけたら、おばさんがいた。
落ち着こう。対応を間違えないように。考えるのだ。自分は朝食をとるために冷蔵庫をひらいたはずなので、結果的に朝食がとることができるなら問題ないのだ。迷わず「牛丼とみそ汁」と言えばよろしい。築地場外市場の和牛牛丼の店「大森」だって、年に2回だけ吉野家よりも安くなる。

― 冷蔵庫をあけたら、また冷蔵庫だった。
あなたはきっとだまされている。まぁしかし、たまにはだまされる人生もよいではないか。定説によれば、きっとそれをあけると、またさらに小さい冷蔵庫があるはずだ。開けつづければよろしい。

― 冷蔵庫をあけたら、宇宙だった。
事態は深刻だ。
トンネルの向こうは雪国だった、あの丘を越えたら海だった、と同じくらい疲れすぎだ。「会社に尽くしもつくし」とかなんとか言っているのだろう。悪いことはいわないので、いますぐもう一度布団に戻ろう。

― 冷蔵庫をあけたら、しょうがとにんにくが入っていた。
これは難しい。なぜなら、どちらもサブだからだ。しかしあなたが、「NTTでなく日本テレコム」「携帯でなくPHS」「りんごではなくバナナ」といった2番手応援派なら問題ない。しょうがとにんにくをいっぱいに頬張りながらネクタイをしめ、地下鉄にのればよろしい。

― 冷蔵庫をあけたら、梅干ししかなかった。
よくある話だ。
空腹で倒れそうだが、ここは落ち着いて、梅干し袋の裏を見てみよう。
「たねをのみこんだり、
 のどにつまらせたりしないように気をつけてください」
いたのだ。
たねを飲み込むやつが。紀州梅のたねなどは、ぼくが普段のむビタミン剤の10倍はあろうかという大きさだ。なんて挑戦的なやつなのだ。
「おたくの梅干しは、たねがのどに詰まるので危険だ」
そんなやつから苦情が来る梅干し屋の身にもなってほしい。

そう、人は朝起きた瞬間から、夜ねむることに全力で向かっている。
つまり朝食で満足するかどうかなんてのは気持ちの問題なのだ。


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