第4回
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■ 医者革命

 病院には冷たい廊下があって、長椅子で待たされたあと、丸椅子に座らされてあれこれ診察を受けたあと、窓口の前で薬を渡される待つのだ。これが今までぼくが行ったことのある病院のイメージ。診察ってなんだろうって思う。薬をもらうための儀式なのか?

 病気になったとき、近いからという理由だけで近くの病院にいってしまう。結果、病院はそれほど宣伝せずとも、お客がならんで待ってくれるという状況になってしまう。あなたの病気はなんとかなんで、これしてあれして、じゃ、薬もらっていってね、となる。はい次の人。これじゃ何回来ても薬もらうだけだな、と思ってしまっていた。

 用賀にあるその病院は、入ると明るい待合室。こどもが遊ぶスペースがあって、ソファーや、どこかの家のリビングにありそうなテーブルが置いてある。診療券を渡すと、お茶を持ってきてくれた。なんだなんだ?
 いしかわさんどうぞ、と案内された診察室には、パソコンが置かれた机と、その前に座る医者がいた。その腕時計はどこで買われたんですか?などと聞かれると、いやーこれはですね、と話してしまう。権威的な様子はまったく感じられない。ところでどんな症状ですかね、と本題に戻ったときには、自分の症状を少ない形容詞をフルに使って説明しようと努力していた。もらう薬も1つ1つ説明を受けて、診察室をあとにする。薬をもらうと、紙が入っていた。効用と副作用について、薬の写真入りで説明がある。自分のカルテはインターネットから見ることだってできる。

 「私たちは医療をサービス業と考えています。」

 ちょっとショックだった。昔ながらの冷たい病院とこの病院が、同じように「病院」と分類されるのが残念なくらいだ。ぼくも毎回相談をしてしまうし、先週あったばかりの学会で発表された、先端の治療方法についてや、最近でてきた新薬の紹介もしてくれる。

 サービス業とは、競争原理がもっともよく働くべき場所。何も待合室でお茶を出したらサービスというわけではない。そんな表面的なことなら患者は見抜いてしまうからだ。現在ある、あらゆる権威的サービスが、より正常なサービス業として動き始めたら、価値観は根底からかわってしまうだろう。


 歯医者へ行った。

 歯磨きには自信があったのに、なぜか虫歯を作ってしまった。他には虫歯がないことを考えると、どうやら一番磨きにくい位置にあるらしい。かなりショックだった。
 さて、福岡のその歯医者の入り口には、「私の家族だと思って治療します。」と書かれている。聞いた話では、世の中には次の治療のために治療をしている歯医者もあるという。つまり次にまた治療に来てもらうための治療。レントゲンを必要以上にとり、虫歯でもない歯を治療して、稼ごうというわけか。おそろしい話だ。

 生まれつきあごが小さいぼくは、5年ほど前に、考え抜いたあげく、まだ生えてくる前の親知らずを4本も抜いた。耐えがたい痛みを伴ったけれど、あれだけ激しい手術をおこなっておきながら、傷口がそれ以降、痛むことはなかった。技術は確かだ。

 治療に関する十分な説明がされていれば、同じ痛みを伴う治療であっても、安心感が違う。と思って久しぶりに予約をしてでかけた。虫歯は放っておいてもなおらない。レントゲンをとって、口を開き、虫歯の具合を小さい鏡を2枚使って見せてくれる。なるほど、これは治さないとまずい感じだな。
 えー7番からはじまりまして、6、5。4が欠損、えー、3、2、1。
学生の時受けていた健康診断みたいだ。まずは、虫歯の様子を見ているのだなぁ、と目をつぶってゆっくり待っていたら、いたたた。めちゃくちゃ痛い。いきなり何をしているのかね、この医者は。と思ったら、「はい、麻酔終わりました」だって。あまりに意表をつかれたので、痛がっている暇もなかった。
 なるほど、削ってる間に神経に触れちゃうと、死ぬほど痛いから麻酔かけるのね。最初からそういってくれればいいのに。と思ったけれど、予告されて麻酔されるのも、それはそれで針を待っている時間が辛いなと思った。医者の作戦の勝利だ。

 大敗したぼくは、次の予約を入れてどしゃぶりの雨の中を地下街へと入っていったのだった。


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