第2回
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■ バリアフリーと宇宙

 夜はなぜ暗いか。そう思ったことはないだろうか。
 ひょっとすると夜が暗いということを忘れているかもしれない。

 飛行機にのればいい。福岡行きを決意し、羽田を飛べば富士山上空はすぐだ。上空といっても「富士山らへん」というあいまいな意味での上空ではない。大した事はなかろうと思っているだろうが、本当に上空なのだ。つまりほとんど真上。火口だったところが見え、理科の時間に先生の話をまじめに聞いていた人なら、これがケーキを作るときにできる小麦粉の山ではなく、なるほど火山であるらしいと推測できるだろう。

 晴れている日に窓際のAのシートを予約し、ベルト着用サインが消えるころに窓から下を見てみよう。空にも道路があり、いつも同じところを通るので、よほどのことがない限り見ることができるはずだ。この高い山に人が何時間もかけて登頂するというのは、偉大なことなのかどうかよく分からなくなってくる。富士山はああいう形なので、上から見ても陰影がくっきりしていて高さがわかりやすい。周囲に何もないのでなおさらだ。
 夕方の便に乗ろう。山の半分は地上に残ったすべての光があたってなんともいえない色で視界に入ってくる。しかし反対側を見るともう薄暗い。間違いなく夜は近づいているという感じがする。あまりに印象的なので、忘れられない。たとえ、夕方の便のAのシートは通常の20円増しですと言われても、「金じゃないんだ」と言い放つべきだ。

 さて、飛行機といえば離陸。本来空を飛べない人間が、重力という物理的束縛から逃避しようとする偉大な行為の開始だ。滑走路の端まで来ると、離陸するぞと警告が発せられ、いかなる場合であってもシートに座っている必要がある。隣が空席だったらあなたは幸運だ。少し浅めに座って、両腕を肘掛にだらりとのせ、足を前にだす。これ以上力が抜ける姿勢があるかというほどまで調整を行う。エンジンが音を出し、凄い勢いで飛び出す。シートに張り付くほどの力を全身で感じることだろう。体中の細胞がときめく。全身指圧ともいえる快感があなたを襲うだろう。

 無事着陸したならば、飛行機は到着ロビーへと向かっていくはずだ。しかし、風向きなどの都合だろうか。着陸滑走路がちょっと違うと、バスでお出迎えというパターンも少なくない。そのような場合は、タラップを降りてバスに乗る。バスが乗客を到着ロビーまで送る仕組みだ。
 当然だが、飛行機とタラップの間には段差があり、踏み外す危険があるため、客室乗務員は注意を促す。その瞬間、僕の脳裏にある人物がよぎった。

 段差・・・

 さて、今回はここが重要だ。連想するものを間違えてはならない。ここでの模範解答はそう、スペランカーだ。
 ひと昔前なら、段差といえばスペランカー、スペランカーといえば段差なのだ。スペランカーをファミコンに挿し込み、電源を入れる。あなたはタイトル画面で流れる悲しいメロディーを最後まで聞いたことがあるだろうか。わずかな段差に苦しむ主人公をあわれむ作者の同情から来る音楽だろうか。

 スタートボタンを押すと、陽気な音楽とともに主人公は洞窟を走り回るのだが、さきほども申し上げたようにこの主人公、段差に弱いヒーローだ。至上最弱のヒーローはわずかな段差に対応することができず死んでしまう。その上、下りエレベーターでジャンプすると即死。下り坂で飛び跳ねても即死。重力に支配された惑星の上で起こる段差という不具合。重力の存在を再認識させ、宇宙空間というものの中で重力がいかに不思議なものかを知らしめるため、出るべくして出た啓蒙ゲームだったに違いない。

 暗い宇宙、見えない重力。
 宇宙の神秘はまさにいまそこにある段差から始まる。

 

より深く研究したい方に:スペランカー先生 (第11回がおすすめ)

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