第1回
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■ 宇宙買い

 宇宙を考えたことがあるだろうか。宇宙的という観点でものを評価して、速攻でそれをせしめることを宇宙的観点による衝動買い、略して「宇宙買い」と呼ぶことにした。買い物の対象が食事であったら、宇宙食いと表現してもよい。今、目の前にあるものが宇宙的かどうか判断するには、一度宇宙について深く考える必要がある。
 その第一歩として海外へ出向く人も多い。僕にとって、最初のまともな海外は飛行機で12時間先のノルウェーだった。想像を絶する高さを飛行機が飛んでいくので、地球が丸いという実感がわいてくる。また、高緯度の真夜中の空というのは、太陽が絶妙な光をもたらす。下には時折明かりが見え、しかし上を見ると、限りない漆黒の空間がおしせまってくるようだ。地表から見上げる夜空は、地球儀の内側にたって、表面にへばりついている星を見ているに過ぎない。

 海外に行ったあとは、地球外だ。直径2センチの地球を腕時計の上にのせると、その66センチ先に月はある。その半径66センチの空間を切り取ったとすると、そこには地球と月があって、寂しいことにそれ以外は何もない。

 そこを満たしているのは、宇宙の温度。地球でいう気温。冬、外に出ると、あれ今日寒いなと思うが、ちょっとそのまま宇宙まで行ってみるとマイナス270度。ちょっと寒すぎるなと思うことだろう。温度というものは、人間の都合で決めた相対的なものだから、普段から宇宙空間にいるやつにとってみれば地球はさしあたり灼熱地獄ということになろうか。

 大学に入ったのは18歳で、こないだ久しぶりに大学を辞めてみたら26歳になっていた。光速で8年の歳月をかけて移動すれば、今ごろおおいぬ座の1等星、シリウスに着いている頃だから、ちょっとしまったなと思うときもある。

 そんな思いを馳せながら、僕が買い物を楽しんでいるとは誰も気づかないだろう。

 ところで昨年末、車を買ってみた。例によって、宇宙的かどうか判断してみるときに、この車のコンセプトを示す文章が決め手となった。

  どれだけ速く行くかは問題ではない
  大事なのは私たちがどこに向かっているかだ

 それは、通勤に例えるならこうだ。11時の会議のため、10時に家を出て、15分歩いたところで地下にもぐり、さらに15分電車で揺られて築地市場駅で降りる。言わずと知れた魚市場の町だが、なぜかカレーのにおいがしている。 ここで、会議の準備のため15分前に着く努力をするか、カレーのにおいのもとを調査するか、大いに迷うところだ。しかし、どちらが宇宙的かという切り口でこの2つの未来を比較すれば、答えはおのずと導かれよう。

 そう、僕はカレーを食べていたので、会議に遅れたのだ。


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