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第2回 | |
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| ■ 焼肉革命 それは2年間ほど前の話だ。私はとあるホームページ作成の打ち合わせで渋谷にいた。同席していたのは、私が10年も前に働いていたパソコン雑誌の歴代編集長ふたり。ひととおり打ち合わせをこなし、“じゃあメシでも食いますか!”という雰囲気になった。 「田川ちゃん、なに食べようか?」 そのホームページ作成のリーダー的存在のK氏がたずねてきた。 「いやあ、なんでもいいですよ」 私は答えた。もちろんこの返事には“オゴリで食えるんだったらどこでもいいですよー。でも美味しいモノじゃなきゃイヤですよ!”という意味がこもっていた。ちょうど腹も減っていた。 「じゃあ、あの焼肉屋はどうですか?」 もうひとりのP氏が進言する。しかしK氏は眉間に皺を寄せた。 「あーー、あそこねー。混んでるから予約入れないとなぁ。今からだと間に合わないと思うから、あそこは今度のときに。予約しとくから」 というわけで、結局その日は近所の鉄鍋餃子の美味しい店でたらふくご馳走になったが、その店内では以下のような会話が繰り広げられた。 「いやぁ、本当は連れて行きたかったんだよねー、あの焼肉屋。そこね、すっごくうまいんだよ。肉が柔らかくてね」 「そうそう、こないだKさんに連れていってもらったけど、アレはマジで美味い! でもプライベートでは怖くていけないですよ。だって店内にメニューはないし、ほとんどおまかせで肉が出てくるし」 「なんでも、別店舗の高級焼肉店と同じルートで肉を卸してるらしいんだけど、店主のこだわりで安く提供しているんだって。店が混んだりすると常連さんが困るので雑誌とかでの紹介は断ってるみたいだね」 「あんなにロースが美味いと思ったこと、ないですよ。箸で切れるロースが美味い。あと最後に出してくれるフルーツの盛り合わせが嬉しいんだよね。俺パイナップルばっかり食っちゃうけど」 「でも業界では結構有名な店らしいね。こないだ行ったらMS社の某氏がいたりして。小ぢんまりした店だけど、味は確かだね」 ……鉄鍋餃子を口に入れながらも、頭の中はもう焼肉一色という、いかんともしがたい時間が流れた。そしてその日からしばらくは、まだ見ぬ焼肉に思いを馳せていた私だった。 「じゃあ行こうか、田川ちゃん」 いつもの渋谷での打ち合わせが終わると、待ってましたのタイミングでK氏が言った。焼肉だ! 箸で切れるロースだ! 私は色めき立った。 夢の楽園は、歩道橋を渡り、坂を少し上がったビルの地下にあった。店頭に並べられた肉のサンプルには埃がかぶっている。ちょっとイメージと違っていた。失礼だが店構えは“ちょっとサビれている街の焼肉屋”といった印象。しかし、私たちが予約した席以外は満席という盛況ぶり。しかも店内に立ち込める肉の焼かれた匂いが、そこいらの激安焼肉のソレとは大きく違うことに気付く。すでに口の中は唾液で充満していた。 「じゃあ、人数に合わせて適当にお持ちしてよろしいですかね?」 ほどなくしてタン塩、カルビが運ばれた。タン塩は冷凍モノをスライスしたものではなく、厚みがあり、食べやすく半月型に切られている。いい感じのみずみずしさを保っていて、適度な弾力があり、口に入れると舌を跳ね返すハリがある。噛むとジュワーッと肉汁が拡がり、安い肉にありがちなアクっぽさは皆無だ。添えられた胡麻の葉や海苔に巻いて食べると、また違った味が楽しめる。いくらでも食べられるのでは? と思うほど。 そして最後にロースが登場した。“最後にロースかよ? もうカルビも食べて腹いっぱいなのに、この期に及んでロースなんて食えねえよ!”と思うのが他の焼肉屋での私なのだが、はっきりいって過去一度も見たことのないロースだった。というか、これは本当にロースなのだろうか? |
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