第11回
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■麻雀が強そうな男

『十三人の刺客』(東映/1963年/125分/モノクロ)
監督/工藤栄一
出演/片岡千恵蔵、内田良平、月形龍之介、嵐寛寿郎、西村晃、菅貫太郎、丹波哲郎、里見浩太郎、山城新伍ほか

いらだつ映画だ。

江戸時代末期の弘化元年(1844年くらいかな)、将軍の弟であることを盾に傍若無人にふるまう暴君あり。今は明石藩主だが、近々、幕府の要職につく予定だ。そして、あんな男に政治を任せるなんてとんでもないが将軍が決めたことだしなぁ、と悩める老中あり。で、老中のワシには出来んのでひとつ宜しく頼む、と暴君暗殺の指令を、出すのだ。受けたのは、お目付け・島田新左衛門(片岡千恵蔵)。彼のもとに集まった13人の侍が、暴君を暗殺すべく行動するお話。

悪役は暴君だ。ヒールってのは、悪い奴で憎まれ役のはずなのに、熱狂的に愛されるヒールってのが時たまいる。それは、こんなに極悪な人だけど捨て猫をそっと抱きあげるような優しいとこもあるのよなんて「だけど」な魅力なのではなく、なんちゅう悪い奴!という“悪”の部分そのものに、というか、悪をひっくるめてその人を愛でてしまうような、ね。プロレスならストーンコールド、相撲なら北ノ湖みたいな人だ。
そのヒール役、暴君を演じるのは、これまた“愛すべきヒール”菅貫太郎。昨日も私、時代劇専門chにて絶賛再放送中の「暴れん坊将軍」第3シリーズで、この人が悪役を演じているのを見たばかり。この映画でも、薄い身体に豪華な衣装、大きな目は冷えているんだけど冷徹というほどの活力はなく虚無的で、というビジュアル、やることなすこと悪の限り、一分の隙も無いヒールっぷりなのだ。そうしてベビーフェイスが光るのよ。いやー、しびれます。

さて、暴君暗殺の指令を出した老中ですが、暴君には、ある不祥事に対してお咎め無しの沙汰を出した。ほれ見ろ、俺の“将軍の弟”ブランドは無敵だと無邪気で目出度い暴君だが、これに疑問を抱く家臣あり。半兵衛という智恵者だ。お咎め無しなんて「都合が良すぎる。老中の面目はどこでたてる?こんな不祥事(を許した老中)の面目をお咎め無しにどこでたてる?」。誰にも傷がつかないなんてはずはない、何かあると考える半兵衛。
そう、この話の一つの柱は、頭脳対決。何かある、と半兵衛が考えた時から始まっているのだが、刺客のリーダー・島田新左衛門と、暴君を守り抜かねばならぬ半兵衛が、繰り広げる頭脳対決なのだ。

狙われているのは、暴君が江戸から明石に下る参勤交代の道中。もとより半兵衛も承知だ。

参勤交代に出発する日、半兵衛が“殿の命を狙うは、こやつ”と目星をつけた(当たりだけど)島田新左衛門を訪れる。脇息にゆったりもたれかかって「わしを刺しに来たな」と島田は半兵衛に語り出す。お互いに相手を“羨ましい”と思っていることなど告白し合った後、「侍はいたしかたないもの」「お互いいかようなことになろうとも侍として潔くありたいもの」と決着の時までの別れの挨拶を交わすのだ。
しかしだ。
この、お互い認め合っている切れ者の二人が、斬り合うもやむなしという運命に、不条理と分かっていながら従う辺りが、私をいらだたせる。侍の運命…これが悲壮美とも思わないこともないのだが、しかし、特に、半兵衛。こんなに智恵者なのに暴君からチクチク嫌みやら何やら言われてまで…もしかして私と同じでヒールが好きなのか?じゃなかったら、こんな奴に尽くさず浪人になれ!とイラつく私。

決戦の殺陣シーンは、30分近くあったと思う。13人が50数人を相手にするっていうんでトリッキーなしつらえ。それから、戦さのない時代に設定された話なので、「真剣で戦った侍なんていない。我にもなければ彼にもない。人と人とが命と命をぶっつけ合って戦うとき何が起こるか、誰にも想像はつかん」というセリフが途中出てくるように、様式美の殺陣とは違う必死感漂う戦闘シーン。13人の刺客は暴君を仕留めることができるのか、そして島田と半兵衛は!?という結末の、キーワードは「面目」。

で、抽象的になってしまうのですが、
物事にはやっぱり道理というか理屈というか理由というか、がある。何かが動けばどこかが動く、何かが動いたからには理由が…その次に動くための理由がある。てなわけで、自分は自分の動きたい方向を見つめて進むものだけれども、行き詰まることもあるはずで、そんな時、行き当たりばったりでとにかく目の前の行き詰まりを避けてクネクネ蛇行しはじめると、初めに思い描いていた道から大きく離れてしまうこともあるだろう。
自分も周りも動いている。自分の道を通すには、その動きの中でどう道を通すか。周りをどう通してやるか。自分の行き詰まりを避ける、という行為にだって自分の通したい道をイメージし、かつ周りの動きの理由を考えたうえで避けるのと、行き当たりばったりで避けるのとでは、結果が大いに違ってくるんじゃないか。

少しイラついて眺めた島田と半兵衛の生き方だが、結果的には、そういう風に「よく見て」自分の道を通す男だったのであった。この二人、麻雀強そう。

「七人の侍」の、あの面白さとは少し違う集団時代劇ですが、この「十三人の刺客」も面白いです。
ですが、しかし、
致命的に私が分からなかったことが一つ!
本当に13人だったか!?

密命を受ける「島田」でしょ。(計1人)
もとより島田と行動をともにする「倉永」と「平山」でしょ。(計3人)
家来から選んだ「三橋」「大竹」「日置」「樋口」「堀井」でしょ。(計8人)
平山が連れてきた「佐原」と「庄次郎」でしょ。(計10人)
島田の甥っ子、里見浩太郎(若い!)でしょ。(計11人)
この時点で、画面に12人映ってるじゃないか。誰なんだよ、これー。
あと1人が誰なのか、知っている人、教えてください。

で、最後に山城新伍(若い!)が仲間になって「これで13人になったな」とつぶやく千恵蔵に、「えー、まだ12人じゃないの!?」と、すがる私であった。


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