第5回
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■ 忍法 眼力卍固め

『忍びの者 伊賀屋敷』
昭和40年/大映/モノクロ/1時間29分
主演:市川雷蔵

大手電機メーカーが続々とリストラ策を発表。
東芝が国内1万7000人を。日立はグループで2万人、同じくNEC4000人、富士通1万6400人。松下電器は早期退職優遇制度で数千人。
自動車産業では2005年までに最大14万人3000人削減か、とのニュースもあり。

さて、とざいとうざい。雇われの身の危うさは昔も同じであります。
江戸時代初期、徳川幕府は政権のパーフェクト安泰のために大リストラを行なった。「一門親族の確執、上下相剋を根絶」するというのだから、豊臣家臣のみならず徳川一門にまで及ぶ厳しい“お家取り潰し”。で、主を失い、職を失った浪人の数、およそ20万人。彼らは「生計の道を絶たれ、焦燥絶望の果て、錆槍を枕に泰平の世を恨み、鬱積した不満は、不気味な暗雲となって天下にたれこめていた」。

という不穏な空気ぷんぷんの時代に、軍学者・由比正雪(ゆい・しょうせつ)が、江戸の浪人・丸橋忠弥(まるはし・ちゅうや)らと徳川幕府転覆を狙い挙兵を計画。が、未然に情報が漏れて失敗に終わったというのが「慶安の変(由比正雪の乱)」。これが、映画『忍びの者 伊賀屋敷』の舞台である。

ある晩、江戸城の見取り図を挟んで倒幕計画を練っていた浪人・丸橋忠弥らを、甲賀忍者が襲撃、斬り合いとなる。そこへ、丸橋忠弥に助太刀する一人の忍者が登場。
自分は「天下の浪人に味方する一匹狼」と名乗るこの忍者は、市川雷蔵扮する霧隠才蔵(きりがくれ・さいぞう)。といっても二代目才蔵。才蔵のせがれ、才助だ。

ここで、忍者メモ。
霧隠才蔵ってのは、猿飛佐助(さるとび・さすけ)らとともに戦国時代、真田幸村(さなだ・ゆきむら)に仕えた“真田十勇士”の一人で伊賀忍者。火薬などで雲霧を作り出すのが得意技。主家を変えて戦乱の世を生き延びた真田忍者だが、最終的には豊臣家に仕えた。よって霧隠才蔵も豊臣家臣、徳川は敵というわけだ。

映画の話に戻る。

かつて初代霧隠才蔵は、島原の乱で徳川軍の総大将、松平伊豆守(まつだいら・いずのかみ)を討とうとするが失敗、その場で切腹し果てた。
それから十余年。父の意志を継いで打倒徳川家に燃える才助は二代目才蔵となり、同じく“敵は徳川”のリストラ浪人らとともに軍学者・由比正雪を口説いて仲間にし、その他諸々の不満分子への根回しをして倒幕作戦の準備も着々。
そのころ、徳川幕府で今をときめいている切れ者老中ってのが松平伊豆守。父の仇だ。こやつが操るシークレットエージェントは甲賀忍者。そう、浪人・丸橋忠弥らを襲った甲賀忍者なのだ。

表向きは「倒幕勢力 VS 徳川幕府(の知恵者、松平伊豆守)」、裏では「伊賀忍者の霧隠才蔵 VS 甲賀忍者」という図式のこの戦い。さて「慶安の変(由比正雪の乱)」は成功するのか!?歴史は変わるのか!?という話。

忍者ってカッコいいことばかりでもないのだ。
例えばこの映画の老中・松平伊豆守配下にある甲賀忍者のように、要するに主の命令通りに働かなきゃならないわけだ。自分たちの思いとは無関係に。
それに比べて、才蔵はというと、黒づくめの忍び装束で目しか出てないのにカッコいいのよ!市川雷蔵がさ!
いや。
それに比べて、才蔵はというと、仕えるべき主人を失った「一匹狼」忍者なので、もはや自分の目的のために行動できる自由な身なのだ。影でいる必要はもはや無いといってもいいと思うのだけれど、それでも才蔵は、倒幕勢力の浪人や軍学者の由比正雪に言う。“自分は暗闇で動く力しか持たない。表舞台にたつのはあなたたちだ”ってね。影のまま生きて死ぬ、という忍者としての運命そのままに生きてしまうあたり、忍者というもの、そのものに非常にシビレてしまう私なのであるが、しかし。

この映画では、なんたって由比正雪がポイント!

この人、“倒幕なんてワシ、関係ないもんね”の人だった。
浪人たち&才蔵から倒幕計画への協力要請を受けたとき、
「私は一介の軍学者。いずれの側にもつかず気ままに暮らしていきたい」と当初は拒否。

しかし「そんな生き方が許されましょうか」と才蔵に熱く説教されてしまうのだった。
誰もが徳川幕府の権力にすがらねば生きていけない、この天下泰平の時代は民衆が自由を奪われて成り立っている、そんな時にあんたはなんちゅうことを言っているのじゃ、と。

で結局、倒幕計画の一端を担うことになる由比正雪なのだけれど、倒幕勢力と時の権力の対立に巻き込まれていくにつれ、この人の本質が現われてくる。「気ままに暮らしていきたい」は本音では無かったのか、嘘だったのか、それとも自分でもよく分かっていなかったのか。

周りの状況に、自分の本心をあらわにされ、それに流されるってのは、私は、怖い。

市川雷蔵の「忍びの者シリーズ」は全部で8本。これは6作目です。
市川雷蔵の美は、悲壮顔や悶絶顔にあり!と見ていた私ですが、目だけってのもうっとりよ!と発見。まなざしマニアにおすすめ。かも。

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