第2回
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■ タヌキとエロ&ポップに33回転

初春狸御殿(昭和34年、カラー、1時間35分、大映)
出演:市川雷蔵、若尾文子、勝新太郎、中村鴈治郎、
   菅井一郎、左卜全など

カチカチ山のたぬきは生きていた。背負った薪に放火され、その時に負った火傷に唐辛子を塗りたくられた挙げ句、泥舟に乗せられあえなく溺死…と思われたあのたぬきである。あれから時は流れ、「10年前、カチカチ山でウサギにしてやられた火傷の古傷が痛ぇぜ」とつぶやく“カチカチ山の泥右衛門”(菅井一郎)。かつて悪党軍団の親分として鳴らした頃の栄華はなく、娘のお黒(若尾文子)と二人、つつましく暮らす日々なのであった。
その頃、狸御殿では、お姫様“きぬた姫”の家出で大騒ぎ。まさにその日は、こづつみ山の殿様“狸吉郎”(市川雷蔵)とのお見合い当日。重要な日なのだ。というのもこの見合い、華やかに見えて実は台所事情が厳しい狸御殿の家運がかかっており、婚礼となればクリ林とイモ畑が手に入ることになっている。だから「いやー、姫がトンズラこいちゃいまして…」などとは口が裂けても言えない。狸吉郎をここで逃すわけにはいかないのだ。

そこでこのピンチ、きぬた姫の代役をたててしのぐことになり、抜擢されるのが“カチカチ山の泥右衛門”の娘、お黒ちゃん。偶然にも彼女は、きぬた姫のそっくりさんなのだった。家出したきぬた姫が戻ってくるまでの身代わりという約束なのだけれど、彼女がなかなか帰ってこない。その間に、お黒ちゃんと狸吉郎はすっかり恋に落ちてしまう。嗚呼、それなのに。家出したきぬた姫が帰ってきてお黒ちゃんと入れ替わっても、狸吉郎はそれには気付かずホンモノのきぬた姫とあっさり結婚してハッピーエンド、お黒ちゃんも元の生活に戻って幸せになる、というあっけらかんとしたお話の『初春狸御殿』。

ストーリーはともかく、すこぶるヘンてこな映画ですよ、これは。その理由は、何といっても“ミュージカル仕立て”だってこと。とりわけ、お黒ちゃんが姫の代役とバレないように殿様の気をそらそうと、城内、城下のたぬき総出でバカ騒ぎをする「狸祭り」のミュージカルシーンは圧巻です。10分くらい続くんだ、これが。それまでお城の風景だった画面が切り替わって突如、宝塚みたいな大階段のステージに。そこにさっそうと登場する狸吉郎こと市川雷蔵をもてなすべく、大勢のたぬき(といっても人の姿なんだけど)がワラワラと出てきて、「ちゃっきり節」「よさこい節」「佐渡おけさ」「五木の子守り歌」などにのせて「♪私しゃ〜会津のお湯だぬき〜」などと歌い、踊って、日本全国の民謡メドレーを繰り広げる。曲に合わせてステージも衣装も代わるあたりが豪勢。和田弘とマヒナ・スターズもちょんまげ姿でロマン歌謡を披露。そう、ミュージカルといっても、民謡とロマン歌謡なのが可愛くて可笑しい。

音楽だけでなく、おおらかな色気にも注目。必見は“カチカチ山の泥右衛門”邸の近くに住んでいる二匹の河童(毛利郁子、小浜奈々子)のコスチューム。これぞ、エロ&ポップ。必見!必見!青緑のロングヘアな河童ウィッグと、ほぼトップレス&ハワイアンダンサーがつけてるみたいな腰蓑のマイクロミニ版は、60年代ファッションの幕開けを象徴しているような斬新さ。この河童を見るだけでも一見の価値アリです。ちなみに、前述の「狸祭り」シーンでは、胸にさらしを巻かず、スパッツの短いやつみたいなの(スライディングパンツみたいなの、何て言うんでしょうか)もはかずに法被をはおった踊り子たちがたくさん出てきて、いやー、おおらかにエロスです。

それにしても、市川雷蔵の芸の深さってのはバカ騒ぎ映画に出ても際立っている。お黒役の若尾文子との恋が深まっていくシーンで舞う姿といい、傘越しのキスシーンといい…美しい。


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