第2回
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■ バカ 風邪をひく

調子が悪い。久々に旧友と飲み明かした挙げ句に玄関で寝たのが悪いのか、腹の調子が悪い。頭が痛い。体もだるい。のども痛い。そこで薬に手を出す事にした。薬なんて何年ぶりだろう?きっと中学生の時に婆さんに大量の正露丸を飲まされ、よけいに気分が悪くなったあの日以来だ。
 そんな事を考えながら白い粒を適当にいくつか飲み込んだ。けっしてうまいものではない。今日は休日だ、一日寝る事にしよう。暇なのでふとんにもぐって説明書を読んでみる。箱の奥で「コ」の字に折れ曲がり、開かれる事のないまま紙箱と共に最短でゴミ箱直行の例の4つ折りの紙だ。マツモトキヨシで一日に何個の錠剤が世間の皆さんの手に渡るかは想像もつかないが、きっとこんなものをきっちりよむ人はあまりいないんじゃないだろうか。

「、、、、熱、のどの痛みを始め、かぜの諸症状によく効きます。」うーん、ばっちり。効きそうじゃないですか。治ったも同然だね。
「1回3錠を食後30分以内に服用」おっけー、さっき飯くったぜ。イェス!3錠?3錠か、、。適当にぐわっと飲んだけど、まぁ気にするまい。
「- かぜの養生法 - 食事はビタミン、カロリーに富み消化のよいものをこころがけます。- 部屋に湯気をたて、空気の乾燥を防ぎます。」そんな事まで教えてくれるの?こりゃ親切だ。なるほどねぇ、、こりゃ一気に治しちゃうしかないね。
ここまでは何の問題もなかったのです。しかし、徐々に様子が変わり始める。

「- 次の方は服用前に医師又は薬剤師に相談してください。- 持病のある方、体の弱っている方又は高熱のある方。」 ちょっと待て!カゼひいてるんだから弱ってるだろ?熱もあるさ。さっき熱に効くって自信たっぷりに断言してたじゃないか!
「 胃・十二指腸潰瘍、、、、クローン氏病にかかったことのある方。全身性エリテマトーデス又は、、の治療を受けている人。」クローン氏病?エリテマトーデス?それって、、、何? 謎は深まる一方だ。この辺りですでに軽い精神的ダメージを受けたが、次の項目でダメージは一気に深まる。

「- 服用に際して、次の事に注意してください - 本剤は、劇薬に該当する成分も含まれていますので、定められた用法・用量を厳守してください。」げっ、劇薬ぅ〜 !? 先に言ってくれ!さっき大量に飲み込んだんだ気がするぞ、、。こ、恐いよ〜。
「お酒などアルコール類の飲用はさけてください。」、、、、飲んでる。飲んでるに決まってんだろぉが!(逆ギレ)

すっかり弱った心にとどめを刺したのは次の項目だった。
「- 本剤の服用によりまれに次のような症状があらわれる事が報告されています-」
そこに書かれているのは、蕁麻疹、浮腫、顔色が青くなる、手足が冷たくなる、冷や汗、息苦しさ、黄疸、高熱を伴う発疹、発赤、火傷様の水ぶくれ等の激しい症状、首すじのつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、悪心・嘔吐、血尿、蛋白尿、、、。
今ひいてる風邪の症状なんてかわいく見えてくるほどの豪華さ。ここまでくれば某ゴージャス姉妹も真ッ青である。なんで風邪を治すためにこれほどのリスクを負わねばならないのか?
この段階で気力、体力ともに消耗しきって極度の心配性となったワタクシは、たえ難い不安に我を忘れそうになったが、本当の恐怖は説明書を締めくくる次の文章を読んだ直後に訪れたのである。
「使用期限を過ぎたものは服用しないでください。」

ビンの底には「使用期限:1993.10」という刻印があった。

#このお話はできればフィクションであって欲しいと思います。


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